健康経営について / 西田 則夫

2008年よりメタボ検診が義務化されましたが、2014年度は48.6%で政府の目標値である70%を大きく下回っています。要因として、「非効率的」「判定基準や評価の在り方が疑問」「本当に保健指導が必要な人が対象から外れる」「自営業の人と中小企業に勤める人の家族はほとんど健診を受けていない」「指導する側も指導される側も負担が大きい」などがあげられます。

ただ、近年、従業員の健康が会社の経営にも効果をもたらすという「健康経営」の考え方が、企業に広がり始めています。これは、社員の医療費が減れば、健康保険料の支出が長期的には減り、労働生産性向上や企業イメージ向上に結びつくとして、社員の健康づくりに積極的に取り組む企業がでています。

「健康経営」とは、米国の経営心理学者のロバート・ローゼンが提唱した概念で企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことです。

 

これに関しては、経済産業省が東証上場企業の中から「健康経営」に優れた企業を選定し、業種ごとに1社の基準で25社が、今年選ばれています。

以前、当コラム「残業削減、有休取得率向上への取組について」において、私が勤めている会社の取組を紹介させていただきました。残業の多さでは代表格のIT業界の会社で残業月20時間、有休取得率100%の取組を実施中で、ほぼ目標を達成できつつあります。この取組は「健康経営」の推進の一部であり、それに加えて、禁煙キャンペーン、健康に資する5つの行動習慣(・喫煙率の低下、・ウォーキング実施率の向上、朝食摂取率の向上、休肝日の実施率の向上、歯科 検診実施率の向上)の定着を推進しています。 この健康データの収集にあたっては、インターネット上の健康増進支援サイトを利用することで、上記の情報を蓄積し、自社や社員個人の健康上の特性を分析できるようになっています。

間味噌で恐縮ですが、私自身もこのシステム上に日々の健康データを登録しており、特にウォーキングの関しては、1日1万歩以上を目標とした意識した行動をとるようになりました。そのおかげかわかりませんが、ズボンのサイズが大きくなり始めたところで、成長?が一旦ストップし、現状維持が続いています。

 

こういったシステムを利用すれば、大企業だけが「健康経営」に取り組むのでなく中小企業も健康データを収集し、分析することが可能になると思われます。 ある自治体では、健康保険証番号をスマートフォンのアプリに入力すると、自分の健康データや血糖値が高い場合の食事の仕方などを提供してくれる仕組みができているそうです。 また、飲料メーカーより自販機とスマートフォンアプリを連動させ、企業の「健康経営」をサポートするポイントサービスが導入される予定です。

これは、「健康経営」を掲げる企業の社員の健康増進意欲を向上させるために、オフィス・事業所内の自販機に着目したサービスです。トクホ飲料をオフィス・事業所内の自販機(Iot自動自販機)で購入すると、機器のセンサーが反応しアプリ内にポイントがたまる仕組みです。また、期間内に規定の歩数以上歩くとアプリ内にポイントがたまり、たまったポイントでトクホ飲料を購入できるようになっています。

このようにITを利用した健康管理の仕組みが、スマートフォンなどの携帯端末を所持できるようになって、その利用範囲がますます広がっていくことが予想されます。

会社には、社員を健康障害から守る「安全配慮義務」があると同時に、社員も健康管理は義務として自覚しないといけません。効果的な健康対策としては、セミナーなどの健康教育も効果はありますが、就業規則での規定が一番効果があるようです。次に、健康に良くないことができない、良いことがしやすい環境整備をすることです。

企業の基幹システムの開発も必要ですが、「健康経営」を推進するシステム開発にも今後、注目していきたいと思います。

 

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■執筆者プロフィール

 

西田 則夫(Nishida Norio)

情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ

マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。

Norio.Nishida@scsk.jp