マイナンバー制度がいよいよ来年から使用開始されるのに伴い準備作業が本格化しています。ご存知の通りマイナンバーとは2015年10月以降に各個人宛に通知される「社会保障・税番号」のことです。この制度は複数の機関に存在する個人の情報を共通化し、社会保障・税制度の効率性・透明性を深め、国民の利便性を高め公平・公正な社会を実現するための行政手続きのインフラ整備と位置付けられています。
このため公的機関のみに関わるように考えられがちですが、日常業務の中で経理・人事・法務・労務・情報システムに関係しますので民間企業にもその責任があり義務が発生します。以下ではマイナンバー制度の概要を述べ、民間企業に関わる課題を取り上げます。なお、限られた紙面ですので全てを語ることができない点はご容赦下さい。
【マイナンバーの概要】
はじめにマイナンバーが実際に使われる場面を取り上げます。マイナンバーは各個人に通知された「社会保障・税番号」を収集し、関係機関への提出書類に記載するものです。提出先には税務署・ハローワーク・労基署・健康保険組合・年金事務所があり、現在内閣府や厚生労働省から出されている資料の申告書・申請書のうち主なものをリストアップすると次の通りです。
<納税手続関係>
・年調関係 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・年調関係 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
・法定調書 給与所得の源泉徴収票
・法定調書 退職所得の源泉徴収票
・法定調書 配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書
・法定調書 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
・法定調書 退職所得の
・法人税
・法人住民税
等々
<社会保障関係>
・雇用保険被保険者資格取得届、喪失届
・健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届、喪失届
・健康保険、厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届
・健康保険被扶養者異動届
・国民年金第3号被保険者関係届
・健康保険、厚生年金保険育児休業等取得者申出書
等々
があり、書式については一部事前情報提供がされていますが、各種書式は年内を目処に確定することになっています。一部書式の改定もあります。
なお、マイナンバーと合わせて法人番号も付与します。法人番号は国税庁より指定され、インターネット上で公開されますので、申請書・申告書に付記します。
【課題】
前述の様に関係書類は多岐にわたり、利用場面としては従業員の入社から始まり身上変更(結婚、被扶養者変更等)、休職・復職、組織異動(出向等)、退職迄様々な局面で関係しています。従って検討・対処すべき事項も次のことが考えられます。
(1)取扱いなどの社内規定見直し
(2)関係する情報システムの改修
(3)個人情報保護などの安全管理措置
(4)従業員への広報等情報の周知
この中でも特に重要な問題は、法案設立時より懸念されている個人情報の取扱いがあります。
マイナンバーに先だって番号制度としては、住民基本台帳カードがありましたが、住基カードとの大きな違いは、住基カードは民間企業が取り扱うことがないことです。これに対してマイナンバーは民間企業が行政機関への連携のために取り扱います。従ってここから発生するリスクにも対処する必要があります。
マイナンバーの取扱い者としては、公的機関だけでなく、民間事業者でも「個人番号利用事務実施者」と「個人番号関係事務実施者」があり、それぞれ特定個人情報の安全管理を図り、適切な監督義務が課せられることになっています。
マイナンバー法では、実施者が目的外で特定個人情報を収集していけませんし、マイナンバーの利用範囲は決められた事務に限定されます。また、特定個人情報は法律で明記された以外は保管することが出来ませんので保存期間が経過したのちは速やかに廃棄する必要があります。
先ずは会社の対応方針を決め、情報システムの改修などは早目に対応しましょう。
コラムでは、民間事業者の関わりに絞って述べましたが、詳しくは以下のHPを参照願います。
【参考】
マイナンバーに関する広報は以下のHP等を参照願います。
内閣官房
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/
国税庁
https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/mynumberinfo/index.htm
厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000063273.html
特定個人情報委員会
http://www.ppc.go.jp/
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■執筆者プロフィール
合同会社グローバルITネット
代表社員 大塚 邦雄
ITコーディネータ、情報処理システム監査資格