奈良ならではのビジネス研究 / 米田 良夫

 筆者は現在奈良に住んでいる。昨年、「奈良ならではのビジネス研究」をテー
マに、奈良県の中小企業診断士のグループで調査研究を行った。その一部を紹介
する。
 奈良には伝統地場産業など、全国的にも有名な企業が多数あるが、まだ全国的
には知られてはいない「凄い」事業所がある。今回そんな事業所を選んだ。

1.梅乃宿酒造株式会社
 住所:奈良県葛城市、代表:代表取締役 吉田佳代、創業:1893年
  資本金:3,000万円、社員数:50名、売上高:20億6,000円(2014年6月)
  事業内容:日本酒、リキュール、各種酒類の製造・販売、商品開発
 
  当社は大手酒造メーカーの下請けを行っていた。しかし、日本酒の需要減少
 から、危機感をもった先代社長が、自社ブランドへ移行することを決意した。
 そして、本格的に吟醸酒造りに取り組み始めた。その後、リキュール・焼酎の
 免許を取得し、梅酒の製造・販売を行う。これがヒットした。海外への輸出事
 業も開始し売上の15%を占める。
 
  吉田社長は、5代目で平成25年に就任した。大学卒業後商社に勤務し、その後
 当社に入社した。社長は常に働きやすい環境、仕事しやすい環境を心がけてい
 る。また、若い人に日本酒の楽しみを知ってもらうため、大学で勉強会を開い
 て、飲み方や伝統の醸造法を教えている。
  
  商品の開発・製造面では、高精米と手づくりにこだわって日本酒を製造して
 いる。当社のコンセプトである「新しい酒文化を創造する蔵」にあるように、
 絶えず新しい商品を開発している。定番商品の日本酒や、季節限定の日本酒、
 梅酒などのリキュール、スパークリングである。常に味覚の変化に合わせた味
 を追求している。
  海外展開は2002年からで、現在、アジアからヨーロッパ、北米、オーストラ
 リアまで20ヶ国に輸出している。

  人事面では若い社員が多く、育成するために、毎年、中小企業大学校の研修
 を受講させている。また、朝礼などで、「変化」をキーワードにチャレンジす
 ることを浸透させている。
  
  その他、秋には蔵開きイベントを行っている。ふるまい酒やイベント、蔵見
 学などを行っている。物販ブース等では、地元の食品や商品も販売している。
  社員が日本酒を造り伝える幸せという内容で、ブログを書いていたり、学生
 対象に「1DAY仕事体験会」を開催し、蔵見学、蔵作業や日本酒勉強会など
 を行なっている。
  昨年には、物流センターを開設し、効率化と迅速性に努めている。

  今後は、「新しいことに挑戦しないと生き残れない」との危機感で、時代の
 ニーズにあった酒造りに挑戦していく。若い世代向けの日本酒をつくりための
 研究開発も進めている。日本酒ベースのリキュールなど新製品の開発にも取り
 組んでいく。また、新蔵の建設も計画している。
  海外での「梅乃宿」ブランドの価値を高め、認知度を高めていく。各国の嗜
 好にあった酒の提案、日本酒を使ったカクテル、世界中の人々に愛される日本
 酒を造っていくことを目指している。
  
2.株式会社エヌ・アイ・プランニング
 住所:奈良県生駒市、代表者:代表取締役 鐵東敦史(てっとうあつし)
 設立:1991年、資本金:1,000万円、社員数:約50名
 売上高:7億4,000万円(2014年2月)

  奈良の地域情報誌「ぱーぷる」といえば、奈良で知られている地元情報誌で
 ある。その他に、奈良の活性化やイベントなどに関与している。

  鐵東社長は、アメリカの高校に留学、大学卒業後も北京の清華大学に留学し、
 大手企業の海外事業部で勤務していた。グローバルな仕事の経験から、奈良の
 良さを海外に向かって発信したいとの思いで当社を創業した。
  情報誌「ぱーぷる」の成功は、あきらめない粘り強い姿勢と、ポジティブな
 姿勢で問題点を乗り切ってきた。
  
  現在、専門分野に特化した7つの事業を展開している。各事業部それぞれがプ
 ロ集団として密接に連携プレーが出来るような組織運営がなされている。
  その中の出版事業については、編集制作業務は編集長以下のスタッフに全幅
 の信頼を置いて任せている。スタッフと価値観を共有し、目の前の収益性より
 地域社会への貢献を最優先している。

  当社では全社員が自ら作成したクレドを携帯している。実はクレドの制作過
 程こそが経営理念の浸透活動そのものであった。また、社員全員で月1回、丸1
 日かけて勉強会を行っている。そこでは、与えられたテーマに関して自分なり
 の課題や思いを発表する。

  今後は、県外需要にも取り組んでいき、県外の人を奈良に受け入れるという
 形で新規事業計画をしている。また、人材を育成し、世の中に輩出することを
 目標としている。
  地域への貢献、奈良をもっと楽しく豊かにという信念のもと、目指す姿は、
 奈良を活性化する情報インフラやプラットホームである。

3.株式会社バンビシャス奈良
 住所:奈良市餅飯殿町、代表者:代表取締役 加藤真治
 事業内容:プロバスケットボールチーム、「バンビシャス奈良」
 
  奈良県初のプロスポーツチームである。まだ、参入2シーズン目ではある。加
 藤社長は、大学卒業後は銀行に就職し、仙台のプロバスケットボールのチーム
 会社を経て、奈良にプロバスケットボールチームを立ち上げた。

  参入も浅いため認知度が低く、地域メディアに取り上げられることが少ない。
 そのため、ホームページやSNS、メールマガジン等多様な手段で情報を発信して
 いる。
  収益面では、スポンサー収入、チケット販売がメインである。現在は売上高
 のうちスポンサー収入が約50%、チケット販売が約30%である。収益の安定に
 は、スポンサーとして奈良県内の企業などから多くの支援を集める必要がある。

  今後は、バンビシャス奈良というスポーツチームを奈良の県民・企業全てが
 共有するシンボルにすることである。チームの拠点や試合会場となるアリーナ
 をつくる活動も始まっている。
  「プロバスケ 見た?」を合言葉に、認知度を高めていくことである。

4.株式会社柳澤果樹園
 住所:奈良県五條市西吉野町、代表者:代表取締役 柳澤佳孝

  当園は、奈良県五條市西吉野町の山間にある柿農園である。この地域は、柿
 の生産量は日本一を誇る。
  創業は約150年前。当初はミカンを栽培していた。ある時、寒波でミカンの樹
 が全て枯れた。そこで、寒さに強い富有柿の栽培を始めたのが約130年前である。
 当園は、柿で地域と共に農業を広げてきた。今は、柿5haと梅20aを中心に生産
 している。

  柳澤社長は5代目。20歳で就農、2003年から代表。農業を核にしながら様々な
 事業展開を進めてきた。2010年から農家民宿・農家カフェ・直売所を経営。加
 工品としては、柿ジャム、柿ドライフルーツを開発し、販売を広げている。
  2012年から、日本の農作物の世界進出を手掛けるジャパン・ファームプロダ
 クツ(JFP)の活動に参加している。カンボジアの農場では農家に技術指導
 を行っている。現地で採れた安全・安心な作物を、カンボジア・ベトナム・タ
 イの流通事業者に提供している。

  6次産業化の推進も行っている(2014年10月に、6次産業化法の認定を取得済)。
 それが海外への農作物の輸出であり、加工品の開発と販売である。
  農家民宿は一日一組限定で、西吉野の山中にイタリア風の建物がある。3月か
 ら10月までの営業期間は常に予約が入っている。食事は地元の食材を使った野
 菜やピザなどを提供している。また、JFPを通じて、奈良県産の柿を東南ア
 ジアに販売している。

  今後は、柿と柿加工品の海外への販売展開を計画している。新商品の開発と
 新たなレシピ開発、設備の増強等を進めていく予定である。特に、輸出は事業
 拡大・地域活性化・雇用創出等の核になる。

紙面の都合上、今回紹介できなかった事業所に、NPO法人森の月人、有限会社
ナイスケアサポート、株式会社ヒロコーポレーションがある。詳しくは、奈良県
診断士会のホームページをご覧ください。

<http://www.nara-shindanshi.jp/事業内容-1/2-調査研究/h26調査研究/>

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■執筆者プロフィール

 クリッジナリティー 代表 米田良夫
 中小企業診断士、ITコーディネータ。

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