みなさんは自分の「役割」について考えたことがありますか?
今日は「役割」について考えてみたいと思います。文中に複数の問いかけがありますので、この機会に是非ご自身に問いかけてみてください。
三省堂の辞書によれば、「役目をそれぞれの人に割り当てること。また、割り当てられた役目」、「集団内の地位に応じて期待され、またその地位にあるものによって学習される行動様式。社会的役割」とあります。
企業が経営目標を達成するには、組織の一員である社員一人一人が割り当てられた役割を確実に果たすことが必要です。
■さて、組織に属する方は、組織の一員としての役割をどのように認識しているのでしょうか?この機会に是非文字にしてみましょう。可能であれば組織に「これであってますか?」と確認してみてはいかがでしょうか。
何らかの立場における役割は自分を取り巻く環境からなんとなく学習できるように思います。家族の一員として、地域の一員として、組織の一員として・・・
お互いの役割が明確であり、各人が確実にその役割を果たしていれば、何ら問題は起きないように思います。家族内でも、仕事に出かけお金を家に持ち帰る人、家にいて家族が健康に安全に生活できるよう家事を切り盛りする人、勉強や遊びを通じて成長していく人等、いろいろな役割があると思うのですが、担う役割が1つだけではないこと、状況によって臨機応変な対応が求められること、そもそもの役割の思い違い等があり、日々のコミュニケーションロスを引き起こしているように思います。
お互いに求められているものはきっとこういうことだろうと思っていて、そのつもりで行動していても、相手から承認されない、評価されない、更には批判、注意されてしまう。相手のことを思って行動しているにも関わらず・・・です。
■「求められていること」、「自分ができること」、「自分がやりたいこと」、この3つが一致している状態がとても幸せな状態なのだと思うのですが、みなさんはこの3つのバランスがとれていますか?「ねばならない」「こうあるべき」に縛られてはいませんか?
経営者の方とお話をしているとき、自社が属する業界は「こういうものだ」、よって自社は「こうあるべき」、よって社長である自分は「~ねばならない」。
目指すものとしての「あるべき姿」を思うことは大切なことですが、「べき」だけにこだわるのもいかがなものかと思います。~ねばならないから仕方なく、やりたくないけどやっている・・・そんな風に聞こえて仕方がありません。
■楽しいことは何ですか?好きなことは何ですか?あっという間に時間が過ぎることは何ですか? やりたいことで、得意なことが「役割」だといいですね。
置かれた立場において、自分らしさの出し方があると思います。経営者の方にお会いすると、どんな子供時代を過ごされたかをお聞きしたりします。その方のバックボーンをお聞きするわけです。これまで過ごしてきた時間がいまの自分を作り出しているとすれば、バックボーンをお聞きすることで、その人らしさが見つけやすくなったり、その人らしい進め方が提案しやすくなったり、そして何よりもその方の役割が見えてくるように思います。
■わざわざこの会社が、この社長が、取り組むべきものなのか? そのことが社会にとっても、企業にとっても、社長個人にとっても、幸せなことなのか?
企業には存在意義があります。社会において誰かの何かの役に立っているという状態で、それは企業それぞれ、人それぞれなのだと思います。
さて、企業として、経営者として、人として、役割を考えてみましょう。
■誰のどんな役に立ちたいのか? 事業活動を通じて何を実現し、何を得ようとしているのか? 得られている状態を想像してみてください。具体的に想像できますか?
1年間は365日、スケジュール帳を前に既に公私にわたる予定が書きこまれていることと思います。
■既に決まっている予定以外に今年度はあと何日フリーな日がありますか?こんなにある、これだけしかない、状況や感じ方は人それぞれです。さて、その時間に何をしましょうか?
来るもの拒まず状況に流されていくのでしょうか。目の前の事に対処することで精いっぱいなのでしょうか。役割を認識し、能動的になることで、時間の使い方、日々の過ごし方も変わってくるのではないでしょうか。何日後、何か月後、何年後の役割を果たしている自分の状態を想像してみましょう。そうすればいまこの時間の過ごし方に対する意識も変わるのではないでしょうか。
企業経営においては、経営目標や経営計画なるものがあります。企業は人なり。
人で構成されている組織が役割を果たしていくには、まずは企業の役割を明確にすること、その役割を果たせるように各人に役を割り振ること、各人が役割を果たせるように環境を整えることが必要です。各人は組織上の役割以外にも私という個人としての役割を認識し、「求められていること」、「自分ができること」、「自分がやりたいこと」のバランスを保ちながら「いま」「ここ」「自分」を生きていくことが求められていうように思います。結局は人。一人一人が役割を果し合い大きな力となりますように。
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■執筆者プロフィール
中川 普巳重(なかがわ ふみえ)
(公財)京都高度技術研究所 地域産業活性化本部 コーディネータ
福岡大学 産学官連携センター 産学官連携コーディネーター 客員教授
(一財)九州産業技術センター 九州地域新産業戦略に基づくイノベーション創出事業 コーディネータ
中小企業診断士、ITコーディネータ、(財)生涯学習開発団体認定コーチ