非上場株式に係る事業承継税制 / 小林 由香

 相続税の基礎控除が本年1月1日より40%引き下げられることとなりました。
 相続税の基礎控除とは、相続税の計算上、相続発生時の相続財産の価額から控除できる額です。平成26年までは「5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)」で計算していたのが、平成27年からは「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」となります。たとえば相続人が妻と子1人の場合、基礎控除は、7,000万円から4,200万円となります。
 その結果、特に都市部においては相続税の課税対象者が大幅に増加すると見込まれています。これは、中小企業の経営者にとって次世代への事業承継の足かせとなるのではないかと考えられます。
 通常、相続税がかかる財産は、土地や建物、金融資産が多いのですが、中小企業に多い同族会社のオーナー代表者は、その会社(非上場会社)の株式の大半を所有していることが多く、当然のことながらその会社の株式にも相続税が課税されるからです。

 平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について「非上場株式に係る事業承継税制」の適用要件が緩和され、従来に比較して制度の活用がしやすくなりました。そこで「非上場株式に係る事業承継税制」の活用が今後増えると見込まれます。では、どのような点が変わったでしょうか。以下で従来の制度と、主な変更点を見てみましょう。

1.従来の非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)
 先代経営者の親族である後継者が相続・贈与により取得した一定の非上場株式に係る課税価格の80%(贈与は100%)に対応する税額については、納税が猶予されるという制度です。
 ただし、贈与の場合は、贈与時までに先代経営者が役員を退任することが要件とされていました。
 また、相続・贈与後5年間は、雇用の8割以上を維持すること、先代経営者の親族である後継者が代表者を継続する等の要件があります。他の要件としては、・対象株式等を継続して保有する
・上場会社、資産管理会社、風俗関連事業を行う会社に該当しないこと等です。
なお、5年後以降も株式を保有し事業を継続すれば後継者死亡(又は会社倒産)時点で納税が免除されます。

2.適用要件の緩和
 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度についての主な見直しは次の通りです。
(1)経営承継相続人等が非上場会社を経営していた被相続人の親族であることとする要件が撤廃され、親族に限らず適任者を後継者にすることが可能となりました。
(2)贈与税の納税猶予における贈与者の要件のうち、贈与時において認定会社の役員でないこととする要件について見直され、贈与時においてその会社の代表権を有していないことに改められます。つまり、代表権のない役員としてならば、引き続き役員として残ることが可能となりました。
(3)役員である贈与者(先代経営者)が、認定会社から給与の支給等を受けた場合であっても、贈与税の納税猶予の取消にならないこととされました。
(4)相続・贈与後5年間における常時使用従業員数の要件が、経済環境の変動を考慮し、従来の「毎年8割以上」から「5年平均で8割以上」に緩和されました。
(5)経済産業大臣による事前確認制度が廃止され手続きが簡素化されました。

 以上のように、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度が利用しやすくなりました。中小企業の事業承継(相続税・贈与税)対策においては、納税猶予制度を検討するに当たって、事前に株価引き下げ対策を行うと更にスムーズな移行を図れると考えられます。一方、業況不振で株価が低いタイミングにおいては、代表者からの借入金「役員借入金」の積み増しがよく見受けられますが、この「役員借入金」は財産価値の無いようにみえますが「相続財産」になりますので、これを減らす対策が必要となることは言うまでもありません。

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■執筆者プロフィール

小林由香(Kobayashi Yuka)
小林税理士事務所 所長
税理士、ITコーディネータ、ファイナンシャルプランナー
「お客様の発展のため、最大限の努力をいたします。」が信条。

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