『計画のグレシャムの法則』に陥っていませんか / 大塚 邦雄

 私はERPパッケージに関係した仕事を長年していますが、ERPパッケージ
の需要が飽和状態となり、かつての勢いがなくなって久しくなります。それでも
導入企業は定期的に行われるバージョンアップや、保守契約期間の終了、あるい
は法改正による制度変更に迫られ対応を余儀なくされます。そのような状況の中
で感じたのが、計画のグレシャムの法則です。

 グレシャムの法則をご存知の方も多いと思いますが、俗に「悪貨は良貨を駆逐
する」と言われているもので、金本位制時代の話で、金の含有量を多い貨幣は手
元に置かれ、金の含有量の少ない貨幣が流通するというものです。我が国でも江
戸時代に貨幣の吹き替えと言って、貨幣が改鋳され、幕府の財政は改善されたが、
経済は混乱しました。これと似た現象が計画にもみられるのです。
 つまり、計画のグレシャムの法則とは、日常における緊急度の高い問題や、日
常のルーチンワークに追われ、本来考えるべき戦略的な計画が置き去りにされて
しまうことを言います。

 冒頭ではシステムのバージョンアップを取り上げましたが、直近で皆様の記憶
に新しいのが、今年3月でサポート切れとなったWindows XPではないでしょうか。
渋々パソコンを入れ替えられた会社も多いと思います。この様な時にむしろ逆に
使い方を見直し、結果としてWindows XPに代わる新しいOSに切り替えるのがベ
ターです。

 話をバージョンアップに戻しますと、バージョンアップ後は新しいバージョン
の保守期間が切れる迄、当分の間はシステムの改変の予算は付かず、次のバージ
ョンアップ迄の間、システムの保守業務に専念してしまい、大所高所からシステ
ムを見直す機会が失われてしまいます。
 それは、例えば話になりますが、よく京都の伝統を守る滑稽噺として、子供に
「なんで、そんなことするん?」と聞かれて、父親から「そんなん昔からや!」
と言われた子供が納得してしまうという話があるが、それと似たことが担当者の
間で起きていませんでしょうか。
 ルーチン作業は、作業に疑問を持たせずに流してしまい、創造的な思考を停止
させてしまいます。 初めは明らかに理由や目的があったものが忘れ去られ、そ
の意義を失ったまま続けていることが案外多いものです。

 時折耳にするのは、情報システム部門が役員会でバージョンアップ予算を獲得
する為に、何か付加価値を付けて上申する場合がありますが、それが永年の懸案
事項であれば良いのですが、取って付けたような改善策で予算を獲得するようで
は、その企業にとって不幸なこととなります。

 安定稼働している情報システムも、他の製造設備が老朽化するのと同じように
陳腐化して交換が必要になります。情報システムを含めて設備投資は減価償却し
ますが、1つの考えとしてその設備の減価償却をしてからが、利益に大いに貢献
するのであって、古くなった設備を長く使い続ければ続ける程利益を生み出すと
いうものがあります。日本の場合はそういう考えの経営者が多いのではないでし
ょうか。しかし、厳密に例えば限界利益を求めようとすれば、正しく減価償却し
なければなりません。減価償却を法定償却率に合わせている例が多いですが、企
業経営上は独自の設備投資計画に基づき、最適な設備で最大の利益を出すことが
経営者に求められる使命でなります。米国などでは償却が終われば新たな投資を
すると言われています。競争力の根源をどこに求めるかによりますが、情報化社
会において、情報インフラは欠かせないものになっています。

 計画のグレシャムの法則に陥らないためにも、利用できるものをわざわざ捨て
る必要はありませんが、現在ではクラウドをはじめ、技術が進んでいますので自
社に合った情報システムを組み合わせて利用することが大事です。


(注)計画のグレシャムの法則 ハーバート・サイモンが唱えた法則
   Herbert Alexander Simon,(1916年6月15日 - 2001年2月9日)は、
   アメリカ合衆国の政治学者・認知心理学者・経営学者・情報科学者 。
   心理学、人工知能、経営学、組織論、言語学、社会学、政治学、経済学、 
   システム科学に影響を与えた。
   大組織の経営行動と意思決定に関する生涯にわたる研究で、
   1978年にノーベル経済学賞を受賞した。

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■執筆者プロフィール

合同会社グローバルITネット
 代表社員 大塚 邦雄
 ITコーディネータ、情報処理システム監査資格

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