毎年、中小企業庁が中小企業白書を発行していますが、これは国会で中小企業の動向報告がされたものをとりまとめたものであり、政府の中小企業施策のもととなるものです。よって、中小企業白書を読み解くことは様々な中小企業への支援策や補助金等に対し、事前にアンテナを張ることに繋がります。中小企業への支援策はタイムリーに情報を掴むことが重要ですので、こういった事前準備は、機会ロスを防ぐ意味でも非常に重要なことであると思います。
そこで、2015年版の白書のポイントを紹介するとともに、そこから見えてくる施策の方針や背景等をご説明させていただきます。なお、今年から中小企業白書に加え、小規模企業白書が初版されましたのでこちらも合わせてご紹介いたしま
す。
1.中小企業白書のポイント
今回の中小企業白書では、同じ企業規模でも高収益を上げている企業とそうでない企業が存在している点を大きく取り上げています。ポイントとしては以下の通りです。
・イノベーション実現に向けた取組みを行っている。
・様々なイノベーションを実現していくための人的資源が不足している。
・イノベーション創出や経営課題解決には地域資源の活用・地域内での連携に取
り組んでいることが多い。
これらから、政府は、イノベーションに取り組む企業に対し、手厚く支援していこうと考えていることが読み取れます。それには、人材を含めた“地域資源”を活用するためのハード面、ソフト面の整備を行い、イノベーションを生み出しやすい土壌を作ろうとしているものと考えられます。
2.小規模企業白書のポイント
中小企業といっても、従業員300名の企業と親族のみの会社をひと括りに捉えるのは無理がありました。そのため、今回小規模企業白書で区分されたことは、意味があることだと思います。具体的には業種ごとに区分され、「卸売業」、「サービス業」、「小売業」は従業員数が5人以下、「製造業・その他」では20人以下が小規模企業となります。
上記のように区分されたうえ、今年小規模企業白書が初めて発行されました。
このため、中小企業の中でも特に小規模企業を対象とした施策が今まで以上に充実してくるものと思われます。その小規模企業白書のポイントは以下の通りです。
・中小企業の約9割が小規模企業であり、事業所数は減少の一途であった。
・収益基盤は脆弱であるが、経営者は自らの経験や技能を生かして働きたいと考 えている。
・地域密着の事業活動をしており、地元のリーダー的存在として期待されている。
これらから、政府は、地域に密着する事業者が活躍しやすい環境を整備し、雇用の維持と経済の活性化を図るという方向性が見えてきます。
3.“地方創生”というキーワード
中小企業白書、小規模企業白書を読み解くと、地域資源の活用や地域の連携が、中小企業の成長・発展、事業継続に繋がる効果的な方法であるということを事例も交え、述べているようです。これはまさに地方創生そのものです。地方創生の中身は、国や各地方自治体が出す総合戦略をご覧いただくとして、国策として支援体制にかなうことは事業継続を考える上で大きなアドバンテージになると思います。その支援対象としては以下の2点があげられます。
1)地域資源(特産物、技術、人材)を活用して新たなサービス・商品提供、販路開拓を行う。
2)地域の企業同士、コミュニティ、公的機関等と連携し、新たなイノベーションを生み出す。
国、地方自治体の支援を活用できるよう、上記の2点を踏まえた事業計画を立案・見直しされるのも良いのではないでしょうか。
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■執筆者プロフィール
氏 名 間宮 達二(まみや たつじ)
所 属 ひかりアドバイザーグループ(ひかり財産戦略株式会社)
資 格 ITコーディネータ
HPアドレス http://www.hikari-advisor.com
21世紀に羽ばたく「あるべき姿」の実現に向け、お客様の羅針盤として真の経営改革支援と、事業リスク分野における情報提供、将来に向けての対応策をご提案いたします。