タイトルをみて???と思われた方も多いと思います。皆さんが仕事で使っている情報システムには、実は性格があります。
ガートナーが提唱しているペースレイヤーモデルが性格分類の一例で、システムの更新頻度に応じて企業システムを以下の3つに類型化しています。
革新システム:新しいアイデア
→ 試行錯誤を繰り返す。頻繁に変更させながら仕上げていく。
差別化システム:異なるアイデア
→ コアコンピタンスをつかさどる。競争優位を維持するために迅速な変更が求められる。
記録システム:会計、人事など
→ 変化が少ない。誤りがないようにしっかり作る。パッケージを使う。
この類型は、システムの性格に応じて開発の進め方や使う技術を変えないといけないということを示しています。記録システムは、差別化が必要ではないので、パッケージを使って、むしろ社内の例外処理をなくしてパッケージにあわせていくということが求められます。古典的なウォーターフォール型の開発手法が適しています。
差別化システムは、コアコンピタンスにかかわるところなので、「絶対に」パッケージにあわせてはいけいところです。自分たちがどうしたいのかTo-Beを描いてそれを実現するためにシステムを組むのですが、ライバルや市場の動きにあわせて、柔軟な組み換えも求められます。このため、SOAなどのような組合せ型でのシステム開発が必要で、これには、それに即した開発プロセスを適用する必要があります。
一番上の革新システムは、新規事業と連動していることが多く、ビジネス的にはサービスを市場に提供して反応を見ながらチューンナップしていくことになるので、システム側としてもクラウド、アジャイル、SOAを組み合わせた開発スタイルが必要となります。
残念ながら、このような性格を意識してシステム構築しているベンダもユーザもありません。革新システムであるのもかかわらずウォーターフォールで開発しようとして、仕様変更が頻発し、ユーザ側もベンダ側も疲弊してしまうという悲劇的な事例は枚挙にいとまがありません。
この逆の例も多いです。記録システムであるにも関わらず、「うちはこのやり方してるから」と言って、本来投資すべきでない、社内の独自ルールに無理やりパッケージを合わせようとして無駄な金を使ってしまう。作った当初は良いのですが、OSなどの関係でバージョンアップしようとすると、また同じ「無駄な」カスタマイズが発生してしまい、本来投資すべき「差別化」システムにまわすお金がなくなってしまうという悲劇です。
以上ご紹介したような判断ミスは、IT担当者の責ではありません。経営者の判断ミスです。また、この判断にはITの知識は不要です。システム開発の対象とする業務はどういう性格のものであるかは、ITではなく経営者の判断が求められるものです。
読者の皆さんは、同じ悲劇を繰り返さないよう、しっかりと意思決定して頂きたいと思います。
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■執筆者プロフィール
氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 ITコーディネータ京都 副理事長
(株式会社ロックオン 特別顧問)
資 格 ITコーディネータ、公認システム監査人
専門分野
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ など