同窓会にて思う事 / 西田 則夫

先日、30数年ぶりに大学の同窓会があり、旧交を深めましたが、みな還暦を迎える年齢になり、第一線から徐々にシフトしていく者もあり、まだまだ引き続き今の役職を全うするものありと後半生にむけて人それぞれです。学部が理科系で私のようなIT業界に就職したものもおれば、メーカ、JR、食品など変わり種では警察署長を務めたものもおり種々雑多です。今回、京都で開催したのですが愛知県から来た地元でスーパーを経営しているものもいました。親から引き継いだとはいえ中小スーパーは、大型スーパーやコンビニ、ドラッグストアに挟まれて大変厳しそうということは雰囲気わかっていたつもりですが、今回、話をきいていると厳しいなかにいろいろ、生き残りをかけて、いままで頑張っているのがよくわかりました。
帝国データバンクの調査では、2013年度の倒産件数は、前年度を3%下回る65件。廃業は119件(前年度比▲9.8%)と、倒産・廃業ともに前年度を下回ってはいるものの、販売不振や設備投資の失敗で倒産・廃業になるケースが多くあるとのことです。このような中小スーパーは、食品や日用品の価格競争が長年続いており、消費税増税後の消費の冷え込みも販売不振につながっています。

大手スーパーのような低価格化は難しく、コンビニ・ドラッグストアのように効率的に品揃えをすることもより困難な状況です。
そういった中で、同窓生の彼は経営者として、生き残り戦略を考え、実行に移したようです。そのなかの一部を紹介すると、まず、特色をだすという事です。特色というと他店にないもので、例えば、地元でとれた野菜など地域性の強い生鮮食品を充実することで、安全性と生産者の顔が見える安心感を顧客にもってもらうことでした。ただ、単純にはことは運ばず一戸一戸の生産者を訪問し、自分で内容を確認し、あわせて生産者に信用してもらうことを手間暇かけて実行することが必要でした。
もう一つは、高齢化が進む近隣において、店に来てもらうのでなく、電話、FAXで注文を受けつけ宅配するサービスを企画しました。当初は宅配業者に依頼するとコストがかさむことから自ら自家用車で宅配したこともあったようです。
また、商品の価格構成も見直しをしました。安売りで売り上げを伸ばすのでなく高くても利益のでるものを置いておくことで、売り上げは伸びなくとも利益のでる商品構成を考えていきました。
こういった施策は、すぐには効果はあらわれませんが、親から受け継いだ資産を今度は自分の子供にわたす時には、大きな付加価値がついているものと思われます。
こういった施策を実行してきた彼でしたが、ITの利用も検討したようです。だれもがやっている店のHPを立ち上げて、認知度、売上向上をもくろみましたが効果は実感としてなかったようです。HPの更新がタイムリーでなく、訴求力のあるHPではなかったようです。専門業者に委託すれば、その問題はなくなったかもしれませんが、委託業者に払う費用と効果を考えると二の足をふんだのではないでしょうか。
また、ネットでのクーポンを他の商店と協賛して発行したようですが、特徴のある飲食店や小売店には集客効果はあったようですが、売り上げには結びつかず協賛金の支払いや手間を考えると効果があるのか疑問であったようです。
担当の税理士からのIT系のコンサルを紹介してもらって、POSの情報収集、分析、問屋やメーカを巻き込んだ「ネットワーク」構築など、できれば面白いネタを提案、企画をうけたが、最終的には、パッケージの導入が主のような方向になって、その時は理系の頭が働いて「ちょっと変」と思い直したようです。
こんな話をきいていると、常にITありきで仕事をしているわが身にとって、中小の経営者の課題解決には、IT以外の側面からのアプローチがより重要ではないかと考えをあらためさせられる思いです。
ただ、課題解決はできないのかとIT屋の端くれとして考えると、商品管理用の仕組み(POSからの情報を集約など)をEXCELなどに取り込んで作ってみることも可能であり、分析パッケージを使わずにEXCELで分析グラフなどを作って評価することもできると思います。同期のよしみで、交通費と、ご飯代だけで構築してあげると宴会の席でいってみましたが、ITを単なる道具として次につなげる一歩として活用してくれれば、いいと思ってます。
それにしても、彼の悩みとして防犯・セキュリティの強化を近々に対策をうつよう関係部署から要請されているようで、前述の同期の警察署長のノウハウと人脈が必要なようで、私の登場はまだ先のようです。

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■執筆者プロフィール

西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ

マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。