Independence Day ~多様性を考える~ / 上原 守

 皆様,お世話になります.また駄文にお付き合いください.

 本稿の締切は7月4日です.7月4日は,アメリカの独立記念日(Independence Day)ですね.そこから思いついて,1996年公開のこの映画を取り上げることにしました.実は,このネタはどこかで書いたような気がするのですが…多分,読んでいる人もいないでしょうし,書いた本人が忘れているので,また似たようなことを書かせていただきます.直接の関係はないですが,本稿の配信時には,続編の「Independence Day: Resurgence」が公開されていると思います.

 

■あらすじ(Wikipediaから抜粋)

 アメリカ独立記念日を控えた7月2日,円盤型の大型宇宙船が世界中の大都市に出現した.アメリカ政府は宇宙人との交信を試みるが,ケーブルテレビの技師デイヴィッドは衛星通信に隠されていた暗号が宇宙人同士の攻撃指令であることを察知する.デイヴィッドは離婚した妻でホワイトハウス首席報道官コニーの助力を得て大統領と会見しそれを伝えるが既に遅く,宇宙船の主砲により主要な大都市は破壊され、廃墟と化してしまう.

 翌日には戦闘機による宇宙船への反撃が開始されるが,宇宙船のバリアに攻撃を無効化され,海兵隊航空部隊はヒラー大尉を除き全滅する.

 アメリカ首脳部は,宇宙人や宇宙船の戦闘機を捕獲して研究を行っている秘密施設「エリア51」に避難する.ヒラー大尉が捕虜にした宇宙人との対話で彼らの狙いが人類を根絶して地球資源を収奪することを知った大統領は,核兵器の使用を決断するが,宇宙船のバリアは核攻撃さえも無効化するものだった.

 独立記念日の7月4日,もはや人類に打つ手なしと思われたが,デイヴィッドがコンピューターウイルスを宇宙人の母船に感染させ,バリアを一時的に無効化する反撃作戦を思いつく.大統領もこの作戦に全てをかける決断を下し…

 

■宇宙からの侵略もの

 このジャンルで古典といえば,H.G.ウェルズの「宇宙戦争」ですね.

 「宇宙戦争」では,地球上の兵器では全く歯が立たなかった異星人は,生物的な細菌やウイルスにやられてしまいます.「Independence Day」では,電子的なウイルスを母船に感染させることで人類を救うことができました.

 

 実際には,全く逆のことが起きる可能性もあります.

 参考資料の「銃・病原菌・鉄」によれば,コロンブスによるアメリカ大陸発見後の200年間で,ヨーロッパからもたらされた病原菌によって,先住民の人口が95%減少したという推計がなされています.「Independence Day: Resurgence」でどのようになっているかは知りませんが,もし私が宇宙人で人類の根絶を図るなら,自分たちには免疫があって地球人に免疫がない病原菌を探します(笑)

 

 余談ですが,宇宙人の暗号が1日で解読できるのは無理がありますね.あのアラン・チューリングでも無理だと思います.地球上の古代文字でも,未解読のものが結構あります.宇宙人がインド・ヨーロッパ語族の言葉を使っているとは思えないので,一層難しいでしょう.

 

■独立記念日もの

 この分野では,以前このメルマガにも書いた「巴里祭」でしょうか.

 フランス共和国の成立を祝う祝日で,7月14日ですね.「Quatorze Juillet」っていうのが映画の原題で,そのものずばりの「7月14日」という意味です.

 

 アメリカの独立記念日ものとしては「7月4日に生まれて」がありますね.こちらは戦傷を負って車椅子になった,ベトナム帰還兵を扱う暗いお話でした.

 

■多様性を考える

 毎回のことですが,どうでも良いことで字数を使ってしまいました.

 「多様性(ダイバーシティ)」は,組織が多様な人材を積極的に活用しようという考え方に立って活動することだと思います.このことによって,組織を変化に強くすることができます.

 また今流行りの「デザイン思考」は色々と言われていますが,直接的にはデザインを行う過程でデザイナが使っている特有の認知的活動やプロセスのことだと思います.ビジネスの世界ではそのプロセスがイノベーションや製品開発に有効だとして,使われるようになっているんだと思います.

 

 何らかの「デザイン」を行うときには,最初にそのデザインの「目的」を把握して,それを解決するべき「課題」として認識することが必要です.このプロセスは対象の大きさや関連する人々の多さによって,何層にもなることがあります.

 

 「Independence Day」のヒラー大尉の恋人はシングルマザーという設定です.報酬が良いストリッパー稼業をしながら一人息子を育てていて,ヒラー大尉との交際が昇進の妨げになることを気にしています.20年前のアメリカでもシングルマザーは大変なようです.ちなみにジニ係数を調べてみると,アメリカ45.0(2007年)で日本は37.9(2011年)だそうです.おそらく今はもっと大きくなっていると思います.

 

 「7月4日に生まれて」では,車椅子生活が出てきます.

 私も叔母の車椅子をたまに押すことがあります.実際にそういう経験をするようになって,駅やビルのバリアフリー度が気になるようになりました.エレベーターが異常に不便な場所にある,経路がわかりにくい,段差が多い,スロープが遠い,多目的トイレの有無・場所とか気になります.エレベーターが多目的トイレからやたらに遠い駅とかあります.エレベーターが貫通型になっている施設はちょっと良いなと思います.

 

 また私自身も網膜剥離になり,両眼とも視野の歪みが少し残っています.会社で使っていたCISC○のip phone.液晶のフォントが異常に読みにくくて3689の区別がつかず苦労しました.全般にMSゴシックの数字は読みにくいですね.

 以前,ボランティアで訪れた施設で,トイレの案内表示(ピクトグラム)が男性は青でしたが女性は黒でした.人間は,こういった場合には先に色で判断します.しかも通路からは女性トイレが近いので,間違って入ってしまいそうになりました.公共的な施設なのに非常に使いにくいなと思います.

 トイレで思い出しましたが,私が働いていた建屋では,フロアごとに男性用と女性用のトイレの配置がバラバラで,これも間違いそうになりました.

 

 もし,組織がシングルマザーや車椅子生活者,私よりもっと視力の弱い人を活用する気になれば,以下のようなことが考えられます.

 

1. シングルマザーが働きやすい環境デザイン

 例えば,就業規則でフレックス制を認める,在宅勤務の導入,職場近くの保育所や病院等の整備などが考えられます.フレックス制は比較的簡単に導入可能ですが,在宅勤務については業務のどの部分が在宅勤務化可能なのかを分析し,必要な環境やセキュリティを構築する必要があります.保育所の整備だと行政や近隣の他の事業所を巻き込む必要が出てくるかもしれません.

 在宅勤務を可能にするように業務を見直すと,業務の効率化が達成できます.環境やセキュリティに関するノウハウができると,他社の類似業務も在宅でこなせます.ノウハウの販売や他社の業務委託を受ける等で,この部分で収益化が可能になるかもしれません.

 近隣に保育所や病院があると,シングルマザーだけでなく子育て家庭にも大きなメリットが出てくると思います.そのため離職率の低下や業務の効率改善につながる可能性があります.

 

2. 車椅子生活者が働きやすい環境デザイン

 こちらも,フレックス制や在宅勤務の導入,さらに自動車による通勤の許可,建屋や通勤ルートの改良,最寄駅のバリアフリー化を行政や交通機関に申し込む等が考えられます.

 車椅子での移動を考えると,通路に物を放置することはできません.経験上,整理整頓につながります.災害時の避難計画や経路に関しても,再考する必要がでてきます.このことは事業継続の観点からも重要になります.

 エレベーターの非常呼び出しボタンの位置も,全体に高すぎます.これを少し低くすることで,子供が閉じ込められたときにも対応しやすくなるはずです.

 

3. 視力や聴力に障害を持つ人が働きやすい環境デザイン

 例えば,照明のスイッチは以前より大きくなっています.これはユニバーサルデザインからの発想だと思います.こういう風に「小さいものを大きくする」だけで,使い勝手が向上することもあります.また,ユニバーサルデザインの発想は車椅子を使うときにも役立つはずです.

 実は色覚異常の方は結構多くて,日本だと男性の5%くらいが先天性の色覚異常だそうです.例えば会議の時のレーザーポインタを赤色から緑色に替えると見やすくなるそうです.充電中が赤色,充電完了で緑色に光るタイプの表示も考え直す必要があります.サイトや経路案内のデザインにも,もう少し工夫(フォントの選択や,読み上げソフトを意識したタグの埋め込み,色だけで区別するのではなく文字を埋め込んで明度も変える等)が必要なように思います.

 

4. その他

 日本でも,社員食堂のメニューをビジネスに結び付けた例があります.

 今はダイエットだけでなく,宗教的な理由等で食事を制限している人も増えているようです.海外の工場の食堂で問題になるケースもあります.このノウハウは逆輸入もできそうですし,人材交流にも役立ちそうです.また,会社の食堂だけでなく食材の販売や,飲食店の経営にも結び付きます.

 

 ただし,ここで注意しなければいけないのは,多様性の利点を発揮するためには,多様な人々からの意見を反映させる組織作りが必要だということです.障碍者雇用数が目標より多いだけでは,コストはかかっても「変化に強い組織」にはならないですね.

 

■終わりに

 先ほど『「デザイン」を行うときには,最初にそのデザインの「目的」を把握して,それを解決するべき「課題」として認識することが必要です』と書きました.この「目的」を「問題」に変えればロジカルシンキングです.

 また「目的」の対象者を漠然ととらえるのではなく,多様な対象者を思い描くことも必要に思います.

 

 「豊かな社会」というのは,多くの人が広い家に住んで,大きな車に乗って,エネルギーを大量に使っている社会ではなく,ちょっと生きにくい人たちが,どれほど生きやすい社会なのかだと思います.

 

 「デザイン思考」と合わせて「人間中心設計(Human Centered Design)」とかがよく話題になりますが,中心におく「人間」を(侵略してきた宇宙人は別として)もっと広く捉えていく必要があるように思います.

 

参考資料:

・Wikipedia: Independence Day,7月4日に生まれて

・「銃・病原菌・鉄」ジャレド・ダイアモンド 草思社文庫

・世界ランキング 国際統計格付センター

 http://top10.sakura.ne.jp/index.html

・色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法

 https://www.nig.ac.jp/color/gen/

 

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■執筆者プロフィール

 

上原 守

ITC,CISA,CISM,ISMS審査員補,IPAプロジェクトマネージャ

エンドユーザ,ユーザのシステム部門,ソフトハウスでの経験を活かして,上流から下流まで,幅広いソリューションが提供できることを目指しています。

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