IoTを学ぼう:第3回 IoTに最適なネットワークの選定 / 富岡 岳司

「IoTを学ぼう」のシリーズ、第3回となる今回はネットワークのお話です。

 

 前回、例えばセンサからデータを送る場合、1回当たりの送信サイズは小さいものの、1日に何度も送信する事が多く送信元のデバイスの数も多いと言う特徴から携帯電話の通信を用いるのは芳しくないと述べました。

 では、携帯電話通信以外にどのような通信方式(ネットワーク)があり、IoT通信ではどれが好ましいのでしょうか?

 今回もビニールハウス(以降、ハウス)のデータ収集を例にあげて考察してみます。

 

 今回は考察し易いように少し具体的に以下の条件設定をしておきます。

・ハウスの棟数:20棟

・温湿度センサ:ハウス1棟につき10個設置(総数200個)

・土壌センサ:ハウス1棟につき10個設置(総数200個)

・センサデータは各ハウスに1個ずつ設置した機器(IoTデバイス)に一旦蓄える。

・IoTデバイスから管理棟のサーバに30分毎にデータを自動送信する。

・IoTデバイスから送信されるデータサイズは1回あたり数百バイトと微小。

・ハウスから管理棟までは数km離れている。

・センサおよびIoTデバイスはボタン電池により数年間稼働させる。

 

 では、早速、通信方式毎に考察してみましょう。

 (ケーブルを敷くのは非現実的なので全て無線としています)

 

●携帯電話通信(データ通信専用含む移動体通信)

 携帯電話の電波が届くエリアしか使えないと言う制限がありますし、前回述べた通り携帯電話事業者が提供する有償サービスであるため多数のデバイスでの通信となると莫大な料金が発生するため今回の条件では不向きです。

 そもそも条件では、通信機器は固定設置されておりで動かないため、移動体通信を用いる必要性もありません。

 

●無線LAN

 Wi-Fiでお馴染みの無線LANは、パソコンやスマートフォンでストレスなく通信できるほどの高速通信ではありますが、通信距離が100m程度でありハウスから管理棟へ送ることが出来ません。

 また消費電力も乾電池で数時間程度と大きい上に同時接続ノード数(台数)が13と少ないため、センサからIoTデバイスへの送信にも使えません。

 

●Bluetooth

 パソコンとマウス間の通信で知られるようになり、近年はスマートフォンとイヤホンの通信、或いは音源とスピーカーの通信など広く用いられており、通信速度も最大で24Mbpsと高速になりました。

 しかし、通信距離が10m程度と短く、消費電力も乾電池で数十時間程度と大きく同時接続ノード数(台数)も7と少ないためこちらも選択できません。

 

●Bluetooth Low Energy(BLE)

 BLEはBluetoothと言う名がつきますが前述のBluetooth(バージョン3.0以前)とは互換性がありません。

省電力に注力して設計されており、ボタン電池で数年間連続動作が可能です。

 同時接続台数も理論上はほぼ制限がありませんが、通信速度は1Mbps程度であり通信距離も最大300m程です。ハウスから管理棟への送信には使えませんが、センサからIoTデバイスへのデータ送信には使えそうです。

但し、常時接続がベースであるため、センサからデータを送信してないときも電力が消費されてしまいます。

 

●センサネットワーク(IEEE802.15.4)

 小容量・低電力通信向けに標準化されたIEEE802.15.4はセンサネットワークとも呼ばれています。

規格としては2.4GHzを用いるZigBee(ジグビー)と、920MHz帯を用いIEEE802.15.4gで規格化されているWi-SUN(ワイサン)が有名です。ZigBeeは、通信速度は250Kbpsと低速で、通信距離も100m以内と近距離にしか使えませんが、小電力(乾電池で数年間稼働)かつ安価に構成でき、同時接続数も最大で65,536台可能です。従って、センサからIoTデバイスへのデータ送信に適していると言えます。

 一方、スマートメータ(自動メータ検針)向けに規格されたWi-SUNも、通信速度は100Kbps~1Kbps、通信距離は1~2km程度ですが、こちらも乾電池で数年間稼働ができる省電力の規格です。既に東京電力などのスマートメータに採用されており、HEMS(Home Energy Management System:家庭内のエネルギー節約管理システム)として知られています。

 ZigBee同様、センサからIoTデバイスへのデータ送信に適しています。

 これらについては、下記のサイト(図解)が判りやすいのではないでしょうか。

 https://www.renesas.com/ja-jp/media/about/web-magazine/edge/solution/11-hems/img_03.jpg

 

●LPWA

 ここ数年、IoT通信技術として急激に脚光を浴びているのがLPWA(Low Power Wide Area)です。

LPWAとはその名の通り、低消費電力で広い領域をカバーする無線通信技術のことであり、ボタン電池で数年稼働し数km以上の通信が可能です。

 主な規格(サービス)としては、SIGFOXとLoRaWANがあります。

 SIGFOXの転送速度は最大100bpsと極端に低速(ultra narrow band)ですが、通信距離は最大50kmと極めて広範囲であり、1デバイスあたりの通信料も年額100円から(2018年2月時点)と大変安価です。

 LoRaWANの説明は割愛しますが、SIGFOXもLoRaWANも、国内で上記のLPWAが利用できるエリアはまだ大都市圏中心であるものの順次拡大されていく見通しです。従って、利用圏内であれば、センサデータを集約したIoTデバイスから管理棟への定期的な送信にLPWAを用いるのが最適だと思われます。

 

 

まとめ

 今回もビニールハウスでのIoT活用例をネットワークの観点で考察してみましたが、以下におさらいしておきます。

 

 先ず、センサが多い場合は、センサから直接、サーバなどにセンサデータを送るのではなく、比較的近くに設置したIoTデバイスに送信することになります。その際に用いる通信(ネットワーク)は、少量データ通信・省電力・同時多数接続・近距離通信・安価に構築を重要要件として選定する事が肝要です。

 

 次に、IoTデバイスからサーバ(場合によってはクラウド)へのデータ送信に最適なネットワークを選定します。この時に重要になるポイントも、少量データ通信・省電力・同時多数接続・安価な構築ですが、ここでは中長距離通信(広範囲)であることも必要です。

 今のところ、この条件にはLPWAが最有力候補だと思います。

 東京オリンピックでは5G(第5世代通信)の運用が本格的になっていると思われますが、5Gは4G(主にLTE)をベースとしてその上位に付加される形態をとるため、通信事業者との契約、利用料が発生してしまい、今回のような事例には向いていません。(5Gを否定している訳ではありません。エンターテインメントや公共事業等、幅広い分野で必ず必要になる技術・サービスですし、遅延が許されないITSなどでは5Gは不可欠です)

 

 今後も近距離通信やLPWA、等様々な規格が考案・採用されていくと思われます。

 IoTデバイスだけでなく、私たち人間もアンテナを四方八方に張り巡らせ、常に最新の情報をキャッチして最適なネットワークソリューションを採用していかなければならないと思います。

 

 次回は、「IoTのものづくり」の視点からIoTプロタイピングについて語ってみたいと思います。

 

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■執筆者プロフィール

 

富岡 岳司

ITコーディネータ京都 理事

 

ITコーディネータ/IoTプロフェッショナルコーディネータ/MCPCシニアモバイルコンサルタント/文書情報管理士/セキュリティプレゼンター/第1種衛生管理者/電気工事士

 

E-Mail:tomiyan@r9.dion.ne.jp