先月、講座内容の打ち合わせで急にシンガポールに出張することとなり、2泊3日の間に感じたあれこれをお届けしたいと思います。言語の壁もあり、限られた情報の中で個人的に感じたものであることご了承ください。
1.シンガポール航空を利用して
国際航空の顧客満足度調査(JCSI)では5年連続でシンガポール航空が1位です。経営品質に関心のある者としては、どんなサービスなのだろうと興味津々。
チェックインカウンターに並んでいると、籠に入った飴を持った女性が声をかけてきました。手続きもスムーズに終わり、ゲート前では、またも飴を持った女性が搭乗を待っている顧客に声をかけながら出入国カードを配っていました。搭乗開始の案内は、音声アナウンスに加え案内記載ボード持ち回りの2段構え、聞き取れなくても安心です。客室乗務員のみなさんは笑顔がステキで、ヘッドフォンのビニール袋やちょっとしたゴミもこまめに回収、顧客への声かけも多く見られました。シートも広く機内エンターテイメントも充実していてなかなか快適でした。サービスに関するアンケート調査を依頼されたため受取り、アンケート用紙は7ページ、大項目で29項目とかなりのボリュームでした。項目からは当社が何に注力しているかがわかり参考になりました。シンガポールでも政府が経営品質への取り組みを認証する制度があるようです。
2.空港に迎えに来ていただいた方の車に乗って感じたこと
駐車場を出るときに、日本のETCのようなシステムがピピッと反応しました。
聞くといわゆる電子マネーでした。駐車場は秒単位で課金されると聞きさらにびっくり。滞在中何度も駐車場を利用しましたが、表示される金額は利用しやすい低価格な印象でした。この電子マネーは、道路通行料金や渋滞時間帯に一般道路で市街中心へ進入する際にもノンストップで課金されるとのこと。すべての自動車、オートバイに普及しているようでした。後日調べたところ、ERP(Electronic Road Pricing:電子式道路通行料金徴収システム)という車載支払カードでした。
電子マネーと言えば、私はJR西日本の「ICOCA」を愛用していますが、京都駅で確認したいことがあり窓口に並ぶとそこはJR東海で「ここではわかりません」と言われ、転居先の博多駅で窓口に並ぶとそこはJR九州でまたしても「ここでは判りません」と言われ、何とも不便なシステムだなぁと思う今日この頃です。日本は差別化が得意、アレンジが得意であり、そこが良さだと思うのですが、もう少し合理的に進められないものでしょうか。シンガポールは国の成り立ちもあってか、政府が他国との競争力強化のためにITの導入・活用に着目し、ITプロジェクトを実施、その結果電子マネーも普及しているのでしょう。とても便利そうに感じました。
次に目に入ったのがバックミラー横に設置された車載カメラでした。聞くと、事故が増え相手がいろんな国の人で話が通じないことが増えてきたので状況を録画しておくのだとか。自分で備えるという何ともシンプルな考え方です。そして、スマホは定位置にセットして音楽再生にナビにと大活躍。運転席周りには、複数の電子機器が稼働しておりシステム依存度の高さを痛感しました。滞在中にとにかくスマホを手に何かをしている人をたくさん見かけました。
3.初対面の挨拶で職業を聞くと・・・
「自分の仕事か?ファミリーの仕事か?」と質問されました。聞くと、家族全員が事業家でした。今回多くの方にお会いしましたが、ご夫婦ともに事業家、家族も事業家という方も多かったです。共働き世帯も多いようで屋内屋台村のような飲食店街での外食比率も?そうでした。一食約300円とリーズナブルでしかもおいしい、これまた便利な仕組みだと思いました。30歳代の方に多くお会いしましたが、事業規模は違うものの、みなさん事業意欲は?そうでした。頑張れば頑張っただけ評価されて自分に返ってくるので、どんどんチャレンジするマインドのようです。一方、飲食店やアパレルでの店員は不人気なのだとか。清掃を担ってくれるシニア人材も不足しているとのことでした。確かに、ショッピングモールではフィリピン人の店員さんを多く見かけました。
4.多民族国家なのだと実感
チャイナタウン、リトル・インディア、アラブ・ストリートといった異国情緒あふれるエリアがありました。ホテルの近くが丁度、アラブ・ストリートだったのですが、アラブ系の方がエリア内で暮らしている感じでした。スーパーマーケットもエリアごとに資本が各国それぞれで、品揃えも資本別に様々なようでした。
後で聞くと、公団のような住居においては外国人の住める割合が規定されているようで、国主導で混ぜないのだと感じました。融合ではなく共存、それぞれの文化がそのまま存在している印象を受けました。マリーナ、シティ、オーチャード他、エリアによってかなり印象の違う国だと実感しました。20年程前にも社員旅行で行っていますが違う国のような印象でした。
5.飲食店のおしぼりにも・・・
夕食は住宅街の中華系料理店でしたが、おしぼりのパッケージ裏にISO9001とHACCPのマークを見つけてびっくりしました。その後も複数のお店で同じマーク入りのおしぼりが出てきました。聞くと、シンガポールは認証制度に注力しているようで、認証取得していないと取引しにくいようでした。顧客も認証品が好きなのだとか。ごみを捨てると罰金を取られる国、きれいな国という20年前のイメージよりも更に進化しているように感じました。
6.酒、たばこ、車の税金が高いらしい
酒とたばこの金額が高く、聞くと税金が高いのだとか。では、みんな買わないのかと聞くと、どんどん飲んで納税して国が豊かになることは良いことだと言われました。なるほどなるほど。
見かける車はどれも小奇麗で、排気ガスも感じない。聞くと、新車登録から10年以上は乗れないのだとか。新車登録後3年は車検なし(と聞こえました)、4年目、5年目が厳しく、通らなければ保険に加入できない、それで事故でも起こすと大変なことになる、だからみんなちゃんと車検制度に従っている。政府によるクリーンな空気を維持するという方針もあるのだとか。今回乗せていただいた車はマツダ車が多く、特にトランクの広さにびっくりしました。車を持っていることは事業家のステイタスなのかもしれませんね。
あれこれ書いてきましたが、アジアのハブとして注目されるシンガポール、世界に向けたサービス品質を意識している一面だったり、多民族が共存しているエリアから国の成り立ちを感じたり、事業への関心の高い若者のパワーを感じたり、合理的な仕組みを体感したり、IT依存度の高さを垣間見たりと、個人観光では感じられなかったことをたくさん感じた刺激的な2泊3日でした。もちろん講座内容の打ち合わせもみっちりしました。多国籍な参加者によるビジネス講座での気づきをまたご報告する機会があれば幸いです。
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■執筆者プロフィール
中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
(公財)京都高度技術研究所 新事業創出支援部 コーディネータ
(一財)九州産業技術センター 九州地域新産業戦略に基づくイノベーション創出事業 コーディネータ
中小企業診断士、ITコーディネータ、日本経営品質賞セルフアセッサー、
(財)生涯学習開発団体認定コーチ、キャリア・デベロップメント・アドバイザー、