アメリカ小売業最前線 ? ウォルマートを訪れて感じたこと / 杉村 麻記子

 今年の夏にアメリカに皆既日食観察の旅行する機会があった。その際立ち寄ったウォルマートをみて感じた事と、最近買い物のほとんどがAmazon化している自分自身の生活パターンから小売業の近未来を考えてみた。


1. アメリカ小売業の巨人 ウォルマート
 アメリカのウォルマートといえば、グローバルでの売上高トップに君臨する小売業である。2017年1月の売り上げは4858億ドル。2016年度は減収となったが、再び増収に転じたようだ。
 EDLP(Every Day Low Price)や、ITを戦略的に活用している企業としても、日本からたくさんの小売業がそのノウハウを勉強しようと、ウォルマート見学ツアーなるものが多数くまれている。2002年には、西友が包括的業務提携し日本にも参入した。(現在西友は完全子会社となっている)。その他にも南米やインドの小売業者を買収し、グローバルでの拡大戦略をとってきた。

【ウォルマート業績の推移】
単位($):  2015年1月   2016年1月   2017年1月
売上高   4856億5100万  4821億3000万 4858億7300万
営業利益    271億4700万  241億500万  227億6400万

 「大型店舗によるディスカウント」というモデルを進めてきたウォルマートがここ数年で大きく戦略を変えざるを得なくなったのは、皆さんもご承知の通りである。Amazonの躍進による影響が大きいといわれている。


2. Amazonの台頭と店舗での売り上げ
 Amazonの売上高は、2016年で1360億ドルとウォルマートの3分の1ほどであるしかし、EC市場のシェアの47%をAmazonが占めていて、その成長率シェアも53%と高い。(*1参考 https://netshop.impress.co.jp/node/3985)
 高い成長率を維持しているEC市場での躍進もあり、Amazonの時価総額は、2015年の7月を境に、ウォルマートを上回り現在は2倍以上の差をつけている。
 あたかも、EC市場を制したものが、小売業を制するように感じてしまうかもしれないが、アメリカの小売りに占めるEC市場の比率はまた10%を下回る規模のようだ。
とはいえ、日本でもそうであるように、成長が鈍化した店舗販売から、大きな成長が期待されるEC市場に競争の主戦場が移るのは明らかである。


3. アメリカオレゴン州 ウォルマートの店舗での買い物体験
 今年の夏にアメリカに旅行に行く機会があり、その折、西海岸のOregon州でWalmart Supercentreで買い物をする機会があった。
 買い物を行く前に近くのWalmart Supercentre店舗を検索し、その口コミ情報をチェックしてみた。Oregon州の州都Portlandの近郊には多数の店舗があったが、いずれのお店も品ぞろえが少ないことや、商品の見つけにくさ、店員のホスピタリティまでクレームめいた投稿も多かった。実際に訪れたOregon州のSupercentreのお店の中は土曜日のお昼まえにも関わらず、閑散としていた。
 最近日本でも、あまり実店舗で買い物をしなくなってしまった私にとって、慣れない異国で、相談できる店員も近くにいない中、商品を探して回るのは苦痛以外の何物でもなかった。結局見つけることができずに、他の商品を買おうとレジに行った時に尋ねて、ようやく探していたものが置かれている場所にたどり着くことができた。しかし残念ながら欲しいものは売り切れて欠品していたため諦めることになった。そんなさて私の体験はさておき、こういったことが従来型の店舗の実情のようで、Kマートやメイシーズやシアーズ、JCペニーといった小売りの大手が多数の店舗を閉鎖している。またトイザらスが破産申請(Chapter11)をしたニュースには驚いた方も多いだろう。
(日本のトイザらスは破産法の対象外)
 ウォルマートも、2016年には米国内に4600店舗のうち、150店舗を閉鎖し、新規出店を大幅に減速している。

 一方で、EC市場のスタートアップ企業を買収する戦略をとっている。
【ここ1年のウォルマートによるeコマース企業の買収】
 2016年8月 Jet.com  米国ECサイト
 2017年1月 Shoebuy  米国の靴専門ECサイト
 2017年2月 Moosejaw アウトドア用品小売
 2017年6月 Bonobos  男性向けアパレルEC

 この買収により、ウォルマートのECサイトにおける取扱品目数が大きく増え、EC市場での売り上げが3割増加した。ECサイトでは、取扱品目が少なく検索して見つからないとすぐに別のサイトに流出してしまう。取り扱う商品の幅や種類が売り上げに直結する要素となる。このあたりは、実体験としても理解ができる。私自身も調べものをするときは、Googleを検索エンジンで使う(ぐぐる)が、買い物をするときはgoogleではなくAmazonサイトで検索するようにしている。そのほうが欲しい商品が早くみつかるのだ。Amazonでほしいものを品定めした後、買う予定の商品価格を比較サイトでチェックして一番安いところがどこかを調べる。ひと手間加えても、金額と配送の条件から結局Amazonに戻ることも多いが・・。

 さて全米では小売店舗の閉店が増えているようだが、ウォルマートの会員制スーパーマーケットである「Sam’s Club」は好調のようだ。自分自身でバーコードをスマホでスキャンして決済できる「Scan&Go」を開発し、レジ待ちをなくすサービスを展開した。これにより実店舗への集客に成功しているようだ。今回のアメリカ旅行では、残念ながら会員制のSam’s Clubに立ち寄ることはできなかったが(Oregon州には店舗がない ?)、この新しいサービスが功を奏してか、Sam's Clubの口コミが軒並み高評価のようだ。
(iPhoneのAppstoreでもScan&Goは好評価。日本のストアからはDLできないが・・)


4. 今後について
 このように、従来型の小売店舗は曲がり角に来ており、ウォルマートがその投資を集中しているEC市場が伸びていくことは確実である。一方で、日本のAmazonではヤマト運輸による配送の見直しなど、その物流コストについても問題になっている。
 アメリカのウォルマートでは、オンラインで購入した品物を地元の店でピックアップする方法での売り上げも増加しているようで、ここにあたらしい小売業の在り方があると感じた。
 ネットで注文したものを店舗で受け取ることで、さらに割引が適用される・・ということになれば、その形態を選択する人も増えるくるだろう。車社会でかつアメリカ国内に多数の店舗を持つウォルマートならではの戦略となりえる。実店舗に誘導できれば、そこではモチベーションの高い店員が対面で対応する事による顧客満足度の向上、クロスセルやアップセルによる売上アップや、周辺のショッピングモールやレストラン・映画館などの複合施設への誘導も期待できる。
 さらにウォルマートはグーグルが2017年8月に提携を発表し、この提携によってグーグルの音声アシスタント「Googleアシスタント」と即日配達サービス「Google Express」経由で、ウォルマートの商品をオンラインで注文できるようになるようだ。
 もはや、死語となった「クリックアンドモルタル」<実店舗とオンラインショップの双方を運営することで相乗効果を狙う戦略>が究極の姿になるのではないだろうか?

 日本では、ウォルマートのような巨大な小売業が存在しないことからも、当面はAmazonが躍進するのではないかと思う。EC市場の拡大については、主な消費層となるシルバー層を取り込むことが重要となる。そのためには複雑な操作なしでも注文ができる、GoogleアシスタントやAmazon Echoといったものが使いやすく普及するか? 主戦場となる食品にゃ日配品の取り扱いが増えるかどうかなど今後も市場の動向を注視していきたい。

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■執筆者プロフィール

杉村麻記子
ITコーディネータ・中小企業診断士

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