ホームページに動きを与えた技術「Flash」の終焉 / 池内 正晴

 2017年7月下旬にアドビシステムズ社(以降の文中ではアドビ社と表記する)のホームページ(米国版)に、2020年末をもってFlashのサポートを終了するとの内容が掲載された。

 

1. Flashとは

 ホームページ上で動画やゲームなど動的なコンテンツを利用することができる仕組みで、現在はアド. ビシステムズ社が開発している。

 ホームページ閲覧者が利用するFlash Playerは無償配布付されており、アドビ社のホームページからダウンロードして各自のパソコンにインストールすることにより利用ができる。Internet Explorerなどのブラウザでホームページを閲覧した際に、Flashのコンテンツが設定されていれば、自動的にFlash Playerが動作して動画等が表示される。パソコンの購入時にあらかじめこのFlash Playerが導入されていることも多くあり、多くの人がFlash Playerの存在をあまり意識せずに、ホームページで動画等を閲覧している。

 ホームページ提供者がFlashコンテンツを作成するためには、アドビ社より有償で発売されているAdobe Flash Builderなどの開発ツールを利用する。だが、Flashコンテンツについては、その仕様が公開されているため、アドビ社以外からもコンテンツを作成するツールが多数提供されている。

 

2. Flashの歴史

1) Flashの誕生

 1996年にマクロメディア社がホームページ上でアニメーションを表示できるFuture Splashというソフトを開発したフューチャーウェーブ社を買収し、翌年にその技術を利用したFlashをリリースした。ちなみに、FlashはFuture Splashを略した名称である。(マクロメディア社のブランド名をつけてShockwave Flashと表記されることもあるが、Shockwaveという製品とは別のものである)

 

2) Flashの普及

 これまでは、写真などの静止画と文字が中心であったホームページにアニメーションを表示できる技術としてFlashは2000年ごろから徐々に普及していった。

 その後、インターネット掲示板の「2ちゃんねる」に「FLASH・動画板」が開設されるなど、Flashを使用したアニメーションが多くのクリエイターによって次々と作られるようになった。

 Flashはその後もバージョンアップを重ねて進化を続け、単純にアニメーションを表示するだけではなく、プログラミングで動きを制御できるようになり、マウスのクリックやキーボートからの入力などの動作により利用者がいろいろと操作することが可能となった。それによりゲームなどのアプリケーションが多く作られることとなった。

 Flashは、Windowsパソコンだけではなく、Mac OSなど他のプラットフォームでも同じコンテンツを表示・動作させることができたことが、アニメーションやゲームなどのコンテンツが多く作られることになった一因であると考えられる。画面サイズやキー入力の関係で一部機能制限があるものの、携帯電話用のFlashの環境も提供されていた。

 

3) Flashのさらなる発展

 Flashがさらなる進化を遂げることになったのが、2004年ごろの動画配信機能の追加である。そして2005年4月にマクロメディア社がアドビ社に買収され、Adobe Flashとなった。

 動画配信機能に加えてH.264などの新しい動画の形式にも早い段階で対応するなど、動画配信に必要な機能を強化していった。その結果、動画配信サイトのYouTubeにFlashが使用されることとなり、インターネットに接続して使用するパソコンにとって、Flashがほぼ必須であるというような状況になっていった。さらにLinux版のリリースなど、対応するパソコンのプラットフォームもどんどん広がっていった。

マイクロソフト社がFlashとよく似た機能であるSilverlightをリリースするなど、他社による競合の動きもあったが、Flashの普及率に影響を与えるようなものはなかなか現れなかった。

 

4) Flashの陰り

 Flashが高機能化していった結果、その仕組みが大型化し複雑化していった。そのことにより、何らかの不具合でパソコンの動作が不安定にあるといった状況や、能力が低いパソコンにとっては動作が非常に遅くなるといった状況がしばしば見受けられるようになった。

 また、Flashのシステムにセキュリティの脆弱な部分が見つかった場合は、利用者数が多いことも加わって、ハッカーやウィルスによる攻撃の被害件数も多くなり、大きな問題となったこともあった。

 

5) 他の技術との競合

 インターネットのホームページをブラウザで表示するための技術的な取り決めとしてHTMLというものがある。Flashが世の中に出てきたころは、HTML1.0やHTML2.0と呼ばれるものが主流であり、これらはテキストや画像をいかに整形して表示するかということがメインであったために、ブラウザでアニメーションや動画などを表示しようとすると、Flashのようなプラグインと呼ばれる外付けの機能に頼らざるをえなかった。

 インターネット技術の発展によりHTMLも進化しており、現在主流となりつつあるHTML5では、動画の再生などもサポートしており、これに対応しているブラウザにおいては、Flashを使用しなくても動画の配信や再生などが可能となっている。

 

6) Flashを取り巻く環境の変化

 これまでは、Flashが広く一般的に使われている多く状況において多くのホームページで当たり前のようにFlashのコンテンツが使われてきた。

 しかしHTML5の登場により、Flashを使用しないという動きが出始めてきた。そのなかで目立ったものとしては、iPhone・iPadのブラウザがFlash非対応となったことがあげられる。かなりの台数が普及しているiPhoneなどでFlashを使用したホームページを見ることができないといった状況になれば、ホームページの提供者側としてもFlashを使わずHTML5対応に変更していく動きが出るのは当然の流れである。さらに、広く普及しているChromeやFireFoxなどのブラウザにおいても、Flashを推奨しない仕組みに変更し、将来的には対応不可とすることを明言している。

 このような流れの中で、アドビ社はFlashの開発終了を決断したと考えられる。

 

3. Flashの現状から

 企業ホームページなどでも、Flashを使用したページがまだ多くみられる。2020年までFlashのサポートが継続されることにはなっているが、現在においてもiPhoneをはじめ、利用者の環境としてFlashを利用したホームページが表示できないケースが増えてきており、なるべく早い時期にホームページを作り直す必要がある。

 これまでに多くの企業などのホームページで、視覚的な効果を期待してFlashコンテンツが積極的に使用されてきた。それが現在に至って、Flashで作成したコンテンツを他のものに置き換える必要に迫られているのだが、過去にFlashコンテンツを作成する投資は無駄であったのだろうか。インターネットに関する技術の革新は非常に早いのだが、そのなかでFlashは、広く普及し、長期間使用されてきた技術のひとつであり、この技術を選択して使用してきたことは間違いではなかったと考えてもよいだろう。ただし、昨年度に新たに導入したというようなケースは時期的に考えて失敗と考えるべきかもしれない。

 このようなIT技術を新しく導入する際は、その技術が普及して広く長期間使用できるかを十分に検討する必要がある。その際には、このFlashの栄枯盛衰をひとつの参考事例として見てもらえれば良いのではなかろうか。

 

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■執筆者プロフィール

 

池内 正晴 (Masaharu Ikeuchi)

 

学校法人聖パウロ学園

    光泉中学・高等学校

ITコーディネータ

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