スマートコントラクトの動向に注目 ! 契約業務の電子化から始めてみよう / 松山 考志

 あけましておめでとうございます。2018年1月4日の日経平均株価終値の上げ幅は2017年の大発会の479円79銭を上回り、741円高と1996年以来の上げ幅を記録し、日本経済の力強さを印象付ける年明けとなりました。世界経済の拡大や円安、半導体や機械等の持続的な成長を背景としたものですが、年後半は19年10月に予定されている消費増税引上げの影響が景気にどこまで影響を与えるのか、今から注目しています。

 

 さて、こうした好経済を下支えする要因に関連して、報道関係やコンサルティング会社から2018年の今年の政治社会、経済やトレンドに係る様々なキーワードや予想が出てきました。ITに関連する内容では、ロイター社が行っているオンライン調査の内容に、2018年に注目するテーマとして、「働き方改革」、「自動運転など技術革新」、「仮想通貨の行方」が取り上げられました。米調査会社ユーラシア・グループでは、2018年の世界10大リスクとして、人工知能(AI)などの最新テクノロジー分野で、中国が世界的に影響力を行使する機会が増えると予測、テクノロジー面でもAIやスーパーコンピューターの分野で中国の技術力が高まり、ITを独占してきた米国とのあつれきが強まるという見方を出しました。

 このような様々な情報のうち、ブロックチェーンという分散型デジタル台帳技術を応用したスマートコントラクトの動向に注目をしています。

 その代表的な技術として、仮想通貨の一つとして知名度が高い「イーサリアム」に、契約=コントラクトを自動的に実行させる次世代技術があります。イーサリアムは、ブロックチェーン技術の一つであり、仮想通貨をはじめとする金融分野での取り組みが先行していますが、P2Pの電力取引や不動産登記、シェアリングエコノミーなどの契約を伴う取引活動全般においても利用可能な点が特徴です。

 そもそもイーサリアムが作られた目的は、ビットコインのブロックチェーン技術にスマートコントラクトを搭載して契約を自動化させれば生産性が飛躍的に向上するとの発想で開発されました。従来のビットコインのブロックチェーン技術では、「AさんがBさんに一万円渡した」という通貨の移動だけが記録されるのですが、スマートコントラクトはこの「一万円返す約束」という契約に関する情報も同時に記録することができるようになります。

 最終的には、この技術を利用し、契約書を書面で交わさずとも、通貨が移動した時点で契約の締結と記録が電子的になされるようになります。現在このやりとりを行う場合、契約書をお互いにかわし、契約書締結後に銀行を通じて金銭を相手先の指定口座に入金するという複数回の作業を、1回の作業だけで完結することが可能になるかもしれません。

 

 イーサリアムには企業が注目しており、その活用に共同で取り組む企業連合「エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA)」を形成し、IBMやマイクロソフトなどIT大手企業の他、英メジャーのBP、オランダのINGグループ、独医薬品メーカーのメルク、日本ではトヨタ自動車などの異業種の企業が参画し、共同研究が進められています。また、行政サービス分野において各国政府で、現在の電子行政手続きのスマートコントラクト化に向けて研究や実証実験が開始されています。その今後の研究活動の結果に注目が集まっています。

 

 ここまでは、抽象的な未来の話をしてきましたが、今すぐ中小企業が取り組める業務改善事例として、電子契約の活用を紹介します。

 電子契約を利用しない場合、先ほどの金銭貸借のケースのように書面で契約行為を行う必要があります。具体的には、紙の契約書を郵送か持参で交換し、捺印することで締結され、お互いのキャビネットに紙で物理的に保管管理される企業間の契約形態です。書面を紙で締結し、管理すると、契約書の印刷、製本、封入、投函、郵送、捺印、保管、進捗. 管理、督促といった作業が発生します。また、文書が増えていくと管理するための台帳作成、最終的には文書管理システムの導入に至るといった、手間と時間と費用が書面の数に比例的に増大していく特性があります。

 中小企業では紙管理が好まれることが多いですが、こうして細かく書き出してみると、契約業務を書面で行うことにより非常に多くの作業と非効率が発生していることが確認できます。これを電子契約に変えることで、1つ目に作業の効率化が図れます。印刷の廃止、契約業務にかかわる人的工数の削減などです。2つ目には膨大な数の契約書の検索・閲覧・共有を容易に行うことが可能になります。3つ目にコスト削減です。電子契約では、書面契約で必要であった印紙税が不要になります。また、倉庫代、郵送代の削減も図れます。

 実際に電子契約を利用するためには、新たにシステム導入(電子署名、タイムスタンプ)が必要になり、また実際に訴訟になったときの証拠性の観点から対象となる契約業務の検討をしなければ導入できません。最近は、クラウドサービスで電子契約を低料金で始められるものも出てきていますので、中小企業でも導入を検討できるようになってきたと感じています。

 

 電子契約は、行政機関への電子申請、建設業における請負契約、下請け企業とのやり取りで発生する書面、不動産業における売買契約など、様々な業種と業務において利用シーンが拡大してきています。生産性向上、業務効率化を進める手段の一つとして、利用の検討をお勧めします。

 

(参考文献)

・日本文書情報マネジメント協会 電子契約活用ガイド

・経済産業省 文書の電子化・活用ガイド

 

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■執筆者プロフィール

 

松山 考志

文書情報管理士/行政書士/宅地建物取引士