ファミリービジネスについて (2) / 米田 良夫

 ファミリービジネスの2回目として、日本でファミリービジネス研究の第一人者である後藤先生の著書から考察してみる。

 

 ファミリー企業と一般企業はここが異なる点として、5点をあげている。

1. 創業者一族の存在感と影響力が強い

 創業者の起業家精神のDNAを受け継いでおり、創業者一族の関与という要因こそが経営を左右する。

 ファミリー企業の文化、社風は個性的でインパクトがあるとしている。

2. 超長期的な経営

 ファミリー企業では、経営者は、短期10年(後継者の選定・育成、資産承継の準備期間)、中期30年

 (自身が経営の任にあたる期間)、長期100年(三代先にわたるビジョンと事業基盤の構築)と考え

 ている。短期的なトレンド、流行には左右されず、長期的で持続的な成長を最も重視する。長寿企業

 における当主の任期は28年であった。

3. マネできない果敢な意思決定

 多くのベンチャー企業がファミリービジネスとして創業する。その創業資金は家族が72%を占める。

 また、ファミリービジネスでは、研究開発や設備などに思い切った投資が迅速かつ果敢にしやすい。

 株式市場や金融機関に対する依存を戒める傾向が顕著であり、独立性を重視する。

4. 企業目的が一般企業とは異なる

 創業者が創業に込めた魂、起業家精神を世代から世代へと伝えて事業を承継することは、営利目的を

 主とする一般企業とは異なる。

5. 一般企業に比べて好業績である

 収益性比率はファミリー企業が非ファミリー企業より優位性を示していた。

 その理由として、

 (1) エージェンシー・コスト負担が少ないこと、

 (2) 社内に保有する経営資源が競争優位の根源であること、

 (3) 外部資金の導入を好まず、企業規模の成長を犠牲にしてでも収益性や安全性を重視すること、

 を指摘している。

 

 以上のことから、ファミリー企業は、

 (1) 創業者の起業家精神を出発点としていて、企業理念が明確である。

 (2) 経営上の責任が明確で、企業理念の実行にブレがない。

 (3) 長期的視点で経営がしやすい環境にある。

 (4) 社内の意思統一を迅速に行うことができる。

 と後藤は要約している。

 

 日本には創業以来200年以上継続している長寿企業は3,113社ある。

 ほとんどの長寿企業はファミリービジネスである。

 株式公開をしている企業も29社ある。

 例えば、

  松井建設株式会社1586(天正14)年、

  住友金属鉱山株式会社1590(天正18)年、

  養命酒製造株式会社1602(慶長7)年、

  株式会社松坂屋1611(慶長16)年、

  丸栄株式会社1615(元和元)年

 である。

 

 日本のファミリービジネスが長寿の要因として、後藤は4点をあげている。

1. 企業の内部要因として各種マネジメント・システムの蓄積。

2. 経営を取りまく外部要因として市場経済の長期的拡大。

3. 家業の継続発展を目指す強い意思の存在。

4. 家業を継続する強い意思の背景としての思想的要因、特に石田梅岩の心学の役割は重要である。

 

 長寿企業のタイプとして、

 (1) 事業の秘伝を承継者ひとりだけに伝える「一子相伝」、創業以来の味や商品・サービスの質を

  最優先し、己の信念を固持するため、「身の丈経営」で規模を抑える。「妥協しない一徹さ」など

  原点維持タイプ。

 (2) 時代適合を推奨し、多角化を否定しない持続的成長タイプ。

 (3) 過去を否定して歴史を創造したり、新天地に活路を見いだす創造的破壊タイプ。

 などがある。

 

 ではなぜ、ファミリー企業は長寿企業となっているのだろうか。

 ファミリー企業が最も重視するのは次への事業承継であり、長期間にわたる持続である。そのために、短期間の成長よりも安全性に経営の重点を置き、リスクに対して非常に慎重である。

 後藤の調査によると、企業の社歴は、一般企業の平均24年に対して、ファミリー企業の平均は52年であった。

 しかし、日本のファミリー企業が直面する課題もある。経営者の高齢化と後継者難である。これは深刻な問題で、このことが原因で廃業につながる。

 また、生業の段階から脱皮できないファミリー企業が存在し、事業の陳腐化を招いている。このことは、イノベーションへの意欲の重要性を示している。

 

 最後に、経営学者ドラッカーは、ファミリービジネスについて、「ファミリー企業生き残りの五つの鉄則」として言及している。

1. 自社で働く一族関係者には、少なくとも一般従業員以上の能力と勤勉さをもとめなければならない。

2. 同族以外の幹部登用を意識的に行い、研究開発、マーケティング、財務など専門知識のある幹部陣容

 を揃える。

3. 経営者の少なくとも一名は同族以外から登用すべきである。

4. 承継の判断を部外者に委ねる。一族およびビジネスとは無関係で中立の立場にあり、信用できる専門

 家を相談相手として確保しておく。

5. 一族がファミリービジネスに貢献する基本姿勢が重要である。

 事業と一族の存続は、一族が事業に貢献するか否かで決まる。

 

「ファミリーはビジネスのためにあり、ビジネスがファミリーのためにあるのではない」(後藤)

 

参考文献

 後藤俊夫(2009)『三代、100年潰れない会社のルール』プレジデント社

 

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■執筆者プロフィール

 クリッジナリティー 代表 米田良夫

 中小企業診断士、ITコーディネータ。

 E-mail:y-yoneda@credgenality.com

「ファミリービジネスについて」の第1回はこちら

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コメント: 1
  • #1

    坂口幸雄 (水曜日, 24 1月 2018)

    大変興味深く読みました。面白い視点です。サラリーマン社長の企業よりも同族企業の方が活性化しています。特に大坂の企業は同族企業が多く、大坂のビジネスにおける役割は極めて大きい。
    特に建設業では顕著であると思います。