訪日外国人の増加とシェアリング・エコノミー / 藤井 健志

<訪日外国人過去最高更新、消費額も昨年1年間分を超過>
●日本政府観光局より2015年1月から9月までの訪日外国人数1448万人と発表され
 ました。中国経済の先行き不透明感が叫ばれながらも、前年同期比48.8%
 増で、昨年1年間の訪日観光客数1341万人をすでに超えています。政府の観光
 戦略により中国や東南アジア向けのビザ発給要件が緩和されたこと、格安航空
 会社LCCの普及や円安の影響が大きな要因でしょう。

●旅行に際しての訪日客の消費額もこの7月から9月で1兆9億円(81.8%増)、
 1月から9月の累計で2兆5967億円(昨年1年間2兆278億円)です。想定を超える
 急激な増加のため、ホテル不足が大都市圏では深刻な問題となってきています。
 京都でも春と秋の観光シーズンでは以前からこのような状態になっていたので
 すが、いまや年間を通じてそんな声が聞こえてきます。
 
<シェアし合う、「民泊」「規制緩和」>
●そんな中で「シェアリング・エコノミー」、「シェアリング・ビジネス」、と
 いうようなキーワードが注目されつつあります。インターネットなどを通じて
 個人や企業などがモノや知識などを共有する。自分で所有するのではなく、複
 数の人達で共有したりする。「自分の持っている知識を役立てたい」、「空き
 時間を活用したい」というような個人の資源が、情報システムの進歩によって
 可視化されるようになり、サービスを提供する側と利用する側のマッチングが、
 そこに信頼性という要素が組み上がり、うまく動くようになりつつあります。

●個人の住まいやマンションの1室を観光客の宿泊に活用する「民泊」が広がっ
 てきています。旅館業法などの規制がありいろいろ問題もあるのですが、2020
 年の東京オリンピック開催に向けて、ますます増えそうな外国人観光客、ホテ
 ルに収容しきれない旅行者の受け皿にと、政府も普及の後押しをするという意
 向で、先日の「国家戦略特区」諮問会議にて民泊の事業化が方向づけられ、地
 域を限っての規制緩和が行われます。東京都大田区で来年の1月から民泊が公
 に認められます。
  東京オリンピックまでは外国人観光客が増え続ける勢いははっきりしていま
 すが、その延長線上はどうなるのか? 今後、都会から地方へという観光客の
 目も向いていくと思われます。訪れた地の写真やエピソードが発信されること
 で次の来日客を惹き付けます。「民泊」の活用は地方に観光客を誘導する取り
 組みとして地域活性化の目玉になってくるでしょう。地元の料理を味わったり、
 その土地の人々と触れ合える、外国人観光客もだんだんとそういうものを求め
 つつあるようです。

●空き部屋を短期間貸し借りしたい人同士でマッチングする世界規模のネット仲
 介サービスである「Airbnb」、現在では190カ国、150万以上の物件登録
 数を謳っていますが、たまたま近々ベネチア近辺に旅行するので宿を検索して
 いたら、「TripAdvisor」のホテル案内にも同じような物件が出て
 いました。この辺の境界線は曖昧な感じです。

<自家用車の相乗り事業>
●同じく国家戦略特区諮問会議で自家用車の相乗り事業も規制緩和される方向で
 す。営業地域を事前に定めて「道路運送法」の規制が緩和されます。いわゆる
 「自家用車タクシー」が解禁されます。こちらの方は「Uber」というスマ
 ホ向けのアプリを利用したオンデマンドタクシー配車サービスが海外では普及
 しています。日本でも原則禁止ですが一部エリアでは動いています。安倍首相
 が先日、「過疎地などでの観光客の交通手段に、自家用車の活用を拡大する」
 と述べ、解禁に向けて動き出しました。
  自動車に関しては、ここのところ「自動運転化」の技術革新のニュースが良
 く取り上げられ、日本でもすでに高速道路でに試験運転が開始されており、東
 京オリンピックが開催される2020年には実用化できるだろうと考えられていま
 す。将来的には運転手のいない無人タクシー、ロボットタクシーなどの時代に
 なれば人件費がかからず、過疎地で活用されやすくなってくるでしょう。

<シェアリング・エコノミー>
●サービスを提供する側の視点に立てば、家や車などのすでに持っている資産を
 貸し出すことで副収入を得ることができます。モノや施設を新たに作るのでは
 なく、資源を使いたい人に渡すという地球環境に配慮した生き方に繋がってき
 ます。
  筆者もちょうど1年位前に殆ど乗らなかった車を手放し、車のない生活に慣
 れてきました。もっぱら移動は自転車でたまにタクシー、必要なときは旅先で
 レンタカーを借りるくらいです。

●モノ、お金、サービス等の交換・共有により成り立つ経済の仕組みがソーシャ
 ルメディアの発達により可能となっています。車、子供用衣類、家庭用品、自
 転車、普段使わないもの、使わなくなったものをウェブサイトを通じて自分の
 友人・知人以外のネットワークの中で流通させることができます。急速なソー
 シャルメディア、モバイル、リアルタイムウェブ・・・テクノロジーの進化に
 伴って、このような新しいサービス形態が規制という岩盤を崩しながら進行し
 つつあります。
  人々の性善説を前提としたシェアリング・エコノミーですが、サービスを提
 供する側と提供される側の双方の評価システム(ヤフーオークションのような)
 の存在が信頼性を担保するようになり、コミュニティづくりと信頼関係を助け
 るコミュニティ・マネージャーの存在が重要なキーとなるでしょう。

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■執筆者プロフィール

藤井健志
一級建築士、中小企業診断士、ITコーディネータ
(勤務先)(株)日商社 MICE事業部

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