巴里祭 ~ネーミングって大事~ /上原 守

 本稿が掲載される7月14日は「巴里祭」です。
「巴里祭」はルネ・クレールの古い映画です。
原題はQuatorze Juilletで,単に7月14日という意味だそうです。この映画を配
給した会社が邦題を「巴里祭」にしたところ大ヒットしたそうですが,この日を
「巴里祭」と呼ぶのは日本だけです。
 …とここまでは知っていましたが,今回,この原稿を書くのにWikipediaを調
べていたら,「巴里祭」は「パリさい」ではなく元々は「パリまつり」と呼んで
いたらしいです。今となっては,なんだかパン屋さんみたいですが…
 「巴里祭」の原題「7月14日」は,フランス革命でバスティーユ牢獄が襲撃さ
れた日です。フランスでは,フランス共和国の設立を祝う日ということで,祝日
になっています。
 ちなみに本稿を書いているのは7月4日で,アメリカ合衆国の独立記念日です。
この独立記念日(Independence Day)も,ウィル・スミス主演で宇宙人からの侵
略を受けるSF映画になっています。また「7月4日に生まれて」という,トム・ク
ルーズ主演の映画もあります。こちらはベトナム戦争を扱った戦争(反戦)映画
でした。
 「巴里祭」のストーリーは大したことない(失礼!!)ですが,フランス映画ら
しく洒落た恋愛物になっています。同じように独立記念日を扱った映画でも,ア
メリカは戦闘シーン満載です。
 何となく,フランスの文化とアメリカの文化の違いが…(笑)

■バスティーユ襲撃,その前後
 バスティーユ襲撃は1789年のことですが,共和国になったのもつかの間,ナポ
レオンによる帝政,王政復古,共和政,また帝政とフランスの政治体制は目まぐ
るしく変わっていきます。一応は現在まで続く共和政ができたのは1870年になっ
てからです。ここら辺は,要求仕様の検討が甘いシステム開発みたいです。
 もっとも,共和政という政治体制は,古代ローマを除くとあまり例が無かった
ため,あるべき姿(ToBeモデル)が明確になっていなかったのでしょう。そのた
めに「共和政樹立プロジェクト」が迷走したのは,仕方が無いかもしれません。
 ちなみに,1789年の日本は寛政の改革の最中で,棄捐令(きえんれい)という
武士の借金棒引き令が出ています。
 フランス革命の背景には,国の歳入の9倍にあたる累積赤字の問題があるそう
です。今の日本の累積国債残高が1000兆円で,国家予算が一般会計100兆円,特
別会計400兆円くらいで,国税の歳入が54兆円,特別会計の歳入が410兆円強…毎
年40兆円規模の赤字国債が発行されています。(財務省平成24年度決算から)
 江戸時代の武士は官僚で,終身雇用ならぬ終家雇用とでもいうべき雇用形態で
した。長子相続ができる限り身分は保障(固定)されていました。幕府や藩の財
政が苦しいと,インフレ政策と給与カットすることで,債務を個人や家としての
借金に転換してしまうことができました。武士階級は借金で生活が困窮しても,
棄捐令でそれを棒引きにしたら借金はチャラにできるという荒業があったのです
が,今はそういう訳にもいかないですね。

■名前を変えるとブレイクする ?
 また話題があらぬ方へ行っていますので,本題に戻します。「お前の話に本題
はあるのか!?」という声も聞こえますが…(笑)
 伊藤園さんの緑茶飲料で「お~いお茶」ってあります。この商品は,伊藤園さ
んが缶入りにした日本茶の風味を守る技術を開発して,缶入りで売り出したのが
最初です。元々は「缶入り煎茶」という,身も蓋もない名前でしたが,名前を変
えて大ヒット商品に成長しました。
 発売当初の消費者意識は,普通の緑茶や水は買うものではなく,抵抗感もあっ
たのですが,今では媒体をペットボトルに変えて,緑茶飲料の代名詞にもなって
います。この例は,マーケティングにおけるネーミングの重要性を示すのに使わ
れることもあります。
 技術的な流れで言えば,緑茶飲料は伊藤園さんでなくても作れたと思います。
恐らく缶入りの「お~いお茶」が無ければ,どこかがペットボトルの緑茶飲料を
発売していたと思います。「お~いお茶」のネーミングによる先行者利益が,今
の伊藤園さんを作ったと思います。

 最近のネーミングでは,小林製薬さんが有名です。
 小林製薬さんは大阪の医薬品メーカーですが,医薬品だけでなく衛生関連の商
品も多く「熱さまシート」「のどぬ~る」「アイボン」や「ナイシトール」等の
効能と商品名が一緒になった製品を多数市場に投入しています。昔からの主力商
品には「アンメルツ」「ブルーレット」「サワデー」等があります。
 こちらのネーミングも恐らく,按摩,ブルー+トイレット,爽やか+dayが元
だと思います。さらに最近では…
「按摩」→「アンメルツ」→「アンメルツよこよこ」
「ブルー」+「トイレット」→「ブルーレット」→「ブルーレットおくだけ」
「爽やか」+「デイ(day)」→「サワデー」→「爽やかサワデー」
になっています。今のネーミングセンスもこのラインを推し進めた結果なのかと
思います。ちょっと「大阪ノリ」が入っていますが…(笑)
 元々,薬の名前は分かりにくくて,胃酸を止めるH2ブロッカーは「ガスター」
ですし,鎮痛薬では「ロキソニン」とかの名称があります。小林製薬さんなら,
「イサントール」とか「イタミノン」とか命名しそうです。
 また,小林製薬さんはCMにも積極的です。TVCMだけでなく鬼太郎の映画で目玉
親父がアイボンを使ってるのを見たことがあります。映画では制作費を確保する
ために,あるシーンに商品を登場させるって,良くあるのですが…また話がずれ
るので,ここまでにします。

■ネーミングの方向性
 6月21日のセミナーでも少しお話しましたが,何かを考えるときに軸を設定す
るのは有効です。2軸が設定できればマトリックス思考ができますし,1軸だけで
も方向性を考える事ができます。
 例えば,具体的-抽象的,商品訴求-ブランド(社名)訴求,説明的-イメー
ジ的とかの軸が考えられます。「缶入り煎茶」は具体的,商品訴求,説明的です
し,「お~いお茶」は具体的,商品訴求,イメージ的です。ポルシェやフェラー
リ,Zippo等は,商品名とブランド名が一緒に使われるようにしているので,抽
象的,ブランド訴求,イメージ的かと思います。
 6月30日の杉村さんの「愛されるお店になるために」でAmazonの話が出ていま
した。Amazonが世に出たときの主力商品は本だったので,Book.comというURLで
も取れたと思います。しかしAmazonは全ての商品をネットで販売していくという
ポリシーがあったそうで,あえて世界最大の川の名前をつけたそうです。
 銀座に「テンダー」というバーがあります。ここのオーナーバーテンダーの上
田さんは「バーテン」と呼ばれるのが嫌いで,「バー・テンダー」と名づけたそ
うです。社名等では,業務内容訴求-ポリシー訴求の軸も考えられますね。

■ネーミングの重要性
 音楽のバンド名では,音楽の方向性やバンドの特徴でネーミングされることが
多いように思います。「The Rolling Stones」「GLAY」や「プリンセス プリン
セス」(古い!!)とかがあります。最近では「SEKAI NO OWARI」とかも,そうか
も知れませんが,よく知りません。確かに「Princess Princess」ってバンド名
で「KISS」みたいなのが出てくると,ちょっと引きます。
 でも,最初に「AKB48」って聞いたときは,マシンガンかと思いました。

 字数を完全にオーバーしていますので,また,話を戻します(笑)
 ソフトウェア開発の世界でも,開発プロジェクトの終了を以前は「カットオー
バー」と呼ぶことが多かったのですが,この10年くらいは「サービスイン」と呼
ぶことが増えています。私は,プロジェクト名も「○○システム開発プロジェク
ト」ではなく,出来るだけ「○○サービス構築プロジェクト」とかにするように
心がけています。「○○システム開発プロジェクト」の「カットオーバー」に向
けて仕事をして「カットオーバー」の日を迎えるのと,「○○サービス構築プロ
ジェクト」の「サービスイン」を迎えるのでは,メンバーの意識も随分変わって
くるように思います。
 また,大きいシステムでは,複数のサブシステムに分けて開発するのが普通で
すが,この場合もサブシステムがやるべき事を明確にして,サブシステム間のイ
ンタフェースを極力小さくします。また,連携方式を統一することで,サブシス
テムの強度を向上させます。場合によっては「○○システム-××システム間イ
ンタフェース構築チーム」とか作ります。こうすると,結果的にシステムやプロ
ジェクトに分かりやすい名称をつけることが出来るようになります。
 構築チーム内では,逆に機能単位,インタフェースを中心に構築するメンバー
と,ビジネスロジックを構築するメンバー,DBアクセスを担当するメンバーに分
けるようなこともします。

 P2Mでいう「プログラム・マネジメント」は,案外,各プロジェクトのネーミ
ングとか,こういった基礎的なことから始めるのが有効かも知れません。

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■執筆者プロフィール

上原 守
ITC,CISA,CISM,ISMS審査員補,プロジェクトマネージャ

エンドユーザ,ユーザのシステム部門,ソフトハウスでの経験を活かして,上流
から下流まで,幅広いソリューションが提供できることを目指しています。

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