ニュース報道で見るIT関連の法律事例について / 松山 考志

 最近、企業のブランドや信用、業績にインパクトを与えるニュースで、大きく
3つ気になったものがありましたので紹介します。

 1つ目は不正競争防止法に関係する事例です。今年3月に東芝で元社員が在職
中に研究データを不正に持ち出し、同社退職後にライバル企業の韓国ハイニクス
に情報提供したと報道されました。元社員は情報の持ち出しで起訴され、今も東
芝はハイニクスに1,091億5千億円の賠償金支払いを求めて係争中です。ITと直
ちに関係はありませんが、本件のような開発に関する技術情報の漏えいが発生し
た場合はシステム管理者の業務範囲となる場合がありますので触れておきたいと
思います。ここで問題となったのは不正競争防止法です。法は原則として、事業
者の営業秘密を、不正な利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的
で、不正取得、領得、不正使用、不正開示のうち一定の行為について、個人につ
いては10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金を、法人については3億円以下
の罰金を科すとしています。ここで営業秘密とは、秘密として管理されているこ
と、情報にアクセスできる者を制限すること、情報にアクセスした者にそれが秘
密であると認識できることの3つの要件を満たしている必要があります。営業秘
密というには、この3つの要件が当てはまる必要があるために企業側は注意が必
要です。
 通信教育大手ベネッセホールディングスの顧客情報漏えい事件の場合は、同社
が管理していた個人情報が営業秘密に該当するとされ、不正競争防止法が適用さ
れています。情報を不正に持ち出したSEは、営業秘密の複製容疑のため不正競争
防止法違反で起訴されました。一方で、同社は真の被害者である情報が流出した
個人に対して500円の金銭補償を行うようです。ここで、個人情報保護法がどの
ように関わってくるのかという疑問が生じますが、本件については個人情報保護
法を根拠に主務大臣である経済産業省がベネッセホールディングスに対して報告
徴収を要請しています。法32条は、「主務大臣は、この節の規定の施行に必要な
限度において、個人情報取扱事業者に対し、個人情報の取扱いに関し報告をさせ
ることができる」と規定しています。この報告要請に対して報告をしない又は虚
偽の報告をした場合は30万円以下の罰金に処されます。その他に個人情報保護法
は、違反行為に対して中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨
を勧告若しくは必要な措置を命ずる等の対応を取ることができ、この命令に違反
したものは6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。このように、個
人情報保護法では、行政からの命令に違反した場合(56条)と、報告要請に対し
て報告をしない若しくは虚偽の報告をした場合(57条)が処罰の対象となります。
経済産業省はベネッセの件を受けて経済産業省分野における個人情報保護法ガイ
ドラインを改訂し、委託先の監督や情報の適切な取得など内容が拡充されるよう
です。

 2つ目は個人情報のビックデータとしての利用です。個人情報保護法について
は、今年6月に政府の改正に向けての検討状況が報道されています。内容として
は保護すべき個人情報に、住所や氏名だけでなく顔や指紋の認識データ等身体的
な特性に関する情報が加わるようです。また、本人の同意がなくても、個人が特
定できないような加工処理をすれば、企業がデータを提供できるような検討もさ
れています。ここではパーソナルデータを含むビッグデータをビジネスに活用し、
経済成長を促そうとする国の考えが見えてきます。この「ビッグデータ」の利用
と個人情報保護法の解釈をめぐって最近問題となった事例として、Suica の事例
があります。昨年JR東日本は約4,300 万枚に及ぶSuica の履歴情報を日立製作所
に提供し、分析結果を用いたマーケティング資料を駅周辺の事業者に提供するこ
とを発表しましたが、利用者等からの要請でSuica情報の販売を見合わせる結果
となりました。参考までにJR東日本が外部に販売しようとしていた情報とは、
「Suica での乗降駅、利用日時、鉄道利用額、生年月、性別及びSuicaID 番号を
他の形式に変換した識別番号」とのことです。今、検討されている法改正は現在
個人情報保護法が定める「個人データの第三者提供」をビッグデータの利用活用
に適合させようとする動きのように見え、プライバシー侵害がどこまで配慮され
るか実態が掴めません。既に欧米ではビックデータ、スマートフォン、SNS普及
に適合するための法制度の整備が進んでおり、我が国においてもプライバシー侵
害の側面に配慮しつつ、個人情報の保護と利用の適切なバランスを図る制度作り
が必要な状況になってきています。

 最後に著作権侵害と刑事告訴の事例を簡単に触れたいと思います。本事例は、
SNKプレイモアがスクウェア・エニックスに対して、SNKプレイモアが著作権を有
する多数のゲームプログラムのキャラクターを複製使用した漫画を出版し、著作
権侵害が主張された事例です。結果的に、SNKプレイモアはスクウェア・エニッ
クスを著作権法第119条第1項により刑事告訴し、スクウェア・エニックスが発行
する出版物の一部内容について、著作権法違反の疑いがあるとして、今年8月に
警察当局による家宅捜索がされました。法119条は著作権侵害等に係る罰則を規
定し、侵害したものに対して10年以下の懲役、個人は1,000万円以下の罰金、法
人は3億円以下の罰金が処されるとしています。注意点として、本著作権侵害は
親告罪であるため、基本的に権利者が告訴する必要があります。

 経済や社会情勢の変化により、対応する法律自体が変化しますので、企業側は
自社の適合状況を確認するために最新の状況にも目を配る必要があります。また、
権利保護の強化が進んでいるため企業側にもメリットがあると考えられため法律
を活用するための情報収集を行って頂ければと思います。

(参考文献)
・経済産業省ホームページ http://www.meti.go.jp/
・予防時報 http://www.sonpo.or.jp/archive/publish/bousai/0001.html

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■執筆者プロフィール

松山 考志/宅地建物取引主任者

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