種や食の世界を考える / 松井宏次

暖冬にはじまり、暖かさと寒さを大きく行き来しながら草木芽吹く季節に。
さて、どんな春になることやら。そういえば、昭和の昔の歌に、春色の汽車に
乗って・・・という歌詞がありました。はたして、どんな色なのでしょう。

一般には名前を見る機会の少ない企業かも知れませんが、スイスに本社を持つ
シンジェンタという世界大手の農薬メーカーがあります。今年2月初旬、この
企業を、中国の化学大手、中国化工集団が買収するというニュースが流れまし
た。昨年には、このシンジェンタを、バイオ化学メーカーのモンサントが買収
しようとしている動きが報じられていました。企業戦略の交錯を経ての今回の
買収。企業の世界戦略の専門家の目には、この先の再編もいろいろと見えてい
ることでしょう。
モンサントは説明するまでもなく、本社が米国の、世界の種苗と農薬の最大手。
GMOの提供者としても知られています。それまでの種苗産業に変わって化学
産業の企業が種苗の世界を制覇して来たことは良く知られていること。それが、
21世紀に入って以降の動きだったことを思い起こすと、その激変ぶりをあら
ためて感じてしまいます。
今や、世界の種苗のシェアは、上位3社のモンサント、デュポン、シンジェン
タ(農薬メーカーは種苗メーカーになっている)で約半分を占めるとされてい
ます。
ちなみに、食料の自給率の低さがしばしば取り上げられる我が国ですが、農産
物の種苗となると、自給率は10%程度と言われています。

国内の、飲食サービスや食品小売の業界に目を向けてみると、シビアに続く市
場規模の縮小や、お客様の嗜好の多様化のなかで、ますます競争が厳しさを増
しています。
1980年代半ばから起きた、いわゆるグルメブーム以降、さまざまな食が宣
伝されて来たものの、ブームに留まり、食の豊かさとなって定着するには至っ
ていません。それでも、お客様の側に、素材への関心の高まりや、食を通して
の健康を求める志向の高まりは確かにあります。
あるときは、ファストフードで昼食を済ませたり、インスタントな食事で朝食
をとり慌ただしく仕事に出かけたりするときがあっても、丁寧に育てられた素
材をしっかり味わう食事を求めることもあれば、自分や家族の健康を思い、食
の安心、安全を確かめるときがある。多くの人は、その両面を持っています。
そして、大きくは、空腹を満たすための食糧としての食から、暮らしを楽しむ
食事へと移り続けています。

農作物やその加工品を商品としてみると、「食の安心、安全」は当たり前、そ
のうえで、最も大切な「味」はどうか、「機能性」はどのようかといったとこ
ろが基礎になります。そして、「利便性」や「外観」も合わせた全体で、商品
としての価値が問われます。お客様の多様性への応えかたも様々です。
ちなみに、農作物の生産者のなかには、数多くの種苗が提供される中から顧客
要求を喚起する新たな作物を探しだすという取り組みもあれば、世界の種苗情
勢とは一線を画した、地域本来の固定種を重視する取り組みもあります。

いずれにしても、食を提供する側も、食べる側も、今は、あらためて、種苗や
農作物栽培において、世界で何が起きているのか知っておくことが大切なとき
です。

※参考
・GMO(Genetically Modified Organism)
遺伝子組み換え作物の英略。分類上異なる種のDNAを移転又は複製させること
を目的に、細胞外でDNAを加工し、そのDNAを細胞内に移入する技術を、遺伝子
組み換え技術といい、その技術の利用によって作られた作物およびその子孫を、
遺伝子組み換え作物という。

・固定種
長い年月をかけ、その土地の気候風土に適応した野菜から種採りを繰り返し、
形や色、味を固定化していった種のこと。
スーパーなどで一般的に売られている野菜は、大量、安定生産に向いたF1
種(first filial hybrid)とよばれる種で栽培されている。固定種に対して
交配種と分類される。

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■執筆者プロフィール

   松井 宏次(まつい ひろつぐ)
   ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター
  焚き火倶楽部京都主宰

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