ケータイ進化2014 / 松井 宏次

四季の移り変わりが昔のようでは無くなって来たとはいえ、今なお、暮らしを取り巻く風物が秋を感じさせてくれます。
気温が下がって来て、気がつくと田園に秋アカネが飛び始めています。一般に赤トンボと呼ばれ親しまれて来ましたが、多分にもれず、その数は減少して来ています。
少しづつ早くなって行く秋の暮れ時に、夕陽を浴びて秋アカネが稲穂の上を飛び交う。そんな景色を大切に守ろうという取り組みも、各地であるようです。

さて、このコラムで、何度か取り上げて来たもののひとつが「ケータイ」。
携帯「電話」ならぬ「ケータイ」への進化をとりあげて来ましたが、今回は、少し広く、ケータイとタブレット端末を取り上げてみます。

ちなみに、最近では、ケータイのなかでも、すっかりスマートフォンばかりになったような気になってしまいがちです。
政府の消費動向調査をはじめ、少しづつ報じられる数値は異なるのですが、乱暴にくくってしまえば、国内で、世帯あたりの普及率として、携帯電話は9割を越え、スマートフォンは、どうやら50%あたりのようです。電車やバスのなかで、あちらこちらでスマートフォンを触ったり、イヤーフォーンを挿して音楽を聞いたりしている姿を目にすると、世の中から、従来型の携帯電話(ガラケー)が消えたのではと思いたくなりますが、もちろんそんなことはないようです。ガラケーの普及率をスマホと両方の場合も含めてみてみると、ガラケーは7割を越える世帯普及率になるようです。

しばらく前のことですが、アジア地域で、スマートフォンではなく、電話機能のついたタブレット端末が選択される動きがあるといういうニュース記事が目にとまりました。今年’14年の第二四半期に、アジア太平洋地域(日本以外)でのタブレット端末の25%が、電話機能付きだったとのことです。
そのニュースの解説によれば、画面が大きくて電話もできるタブレットを売りだしたところ人気を集めたということで、何より低価格だったことがポイントだと説いていました。

もとを辿れば、今のタブレット端末普及の始まりは言うまでもなくアップルのiPadでした。動画サイトにもアップされている発表時のプレゼンテーションをご覧になったかたもいらっしゃると思います。そこでは、iPadを世の中に出すのであれば越えなけれなならないハードルの高さから語りはじめられています。スマートフォントとPCの間に存在して、圧倒的な魅力をもつデバイスである必要性についてです。
そのとき語られたコンセプトと、アジアでブームがおきそうという「大画面電話タブレット端末」とは、全く異質です。もちろん、これは、ことの良し悪しではありません。タブレット端末の市場での展開を眺めながら、「そうかそうか、パソコンの代わりがひと通りできて、電話もできて、値段が安け
れば、そりゃいいよね」と製品を送り出して来たことは、下手に、ありきたりだったり真似事だったりする「付加価値」を訴えるより、よっぽど賢い選択です。
ちなみに、こうした端末電話が日本で受け入れられるには、それを使っている姿が様になっていると利用者が思えるような、ひとひねりが必要になるのでしょう。

ところで、’12年のコラムを振り返ってみると、スマートフォンであっても、タブレット端末であっても、機器ハード性能などだけでなく、ユーザーとしての利用目的に立ち返るべきと語ったうえで、「現在、その普及が多方面で促されている、ビジネスでのタブレット端末の利用においては、一層その見定めは大切です。」と結んでいました。
当時は、あちらこちらで、使われないタブレット端末「お飾りパッド」ができてしまうんじゃないかと、そんな思いがあって書いていたのですが、読み返してみると、なんとも、おせっかいなメッセージです。
今では、ビジネス上での利用の検討でも、まずはタブレットありきといった、このデバイスに切り替えることが何かをもたらしてくれるのだ、というような売り込みやプランは、さすがに無くなっているようです。

タブレット端末では、テキスト、画像・映像、音声とを自然に織り合わせた使いかたが、どう生み出されるかといったことが、これからの課題のひとつだと思います。ただ、そうしたことは、ビジネスに限ったことではないですね。そもそも、タブレット端末に関わらず、パーソナルコンピュータ全体に
渡る課題であり、まだまだこれから味わえる「お楽しみ」なはずです。楽しめるということが、今なお、コンピューティングを前に進める原動力だと思います。

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  ■執筆者プロフィール

  松井 宏次(まつい ひろつぐ)
  ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター