私事ではありますが、大学を卒業し入社した当社を10月にめでたく定年を迎えることになりました。昨年のこのコラムで、定年を迎えられた先輩社員の入社から現在にいたる業務経歴とITの変遷について述べさせていただきましたが、私自身もその立場になってみると感慨深いものです。
私の場合は、入社以来、常にシステム開発部門でSEもしくはPM(プロジェクトマネジャ)を担当してきましたが、前回、紹介させていただいた方の分野とは違った歩みをしてきており今回、その振り返りと今後に向けての想いを述べさせていただきたいと思います。
入社は1978年で、大型汎用機の時代でしたが、事務計算でなく技術計算分野で原子炉の炉心出力予測シミュレーションの開発を担当しました。当時は、関西であれば敦賀、美浜、大飯、高浜発電所が稼働中であり、以降、各地で営業運転が開始される世の中の流れで、現在の原発問題について、当時はどこまで想像できたでしょうか。開発言語は、FORTRANで現在使用率は減ってきているものの数値計算やプロセス制御の分野では、需要がある言語の一つです。
1980年前半は、プロセス制御分野(分析機器や環境試験機器制御)の開発に携わり、このあたりから普及し始めたパソコンを利用した制御システム開発も経験しました。特に印象的だったのが、プロセス制御によって実際にモノが動く現場を目の当たりにして、汎用大型機で処理されるビジネス系のシステムとは違った感覚を肌で感じとりました。また、機器に組み込まれているマイコンのプログラム開発も経験し、コンピューターはこのようにして動いているのだということを実感する機会でもありました。当時は、産業の米といわれた鉄が半導体に変わっていく時期であり、日本の半導体のシェアも米国を抜き1位となった時期でありましたが、今は韓国勢に2位の座を奪われており隔世の感です。
1980年後半から1990年前半にかけて、今では、当たり前のユーザーインターフェースであるWindow機能が、パソコンではまだ普及しておらず、高価ではあるが、Window機能があり処理能力の高いワークステーションを利用しての開発に携わりました。OSとしてはUNIXが主流でしたが、その後汎用大型機にかわるサーバマシンとして進化して行くことになります。
この時分から、SEの比重よりPMの比重が高くなっていく傾向にあり、マネジメントを経験していく過程でSEではなかった色々な苦労を味あうことになります。
1990年後半からはパソコンが低価格になり処理能力も向上し、社員に1台のパソコンが割り当てられる時代となってきました。大型汎用機にかわり大量データをサーバにおいて、パソコンからネットワークを通じてアクセスし、パソコン側でそのデータを処置し、画面も操作性を重視したクライアントサーバシステムでのシステム構築が主流になってきました。世にいうダウンサイジングの時代ですが、種類の違うハードウェア、ソフトウェアで構成されることで、複数の要素技術でシステムを構成する必要があり、PMとしてスキルに適合した要員のアサインと合わせて要員育成を進めていくのと、新たな技術的課題の解決および開発標準化を進めていく必要があり、想定した進捗どおりに進まないのが悩みの種でした。
また、顧客要求も複雑さを増し、規模の大型化も相まって予期せぬ問題を発生して、種々のトラブルが発生していました。
1990年後半から2000年代に入り、意に反してトラブル案件のシューティングのリーダやプロジェクト管理支援を担うことが多くなり、以前にも増してプロジェクト管理の重要性がクローズアップされます。当社においても社内のプロジェクトマネジメント機能の充実のため、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が設立されました。私も現在はその組織の一員としてプロジェクトリスクの早期発見とその対策、支援を行い、トラブルの未然防止をミッションとして担っています。
このコラムで何度か取り上げているPMOですが、私見ではありますがPMを支援するものであったはずが、実態としては、進捗、品質、コストに問題ないかをPMやプロジェクトチームの作業内容をチェックすることに注力する傾向があります。今後、PMOがどのように変化するかはわかりませんが、大型汎用機からクライアントサーバへ、インターネットの拡大で分散から集中へ、クラウド環
境の活用とITの変化が今後、ますます加速されてくるのは確かです。
ただ、ITベンダとしては顧客が真に何を求めているかを常に意識し、「安く、早く、うまい」ものを提供できるように技術者は常に切磋琢磨し経営に有効に活用できるように心がけていく必要があると思います。
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■執筆者プロフィール
西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。