21世紀の変化についていく~マーケティングの観点から~ / 馬塲 孝夫

●もうすぐ2016年も終わりますが、一年を振り返ってみると驚くようなことが多くあったように思います。3月には人工知能が碁の名人をあっさりと破ってしまい、科学技術が人類の知能を越える時代が来るのではないかと言われました。政治経済的には、6月に英国のEU離脱票決がありましたし、11月には米国でトランプ新大統領が選出されました。いずれも世界的に予想外の事で、一部の論者たちからは、これまでの資本主義、民主主義が進歩の限界を迎え、富の分配等の問題が噴出してきたとの論点が指摘されています。

●このような変化の原因の一つには、大量生産・大量消費を基本とする20世紀の第二次産業革命から21世紀のインターネットを主とする第三次産業革命を経た結果と言われています。詳しい分析は専門家にお任せする事にして、ともかく最近の変化の激しさには驚きを隠せないというのが正直な実感です

●さて、ここからマーケティングの話なのですが、専門家は20世紀から21世紀への変化をどのように捉えているのでしょうか。マーケティングといえば、その大御所の米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院教授のフィリップ・コトラー先生は、最近の著書で以下のように述べられています。

●マーケティングはこれまで「製品管理」「顧客管理」「ブランド管理」の3本の大きな軸で発展してきた。その3本の軸からマーケティング1.0~4.0を定義すると、1.0は「製品中心」の考え方で製品の販売を主目的とするもの。2.0は「消費者志向」の考え方でマクロ経済の環境変化にともない消費者の行動も変化するので、消費者のニーズ調査で顕在化しているニーズを探り、消費者
を満足させることに知恵を絞るもの。3.0は「価値主導」と定義し、社会環境や経済的な公正さを提供する製品やブランドに消費者は価値を求めると考え、消費者の潜在的ニーズを探り、その価値創成に主眼をおいたもの。そして4.0は消費者それぞれの自己実現欲求をみたすカスタマイズされた製品やサービスを後押しするものである。
 20世紀は、マーケティング1.0、2.0の時代であった。21世紀の現代は3.0の時代であり、今後は4.0に向かうのである。

●そして、さらに言われます。多くの日本企業は、マーケティング2.0に留まったままだと。「企業は顧客調査により顧客のニーズを調べ、顧客ターゲットを絞ってそれぞれのニーズにあった製品を開発し、広告宣伝し、販促することに注力していく。(このような)マーケティング2.0の考え方は、今なお多くの日本企業が信奉しているマーケティングの姿である。」だと。

●21世紀に入ってから、既に10年以上経ちます。世界的識者は20世紀と21世紀の明らかな変化を読み解き、指針を与えてくれているのですが、上記の指摘のように、なかなかその変化についていけていないのが現状です。筆者も初めてコトラー先生のマーケティングを学んだ頃は、このような方向性を理解した気になっていましたが、いざ実務となるとなかなか現在の劇的なマクロ変化を実感できず、それを実践することができませんでした。しかし、昨今の状況を見てい
ると、21世紀は確実に前世紀とは大きく異なる環境へ変化しており、それに対応した動きを迅速にとるべきとの思いを強く持ちます。そのような意識改革が、今まさに必要ではないでしょうか。

参考文献)
1.フィリップ・コトラー他、高岡浩三 「マーケッティングのすゝめ 21世紀のマーケッティングとイノベーション」、中公新書、2016.
2.広井良典 「ポスト資本主義」、岩波新書、2015.

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■執筆者プロフィール

馬塲孝夫(ばんばたかお) (MBA)

ティーベイション株式会社 代表取締役社長
(兼)大阪大学 産学連携本部 特任教授
(兼)株式会社遠藤照明 社外取締役
e-mail: t-bamba@t-vation.com
URL: http://www.t-vation.com

◆技術経営(MOT)、FAシステム、製造実行システム(MES)、生産産情報システムが専門です。◆

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