出稽古のススメ / 丸山 幸宏

<まえがき>
 例えば、興味のある事柄で、社外のイベントへ出かけたりすると、普段の付き合いとは違う、同業他社や時には畑違いのひとたちとの交流がありますね。
 この接点について、何かと刺激がもらえて、有り難いと思ってきましたので、今回はその辺りを振り返って、述べてみたいと思います。

<目次>
1.現在
2.過去
3.今を写す鏡
4.未来

<本文>
1.現在
(1)某IT企業様
 かれこれ1年以上も”傭兵“としてお世話になっているITベンダーさんです。
そもそも私にとっては、ここにおじゃましていること自体、すでに出稽古ではあります。
 CIOやITマネジャと向き合うことは、相変わらずですが、ここでは、広義のBusiness Process Management(BPM)や、エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)とITポートフォリオ管理といったドメインでの活動を通じて、お客様であるIT部門の価値貢献を支援しています。
 歳を取っても、新しいドメインでの新しい取り組みは、とてもいい刺激で、有り難いことに新たなチャレンジ機会になります。思うに出稽古をしたくなる理由は、こういう刺激に飢えているのかなと。単に飽きやすいだけかも知れぬが。

(2)ITC京都
 ここでは主に京都塾つながりの、いろんな刺激がありますね。最近では、やはり農業ですね。先日、宗平さんが紹介して下さった2/06のイベント、「次世代農業 グリーンカラー・フォーラム in 京都 (ビジネスモデル学会 共催)」のテーマは、Smart Agriculture。
 元々、長期的にはインドでの農業を自分達のドメインに加えようとしているので、とっても刺激になりました。

(3)ITC東京
 自社の東京オフィスが東日本橋ということで、東東京のコミュニティに属しています。イベントには事欠かない訳ですが、特に、ITCAと協賛するビジネスモデル学会のイベントが面白いですね。普段自分のいるドメインの隣接部で、こんなことが・あんなことも、といった新しい刺激がたくさんあります。

(4)要求開発アライアンス
 あるプロジェクトで知り合った方が理事をされていて、時々顔を出すようになりました。
 また、偶然にも以前お世話になったお客様と再会したり、現在お世話になっているベンダーさんの仲間と一緒に参加したりして、”出稽古”を楽しんでいます。
 ここでは、特に月例会の講演後の反省会という名の飲み会が、お目当てだったりします。

2.過去
 振り返ると、いつも何かしら出稽古をしている自分でした。学生の頃は社会人との、社会人になれば他業界や同業でも違う職種の人たちとの交流が刺激となり、新たな深さや広さの探求を、もう一歩進めるきっかけになってきたと思います。

(1)80年代:大学での外書講読で教材だったポーターの論文
 「進展する情報技術を競争優位にどう取り込むか」で、将来やりたいことが見えた気がしました。当時のダイヤモンド社HBR誌には、一部の論文だけ、英語の原文も載っていました。
 原題:HOW INFORMATION GIVES YOU COMPETITIVE ADVANTAGE
「産業構造と競争ルールを変え、競合他社より優れた仕組みで競争優位を創り出
し、新たなビジネスを生み出す。」
 この30年間に起きたことですね。また次の大きな波が来て、面白くなりました。

(2)同:企業に勤める外部講師による特別講座
 その枠で行った工場見学は、当時だと、NHKスペシャル等テレビでしか見たことのない風景が、匂いと一緒に目の前にありました。

(3)同:学生の頃に通ったITイベント
 当時の名称は、確かOAショーとかビジネスショーだったかと。バブルという時代も手伝って、高揚感があり刺激的でした。特に、当時まだ黎明期にあったAIの分野で、専門家の思考を模倣する”Expert System”や、意思決定を支援する”Decision Support System”。実は、このイベントが縁で、前職のIT企業にお世話になりました。

3.今を写す鏡
(1)先輩に教えてもらったこと
 3×3の9コマの真ん中に自分を置いて、相談できる8人を回りに書き出してみる。そうすると、今の自分が見えてくると。
目からうろこの、このハッとする”9コマの絵”は、以後大事な指標になりました。
 仕事で行き詰まっている時には、大体においてこの9コマも収束して行き詰まっていますし、何事にもポジティブに取り組めている時には、大体において入れ替わりの多い発散型で、特に直接利害関係にない外部人脈がいい影響を与えてくれていました。

4.未来
(1)出稽古
 多くの武道には、修行の場である道場がそれぞれの地域にあり、またいろいろ
な流派も枝分かれし、それぞれの個人が切磋琢磨して、発展してきた経緯があり
ます。
 少々こじつけではありますが、我々ITの専門家も似た様なところがあると思っています。同じ環境で、同じ仲間とばかり仕事をしていると、「外の変化に鈍感」になることもありますし、「小山のボス猿」が心地いいこともあります。そう感じた時には、迷わず外へ出てみる。多少の専門違いも、なんとかなるもの。
 いつしかこういう機会を、”出稽古”と呼ぶようになりました。もちろん、IT
C京都の“京都塾”というなまえも、お気に入りです^_

(2)場の提供
 最近、BPMのコンサルタント向けに、COBITを「地図と巻き尺」という道具として使う、Case Study型の勉強会を始めました。心がけているのは、あくまで道具として、「地図を使った、重要プロセスの仕分け」と、「巻き尺を使った、重要活動の可視化」くらいの使い方にとどめることかなと思っています。
 ただし、臨機応変に、”その”Caseを楽しむことにしています。

 以前、広義のBPMのような包含分野でお客様に向き合うときに、役に立ちそうな道具を捜してみたところ、BPM分野のCBOKという知識体系がはまりました。
じゃーCOBITを補完・代替するようなものもあるだろうってことで、IT-CMFにたどり着きました。テーマは、「お客様の、ITを使いこなす能力を、高めるお手伝い。よりよい俊敏性とイノベーションと価値提供にて。」

<あとがき>
 小学生の頃、月曜日は憂鬱でした。
 母親は美容室を営んでおり、唯一定休日の月曜は決まって、講習会という”出稽古”に通っていました。月曜日に学校から帰ると、母親がまだ帰宅していないこともあり、家の前の公園のブランコで過ごした苦い思い出があります。
 自分が青年になって理解したことですが、毎週朝から晩まで、火曜日から日曜日まで働いて、子供の面倒をみて、唯一の休みに講習会に通って技能を高めていたとは恐れ入ります。ほんとうに頭が下がる。おまけに彼女は今も現役、もうじき80だというのに。

 まだ50の自分は、出稽古に行ける時、姿勢を正して合掌。感謝しないとね。

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■執筆者プロフィール

Yukihiro Maruyama(丸山幸宏)
 ボスはインド人。夢は外から地球を眺めること。
Principal Consultant
 得意分野は、グローバルなソーシング、BPM・EAとITポートフォリオ管理。
日本インフォビューテクノロジス(株)
ITコーディネータ
http://www.ivtlinfoview.com/