残業削減、有休取得率向上への取組について / 西田 則夫

 アベノミクスで景気は上向きとはいわれますが、それは一部の大企業だけかも
しれません。相変わらず長時間労働をしいられ適正な残業代もでないでその日の
生活を精一杯頑張っている方がいるのも事実です。
私が従事しているIT業界もその代表格にいわれていてます。就職情報会社の調
査では残業時間の最も多いのは「コンサルティング・シンクタンク」で月80時
間以上、次は「広告代理店」で月80時間弱、3位が「建築、土木関連」で月7
0時間とのことです。
IT関連分野では、月50時間から60時間程度のようです。これは、成果物を
生み出す仕事が多く、納期までに一定以上の品質を達成するために残業時間が長
くなってしまうことが一つの要因と思われます。
私も納期やトラブルのリカバリのために日々の残業は当たり前の体質になり21
時が定時の生活を長く続けてきました。ある時は残業が月280時間になること
もあり、いまでいうブラック?の仲間入りかなという時期もありました。
また、有休取得率は一般企業では50%程度のようですが、私のような古い人間
になると年間20日をほとんど取得しない時もあり取得率はよくいって20%程
度ではなかったかと思われます。
 そのようなIT業界で、手前味噌の感はありますが私が勤めている会社におい
て残業月20時間、有休取得率100%を達成する取組が数年前よりトップの号
令のもと実施され、当初は本音では無謀と思われていたことが現実的に実現でき
るようになってきました。その取組の一端をご紹介しようと思いますが、ここに
あげるものは特に目新しいものではなく、各企業で過去行われてるものばかりで
はないかと思います。

1.業務見直しによる集約化と負荷の均等化し、一部業務のアウトソーシング
2.多忙なプロジェクトには他部署からの異動や応援で人員を補強
3.日次、週次での業務の優先順位、無駄の見極めをし、定時以降の会議の禁止
4.会議の時間制限、効率化
5.顧客訪問に際してのオフィスを経由しない直行・直帰の推奨
6.毎週水曜をリフレッシュデーとしノー残業デーとする
7.長時間勤務者は週1回以上定時前に帰宅させる日の設定 などなど

 ただここで重要なのは、上司が「残業はするな。絶対だめ。」と言うだけでは
なく、上司が率先垂範して、日々のやり方を変えていくようにしています。部下
に指示を出すだけでなく自ら作業に入っていくことが必要となってきます。
それによって業務のプロセスの問題点に気づいて、効果はすぐに出なくても試行
錯誤しなにかしら残業が減ったという感覚を持つことができれば効果があったと
いえるでしょう。
そして、文化をかえることです。
今まで、私のような年代は皆が残業しているから、早く帰ると後ろめたい感覚に
なりがちでしたが、逆に、早く帰るのがよいことであるという文化を根付かせる
ことです。
施策として、前年度残業時間の20%削減と有休取得率100%を掲げて、課単
位で削減のための施策を検討し、それを実行し達成すればインセンティブが支給
されます。結果として、残業は月20時間以下となりました。
具体的な例として、ある部署では、次の取組を実施しました。

1.残業が発生するときは部長の携帯にメールし判断を仰ぐ
2.残業が慢性的に多い社員にはスキルの高い社員とペアにする
3.提案書・見積書作成時は上司が目的・内容を明確化し手戻りを防ぎ、成果物
  の共有や再利用を推進
4.リーダーが昼休み後の昼会で定時退社への意識づけ、残業の必要性をチェッ
  ク

また、有休取得の推進として、全社一斉有休取得奨励日を設定しています。その
ために、顧客へトップの署名入りの手紙を役員クラスが持参しお願しました。
その結果、全社員の7割近くがこの日に有休を取得するようになりました。
 私自身、当初は有休取得のために取得日前後は残業して業務の停滞をなくすよ
うな本末転倒なことをやっておりましたが、最近では、有休取得日を設定し、そ
れにあわせて作業を調整するようになりました。
以前の私は管理職になってから残業代はつかない身分になって恒常的に残業過多
の状況で極端な話、1か月の作業時間で月給をわるとマクドナルドのアルバイト
の時給に迫るのではないかと思うときもありました。
今では、管理職は残業代はつかないのは変わりないですが、残業削減の対象され
ており前述した状況となっています。
開発で忙しいみんなも以前なら有休どころか休出の代休もとれなかったのが、や
りくりして有休取得し残業も以前にくらべ大幅に減少したようです。
その反面、残業しても正直に計上していないのではという懸念もあるのは事実で
すが、全社員にサービス残業のアンケートをとって問題のありそうな部署につい
ては人事が調査しコンプライアンス違反にならぬよう歯止めをかけたり、勤怠シ
ステムに日々の入力している勤務状況を上司が管理できる仕組みになっています。
また、残業代が給与の一部になって生活費の一部として見込んでいる場合もあり
ます。このような場合、残業が多い人は年収が減ることになり、給与ダウンとな
ります。その対策としてすべてを補てんするわけではないですが、削減目標を達
成した部門のボーナスに一定金額を上積み方策もとられています。
 このような取り組みは始まってまだ数年ですが、経営のほうにも増収、増益の
善循環を生む結果となりました。私のような知恵よりもまず汗を流して(残業し
てでも)成果をだす昔人間でも、有休取得率100%、残業は一桁台であり、数
年前とくらべると隔世の感があります。
これからも種々の施策の継続と改善によって文化として根付くことができれば
トップが目指したビジョンと一致することになると思います。
自社の取組の紹介になってしまいましたが、残業過多や有休もとれずに健康を害
して戦力ダウンになる事例が多いIT業界において、経営トップの判断と行動に
よって大きくシフトチェンジできることを知っていただければ幸いです。

(参考文献)
1.野田稔 著「当たり前の経営」
2.ボーカーズ 業界別残業時間

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■執筆者プロフィール

西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ

マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。

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