設備投資に関する優遇税制は、アベノミクスの民間投資を喚起する成長戦略の
具体策の一つです。新聞紙上では、平成26年度税制改正の内容を概略として紹介
されていますが、旧制度との違いや中小企業投資促進税制と生産性向上設備投資
促進税制との関係が分かりにくいため、今回は要件の違い等についてできるだけ
わかりやすく紹介したいと思います。
1. 中小企業投資促進税制の概要
本制度は中小企業者等が、機械装置等の対象設備を取得や製作等をした場合に、
税制優遇措置(特別償却30%、税額控除7%の選択)が適用されるもので、適用
期限が旧制度より3年延長となります。対象設備は次の通りです。
【対象設備】
・機械装置: 単品160万円以上
・工具器具備品: 一定の電子計算機(複数台計120万円以上)
一定のデジタル複合機(1台120万円以上)
一定の試験又は測定機器、測定工具、検査工具
(1台30万円以上かつ複数台計120万円以上)
・ソフトウェア: 単品70万以上
(単品30万円以上かつ合計70万円以上を含む)
・貨物自動車: 車両総重量3.5t以上
・内航船舶: 取得価額の75%が対象
※税額控除の上限は法人税額又は所得税額の20%です。
※税額控除の限度額を超える金額は、その後1年間繰り越すことができます。
なお、本制度の適用を受ける場合、確定申告において一定の資料の添付、記載
が必要となります。
2.生産性向上設備投資促進税制との関係
生産性向上設備投資促進税制も同じく平成26年度税制改正で新設されました。
こちらの制度は先端設備や生産ライン・オペレーションの改善に資する設備を導
入する場合、税制優遇措置が適用されますが、中小企業者等である場合、税制優
遇措置の上乗せがあります。
1)生産性向上設備投資促進税制
~生産性向上に資する一定の設備を導入した場合
・特別償却...即時償却
・税額控除...5%(但し、建物・構築物は3% )
※資本金の額に制限はありません。
2)中小企業投資促進税制
~中小企業者等が設備導入をした場合
(1)資本金の額3000万円以下
・特別償却...30%
・税額控除...7%(但し、建物・構築物は3% )
(2)資本金の額3000万円超1億円以下
・特別償却...30%
・税額控除...なし
3)中小企業者等の税制優遇措置の上乗せ制度
~中小企業者等が生産性向上に資する一定の設備導入をした場合
(1)資本金の額3000万円以下
・即時償却
・税額控除...10%
(2)資本金の額3000万円超1億円以下
・即時償却
・税額控除...7%
税制優遇措置の上乗せ適用を受けるには以下の点に注意してください。
・中小企業者等が前項1の機械装置、工具器具備品、ソフトウェアで生産性向上
に資する設備であること(貨物自動車、内航船舶は適用無し)。
・生産性向上設備投資促進税制の「先端設備」、「生産ライン・オペレーション
の改善に資する設備」の要件等を満たすこと。
※取得日がH28年4月1日からH29年3月末日までは特別償却50%又は税額控除4%の選
択となります。ただし、建物・構築物は特別償却25%又は税額控除2%の選択と
なります。
3.生産性向上の要件
1)先端設備
(1)特徴 事業者の証明書申請不要、単品設備である
(2)設備 機械装置、工具、器具備品、ソフトウェア、建物、建物附属設備
※機械装置以外は一部設備のみ
※建物、建物附属設備は中小企業投資促進税制適用なし
(3)手続 設備メーカーから証明書を受け取り、確定申告書等に添付
(4)要件 ・最新モデルであること
・旧モデルと比較して生産性が年平均1%以上向上していること
・一定の価額以上であること
-機械装置:160万円
-工具器具備品:120万円(単品30万円以上)
-ソフトウェア:70万円(単品30万円以上)
-建物:120万円
-附属設備:単品60万以上かつ合計120万円
2)生産ライン・オペレーションの改善に資する設備
(1)特徴 複数設備可、投資計画の申請が必要
(2)設備 機械装置、工具、器具備品、ソフトウェア、建物、建物附属設備、
構築物
(3)手続 投資計画を作成し、公認会計士又は税理士の確認を受け、経済産
業局へ申請。確認書受取り、確定申告書に添付
(4)要件 ・投資利益率が中小企業者等は5%(それ以外は15%)
・一定の価額以上であること
-機械装置:160万円
-工具器具備品:120万円(単品30万円以上)
-ソフトウェア:70万円(単品30万円以上)
-建物、構築物:120万円
-附属設備:単品60万以上かつ合計120万円
4.最後に
先端設備を導入される場合には、確認書が取得できているかどうか販売業者に確
認された上で、購入を検討されるとよいでしょう。
特別償却よりも法人税額の“値引き”である税額控除の方が有利になるケースが
一般的には多いと思いますが、自社の納税額やキャッシュフローなど様々な条件か
ら有利不利を判定してください。
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■執筆者プロフィール
氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり経営戦略株式会社)
資 格 ITコーディネータ
HPアドレス http://www.hikari-advisor.com
21世紀に羽ばたく「あるべき姿」の実現に向け、お客様の羅針盤として真の経営
改革支援と、事業リスク分野における情報提供、将来に向けての対応策をご提案
いたします。
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