ビジネスをデザインしましょう / 宗平 順己

 タイトルをみて???と思われた方も多いと思います。デザインというとデザイナーさんの仕事で経営とは関係ない、そのように考えられるのが普通ですが、その古い考えは捨て去らないといけないようです。
 英国のデザイン協会のHPを見ると、トップページに下記のように書かれています。難しい英語ではないので、そのまま掲載しますね。
Our services
-We make design work for you by growing businesses, developing public services, and enhancing the built environment.

冒頭に書かれているように、デザインの対象は商品だけではなく、ビジネスそのものや公共サービス、街づくりなど、これまでコンサルタントやシンクタンクが担当していた領域に及びます。
 この時に使われるアプローチを「サービスデザイン」といいます。
サービスデザインとは、サービス利用者(生活者)が感じる体験価値を重視して個々のタッチポイント(顧客接点)のデザインにとどまらず、事業としてサービス全体をデザインする行為です。

製品やサービスがコモディティ化し、「機能」だけでは差別化は難しく、それを使うことによって得られる価値が差異化要因になってきています。
顧客がその製品やサービスによって得られる経験は、その製品やサービスの価値を決める重要な要素となっています。
その中心となるのが「顧客経験価値」というもので、単に製品やサービスの機能ではなく、顧客がそれを使用することによって得られる新しい「何か」が差異化要因となっているという考えです。

良く使われる例として「スターバックス」があげられます。スターバックスは、そこのコーヒーがおいしいからということで行くのではなく、スターバックスでコーヒーを買う、飲むことによって得られるものに顧客は価値を見出しているということです。
サービスデザインは、この「顧客経験価値」をデザインするものです。

この説明ではシステムは関係無いように思われますが、有名な「KOMTRAX」のようなシステム(正確にはサービス)を考える際に必要となるのがサービスデザインのアプローチです。
KOMTRAXについては、下記のサイトにいかにビジネスモデルとして優れているのかが書かれています。
http://www.countand1.com/2012/10/komtrax-komatsu-business-model.html

また、東京大学の藤本先生、はこれからの製造業に必要なこととして、「モノからサービス化への転換」ではなく,「モノへのサービスの付加である」と指摘しておられます。(藤本隆宏, “空洞化不可避論を鵜呑みにするな「戦うマザー工場」を国内に留めよ”New Leader, 2012.1)
KOMTRAXは建設機械+センサー+通信装置というモノにいろいろなサービス(システムによるものもそうでないものも)を付加して新しいビジネスモデルを創造したわけです。

さて、サービスデザインにおいてまず最初にすることは、ビジネスのゴールを確認することです。これはどんな手法を用いるにせよ共通ですね。そして、次に行うのがペルソナの設定です。
 「ペルソナを作る」というと単純にターゲットユーザーの性格や行動の傾向を把握しモデル化するだけの作業であるかのように誤解している方が少なくないと思いますが、実際はユーザーモデルを作成する作業をすることを介して、自由な発想を疎外している自分たちの偏ったモノの見方をしてしまっている状況を打破する機会を与えてくれることのほうに価値があります。
ユーザーを知るというのは何より自分たち自身の思い込みに気付くことであり、それによって自分たち自身の考えや姿勢が変わることです。ペルソナを作成する過程でユーザーについて考えることで、自分たちの思い込みに気付くことにこそ意味があるのです
http://www.coprosystem.co.jp/marketingblog/2011/12/28.html

 ペルソナの定義ができると、次に顧客になりきって現在のサービスの良い点、悪い点を洗い出していきます。この時に用いるのがカスターマージャニーマップというツールです。

 以上、サービスデザインの導入部のみをお話ししました。
ITコーディネータ京都では、ITC京都塾でこのサービスデザインのトレーニングを開始しています。
 新しい事業を考えている方、是非お声がけください。皆さんが考えもしなかった素晴らしくかつ実現性の高い事業プランを構築することができます。

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■執筆者プロフィール

氏 名 宗平 順己(むねひら としみ)
所 属 ITコーディネータ京都 副理事長
    (株式会社ロックオン 特別顧問)
資 格 ITコーディネータ、公認システム監査人

専門分野
・サービスデザイン(UX)
・クラウド
・BSC(Balanced Scorecard)
・IT投資マネジメント
・ビジネスモデリング
・エンタープライズ・アーキテクチャ  などなど