皆様,お世話になります。また性懲りも無く駄文を書かせていただきます。
前回書かせていただいたときに,2015年は,Back to the Future PART2の舞台になった年なので,機会があれば,そのネタで書かせていただきますと結んだので,そのお話を…
■1985年
最初の舞台になったのは1985年です。主人公のマーティは,親友のドクが作ったタイムマシンに乗って,30年前にタイムスリップしてしまいます。タイムマシンにはデロリアンというスポーツカーが使われています。この時,タイムマシンの燃料として使用されたプルトリウムの関係でテロリストの攻撃を受けて,ドクは撃たれてしまいます。
この映画の主題歌「The Power of Love」は大ヒットしました。
■1955年
マーティは当時のドクと出会います。1985年の大統領がレーガンであると言うと馬鹿にされますが,何とか1985年に帰る手助けをしてもらいます。
ここで問題がおきます。この1955年は,マーティの両親が結婚するきっかけになった年だったのですが,二人の仲が上手く行かないのです。このままでは,自分が消えてしまいます。
マーティは二人が参加しているパーティに忍び込みます。
パーティではUnchained Melody(1955年)が演奏されていますが,マーティはギターを借りると演奏を始めます。曲はJohnny B.Goode(1958年)でした。だんだん調子に乗ってきたマーティは,ジミヘンのように背中でギターを弾いたりしますが…周りからは浮いてしまい,パーティはシラケてしまいます。しかしそのおかげで,両親の仲は近づきます。
なお,悪役のビフが当時乗っている車は,オールズモビルかと思っていましたが,Wikipediaで調べたら1946年型フォードだそうです。
■1985年
何とか1985年に帰ってきたマーティは,テロリストに撃たれたドクを助けに行きます。ドクは,マーティから警告を受けていたので,無事でした。しかもマーティの家は最初より裕福になっていて,マーティはピックアップトラックをもらいます。
ガールフレンドと一緒にいると,今度は2015年からドクが,マーティの将来の家族に問題が発生していると,空飛ぶデロリアンで迎えに来ます。
■2015年
2015年に着いたマーティは,映画館の前で「Jaws 19」の3Dの宣伝に驚かされます。ちなみに「Jaws 19」の監督は,スピルバーグJr.になっています。
マーティは自分の息子が,ビフの孫の言いなりになったあげくに捕まり,家庭崩壊に陥っていることを知ります。でもって色々あって(笑)空中に浮くスケート・ボードのホバー・ボードでの追跡劇の挙句,何とか無事におさめます。
1985年に帰るときにスポーツの結果が載っている年鑑を入手しますが,ビフの手に渡り,ビフはそれを1955年の自分に渡します。
■1985年
1985年に戻ってみると,マーティの家は無くなっており,ビフが大金持ちになっています。すべては,2015年に入手した年鑑がビフの手に渡ったからでした。
ドクとマーティは,年鑑がビフの手に渡るのを阻止するために,また1955年に旅立ちますが,落雷でドクはデロリアンごと1885年に飛ばされてしまいます。
■1885年
マーティは1955年のドクの手助けで,1885年のドクを助けに行きます。でもって色々あって(笑)ドクは1885年に残り,マーティは何とか1985年に戻ってきます。その直後デロリアンは壊れてしまいますが,1885年からドクが蒸気機関車型のタイムマシンでやってきます。
音楽は,オクラホマミキサーとかが掛かっています。また,ドクが氷のかけらを作るのに大がかりな機械を動かしていたりします。
■クスグリが一杯
長々と粗筋を書いてきましたが,この映画はクスグリが山盛りです。映画ファンなら「あの映画のオマージュだ」と思うところが次から次へと出てきます。それも結構流行ったエンターテイメント映画が多く,ワンシーンだけでなく元の映画のストーリーから取った展開も楽しめます。
この原稿を書くのに,一度この三部作を観なおしたのですが,これまで気付かなかった点にいくつか気付きました。ブレードランナーまで出てきています。でも全部見る前に眠ってしまいましたので,中途半端な記憶で書いています(笑)
■明日はどっちだ !
さて本題です。映画の1885年,1955年,1985年,2015年を比べると,以下のような変化が分かります。
移動手段:蒸気機関車→1946年型フォード→デロリアン/スケート・ボード→空を飛べる車/ホバー・ボード
音楽・エンターテイメント:オクラホマミキサー/フォークダンス→Unchained
Melody/スイングダンス(?)→Johnny B.Goode→The Power of Love→「Jaws19」3D映画
社会:開拓時代というかインディアン戦争の時代→第二次大戦後の繁栄→安定社会→犯罪が増えているように見える社会
移動手段に関しては,軽薄短小化が流れにあるようです。エンターテイメントでは,大音量化とリズムが速くなる傾向があります。社会的には,繁栄後の安定から貧富の格差・治安の悪化が見られるように思います。
実際にこの映画の中で技術的に実現できたものは,3D映画くらいです。車が空を飛ぶのは,SF系映画のお約束ですが,物理法則に反するので実際には難しいですね。ホバー・ボードに関しては,動きが地面との距離の2乗に反比例しているように見えるので,地面側に電磁誘導の装置とかを埋め込んで今のネオジム磁石とか使えば何とかなりそうですが,1955年でも浮いているのでこれも難しそうです。電磁気力の代わりに,エアホッケーのように地面側から空気を吹き出す方式なら,施設内で作れそうですので,ヒラパーで作ってみればお客さんが入るかもしれません(笑)
いずれにせよ,以下の事が分かります。
1.映画を作成した人は,過去からの流れを将来に外挿しているようだ。
2.しかし,物理法則に反したものは作れない。
3.イノベーションやブレイクスルーは想像できない。
映画に無くて現実にある物を考えると,目立つのはスマートフォンではないでしょうか。他には太陽光発電とかの再生可能エネルギーも,映画では出てきませんでした。TV会議が出てきたので,インターネットっぽいものは想像されていたと思います。これらのスマートフォンや再生可能エネルギーが,いわゆるイノベーションに相当すると思います。
調べたら,日本で車載電話が登場したのは1988年です。また,風力発電は最近のように感じますが,歴史的に考えれば,もともとは電気が供給されない地域の自家発電用でした。「北の国から」ってTVドラマにも,そんなシーンがありましたので,覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。
移動体通信や再生可能エネルギーについて考えれば,個別技術は1985年当時に既にありました。既存技術が延長線上でどうなるか考え,それらを組み合わせて「サービス化」した結果,イノベーションが生まれたように思います。
ダスティン・ホフマンの出世作「卒業」(1967年)にも「これからはプラスチックの時代だ」って主人公に話すシーンがありますが,その後のプラスチック技術の発展や利用のされ方は,イノベーションだったように思います。
その時まだ発展途中の要素技術にどういったものがあり,その将来性と組み合わせで何を作ることができるかを考えるのは,なかなか難しいようです。
■外挿法で考える
では,これから30年後2045年がどうなっているか,外挿法で考えると…
移動手段は,自動車が空を飛ぶのは無理でも,軽薄短小化(省エネルギー化)が進むでしょう。また,安全対策の進歩と人間系の省エネルギーとして自動運転の義務化が一部の高速道路とかで行われていると思います。1946年型フォードがそうだったように,ステイタスシンボルとしての車は残るでしょうが,恐らく飛行機とかの方がステイタスシンボルになりそうです。地上の移動手段は,用途(と利用者の収入)に分かれて多様化していると思います。個人的には,個性的な車が残って欲しいと思いますが,難しいかも知れません。
エンターテイメント系では,より早いビートの物が出てくると思います。ただし,Unchained Melodyが今も聞かれているように,古い音楽の一部も生き残ると思います。大音量化に関しては,耳に聞こえる音は耐えられる上限がありますので,身体に直接感じるビートを提供する形に変るのではと思います。映画館の椅子が,シーンに合わせて振動するような感じですね。もちろん3D化も進むでしょう。3Dに関しては,今は眼鏡をしてスクリーンを観ていますが,眼鏡内に左右別々の3Dの画像を直接投射することで,視野内全体の3D化ができると思います。ヘッドフォンと振動する椅子との組み合わせで,臨場感は向上するでしょう。
社会的にはピケティではありませんが,格差が広がると思います。ハイパーインフレや何らかの経済破綻があれば,一旦格差は縮まりますが,全体としては拡大する流れになりそうです。その結果,社会治安は悪化すると思います。
日本経済だけを見れば,2045年までの30年間でハイパーインフレが起きる可能性は結構高いと思います。
■イノベーションを予想する
では,イノベーションについて,考えてみます。
先日,国立情報学研究所のオープンハウス2015に参加して来ました。
現在の先端の研究を一度に見渡せたので,知的刺激(痴的ではありません)を受けました。クラウドの仮想化などの,比較的最近に実現可能そうなものから,10~20年位はかかりそうな量子コンピュータや人のニューラルネットワークに関する研究等がありました。環境変化に対して生物のような適応性を持つ分散システムの研究とか,前回書いたヒトデ型の分散システムの様でした。
その中に,環境との相互作用で自らを変容させるソフトウェアがありました。
この技術がマルウェアに悪用されると,大変なことになりそうです。これに対抗するソフトウェアが作られ,仮想空間上で戦い始めると…映画のマトリックスの世界になります(笑)
人工知能の研究もありましたが,こちらも驚くほどの進化を続けています。この30年のICTの進化を顧みると,アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」のHAL9000や,ロバート・A・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」のマイクみたいな人工知能というより人工知性も,あながち夢ではないと思います。
そうなった時に人類は,ホーキング博士の言うように「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」という滅亡の道に入っていくのかも知れませんが,そうならない事を祈ります。
少なくとも今の技術の延長線上には,車の自動運転,介護をはじめとする使役ロボットの実現は可能だと思います。使役ロボットは,当面スループットに問題が残りそうなので,人間系の補助装置から始まるような気がします。
以前もちょっと触れましたが,ロボカップというプロジェクトがあります。
西暦2050年迄に「サッカーの世界チャンピオンチームに勝てる,自律型ロボットのチームを作る」というのが目標ですが,筋肉のように電気的に素早く伸縮させられる軽くて柔らかい素材が開発できれば,夢ではないように思います。
■終りに
これもどこかで書きましたが,Back to the Future Part3を初めて観たのは,レンタルビデオでです。
自宅のTVを一人で観ながら「確かこのPart1はオネーチャンと映画館で観た。
Part2は友人と映画館で観たな…」と思い出し,自分の人生の方向性に疑いを持ったのを覚えています(笑)
まぁ,30年後のBack to the Future Part4の時代や,2050年のロボカップの時代には,私は星になっていると思いますが…(笑)
万一,ここまで読んでいただいた方がおられれば,相当に我慢強い方だと思います。外挿法で考えれば,多分,何のお仕事をされても成功するのではと思います(笑)有難うございました。
■追記
この第一稿を書いた後に,伊坂幸太郎さん(この方は作家になる前はIT業界で仕事されていたそうです)の「PK」を読み直していましたら,こんな会話がありました。
「明日の天気は正確に伝えて,その準備をする必要がある,ただ,未来は違う。未来の状態を作るのは,人だ。」
「嘘でもいいから明るい話をすべきだってことですか」
「未来になったらロボットが飛んでいる,といわれるのと核戦争が起きている,と言われるのであれば,どちらが良かった?」
やっぱり,30年後には車やロボットは空を飛び,地上ではホバー・ボードが滑走しているに違いありません(笑)
参考資料:
Wikipedia:バック・トゥ・ザ・フューチャー,PART2,PART3
ロボカップ日本委員会:http://www.robocup.or.jp/original/about.html
「PK」伊坂幸太郎
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■執筆者プロフィール
上原 守
ITC,CISA,CISM,ISMS審査員補,IPAプロジェクトマネージャ
エンドユーザ,ユーザのシステム部門,ソフトハウスでの経験を活かして,上流
から下流まで,幅広いソリューションが提供できることを目指しています。