ひらめきはどこから来るのか ? ~アイデアは既存の要素の組み合わせ~ / 藤井 健志

 昨年一杯で長らく続けていた会社勤めも卒業し、ボチボチと個人商店として動きつつある状態なのですが、広告を中心としたマーケティング・コミュニケーション業界に長らく席を置いていました。そんな中でメディア環境の変化はめざましく以前から考えると圧倒的な便利さ、快適さが追求されるようになってきました。昨今では宅配便に見られるように“行き過ぎた感”に同意される方も多くなり、情報過多によるストレス、息苦しさも意識されるようになってきました。インターネットの接続を立ち、人や自然とふれあうツアーに、スマートフォンなどが手放せない人たちが駆け込んでいるとニュースは伝えています。

 

■アイデアがつくられるプロセス

 思いを巡らしていた時に、ふと昔先輩に勧められたジェームズ・W・ヤングの「アイデアのつくり方」(A Technique for Producing Ideas)という本に目を通したくなっていました。原著は1940年初版の古典ともいうべき書籍ですが、広告クリエーターの間ではバイブルとされていました。

 その中で彼は、一般的原理として「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない。」と考え、アイデアが作られるプロセスを5つの段階に整理しています。

 (1) データ(資料)集め

 (2) データの咀嚼(資料に手を加えること)

 (3) 孵化段階(データの組み合わせ)

 (4) アイデアの実際上の誕生<※ユーレカ ! 分かった ! 見つけた ! >

 (5) アイデアのチェック(アイデアを具体化し、展開させる段階)

 

※Eureka<ギリシャ語でわれ見い出せりの意から>

 アルキメデスが金の純度の測定法を発見したとき叫んだとされる。(コトバンクより)

 

 年月を重ね、今あらためてこのプロセスの普遍性、適合可能性の広さに気付かされます。

 

■飲み終わったときに気付く愛のメッセージ

 過去に心に残った印象的なキャンペーン・アイデが思い出されてきました。ひとつは「飲み終わったら現れるコカ・コーラシークレット・メッセージ」のアイデア。コカ・コーラの色をしたインクのペンを商品に添え、ペットボトルにメッセージを書いておく。そしてそのコーラのペットボトルを彼/彼女に渡し、飲みほしたときに書いたメッセージが現れるという仕組みです。大切な人に伝えたいことを込め「コカ・コーラを贈るHAPPYなブーム」を創ろうと意図したもの。飲み終わったら思いもかけない愛のメッセージがあらわれる。この手があったか ? と驚きを与えられました。コーラ色をしたインクのペン、シンプルな発想です。

 

■便器のハエを狙って!

 かつてオランダに旅行した時、スキポール空港のトイレに入ると便器の位置が高いことにまずもって驚き。日本にある小便器の位置に慣れ親しんだ我々には異常に高い位置に感じられました。そしてちょっと斜めになったまん丸い小便器の受け口の真ん中に青い色をしたハエが目に飛び込んできました。ハエが留まっているのかなと思ったら、便器に印刷されたものでした。的があると男性は自ずとそれを狙ってしまいます。その結果飛び散ることが少なくなりトイレの汚れが少なくなるという仕掛けでした。

 へぇー、スゴイなあと思っていたら、日本でもこれに触発されてハエ・蚊用殺虫剤「フマキラーAダブルジェット」バイラル・キャンペーンが行われていました。しかも一捻り、ふた捻りもして。「一発命中シール」という黒いハエのイラストが描かれたシールが小便器に貼ってあって小便をかけると温度によってグラフィックが変化してハエがぽとりと転がり、その横に殺虫剤「フマキラーAダブルジェット」が姿を表します。用を足した後は洗浄水を流すため、冷たい水の温度でグラフィックはもとに戻り、黒いハエが復活し何度でも繰り返し利用できる仕組みになっています。小田急新宿駅の3箇所のトイレ、計26基の小便器に掲出したと報告されています。

 めちゃめちゃ面白いアイデアに感動したのですが、どんなにインパクトがある広告といえ、たかだか26基の男性小便器では、新宿駅を利用しない人、また女性は一切接触することができません。そのためこのキャンペーンでは、PRによるニュース化とWEBで展開したバイラル・ゲーム(男子トイレとそこに立つ男性の下半身とで構成され、ハエを撃ち落とす単純なゲーム)が口コミを広げ広く拡散させる役割を担いました。まだスマホが普及していない時代です。

 

■暗闇の中で五感を研ぎ澄ますという発想から

 3つ目は2000年のことだからもう17年前になりますが、清水寺で“ご本尊が三十三身して衆生を救う”という「観音経」の教えに因んで33年毎に行われる御開帳に際し計画した記念事業の一つ「随求堂胎内巡り」。倉庫として使っていたお堂の下を何かできないかという要望で、大随求菩薩の胎内に見立て、暗闇の中を五感を研ぎ澄まして「擬死再生」(こころの生まれ変わり)を体感するというコンセプトで計画しました。1年だけの予定だったのですが、暗闇が修学旅行生たちにもウケたのか今も継続されています。

 何をすればいいのか?と悩む中で、歴史資料をはじめ環境分析を行い、色んな人の知恵をお借りして実現に至ったアイデアの一つです。

 

■ひらめきは天から降ってくるか?

 ヤングの述べた「アイデアのつくり方」の5段階 (1) データ集め、(2) データの咀嚼、(3) データの組み合わせ、(4) ユーレカ(発見した !)の瞬間、(5) アイデアのチェック、というプロセスを意識的にコントロールしていければ、ひらめきが天から降ってくる「アハ!モーメント」に出会える可能性が高くなるでしょう。ブレインストーミングやKJ法などのツールもここに繋がっています。

 

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■執筆者プロフィール

藤井 健志 Kenji FUJII

藤井コミュニケーション・デザイン研究所 代表

一級建築士・中小企業診断士・ITコーディネータ

kenjif@mtg.biglobe.ne.jp

経営とITとデザインを繋いでまちづくりに貢献します。

 

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