行列なし、会計なしの「無人コンビニ」は小売業界を変えるか / 藤井 健志

■アマゾン、米に無人のAIコンビニ

 レジのないコンビニAmazon GOがシアトルで1月22日にオープンしました。

 人工知能(AI)の技術を駆使してレジをなくしたコンビニエンスストアです。無人コンビニ店舗アマゾン・ゴーの発表は2016年のトピックでした。「コンピュータービジョン」が店内のカメラを通じて顧客の顔などを認識し、どこで何をしているかを観察します。「センサーフュージョン」は顧客がどの商品を手に取ったのかを認識するのに使われます。そして「ディープラーニング」によってAIが顧客の行動を学習し、高速回転でPDCAを回し、顧客の経験価値をさらに高めていきます。アマゾンはこれらの技術を「Just Walk Out(ただ歩き去るだけ)」と命名しています。

 

 スマートフォンの専用アプリに表示されたQRコードをゲートにかざして入場すれば、欲しいものを棚から取って店の外へ持ち出すだけで自動的に会計が済むシステムです。いろいろなメディアに紹介されていましたので、目にされた方も多いかと存じます。スマホひとつを持って店舗に入るだけで簡単スムーズに商品の決済を可能にする、まるで近未来を描いた映画にでも出て来るような世界が現実に産み出されてきました。

 

■急激に変化する技術とモノづくり

 先日、ITコーディネータ京都の第2回経営セミナーで講師の 抱厚志 株式会社エクス社長の話にもあったのですが、技術は急激に変化しています。5千万人に利用されるまで、電話は75年かかりました。ラジオは38年、テレビは13年かかりました。インターネットはわずか4年でした。ちなみにポケモンGOはたった19日で5千万ユーザーを獲得したと言われています。時代が進むにつれてサービス普及は加速度的に早くなっていますが、Twitterですら2年を要した5千万ユーザーをたった19日でポケモンGOは成し遂げています。

 

■Amazon GOの買い物の仕組み

 Amazon GOの店に入るためには専用のアプリをダウンロードし、アマゾンで登録しているクレジットカードと紐付けます。専用アプリに表示されたQRコードをゲートにかざしスキャニングし、本人認証を行います。その後、商品を自由に手にとて、好きなものをポケットに入れても買い物袋に入れても、店舗を出るだけで自動的に会計が行われます。約170平方メートルの店内には天井におよそ130台以上のカメラそしてマイク、棚に設置されたセンサーがデータ収集を行います。Amazon IDに紐付けられたユーザーは店舗滞在時の行動を全て記録されます。情報筒抜け、ちょっと怖いですね。

 

■わが国での無人店の実証実験

 日本でもJR東日本が昨年11月に大宮駅に特設店舗を設け、無人店の実証実験を行っています。お客は店舗入口のゲート前でICカードSuicaなどを使って入店、天井にあるカメラを通じてAIがその商品を誰が取ったのか把握します。出口までやってくると壁掛けのディスプレイに購入する商品名と合計金額が表示され、Suicaで支払うという仕組みです。

 

 経済産業省と大手コンビニエンスストアが協力し、商品に電子タグをつけて在庫や販売の状況を瞬時に把握できる情報共有システムの実証実験が今月の14日、東京都内で始まりました。コンビニの人手不足解消の切り札になると期待される電子タグ普及の課題を探る目的です。また経産省内のファミマ店舗では、客がカゴをレジに置くと複数の商品の電子タグを瞬時に読み取って支払金額を示す無人レジも準備されました。読み取ったデータはシステムに送られ、メーカーや物流センターでも同時に共有されます。在庫管理の省力化や、生産計画の調整などに活かせると考えてのことです。

 経済産業省は2025年までに、年間1千億個と見込まれる大手コンビニ5社の全商品に電子タグをつけることを目指しています。

 

 これまで小売店では在庫の把握や現場の労力軽減、トレーサビリティ等の観点から無線タグの開発、導入が進んできました。RFIDはまだ単価が高く(1個10円程度)、アパレルなど単価の高いアイテムには良いですが、コンビニなどの低単価の商品にはコスト面の課題が残ります。上記経産省のプロジェクトの目標単価は1円以下です。

 

■世界からレジが消えるか?

 アマゾンの手法はRFIDなどの無線タグを商品の一つひとつに付けるようなやり方ではなく、お客の動きも含めた店舗をまるごと把握する力技で、既存の店舗形態を根底から変革する仕組みとなる可能性が大です。棚に美しく並べられた商品を客が手に取ると、電子マネーがチャージされたスマホ内の「仮想バスケット」から代金が引かれます。棚に戻すとチャージが解かれます。

 買い物を終えた人はレジに並ぶ必要がなく、待たされることがないのは大きなメリットですね。スーパーでレジに並ぶときはいつもどのレジが早そうかなと思案しながら、結局あっちのレジに並べばよかったといつも感じるのですが。

 

 現在のAmazon GOでは商品の品出しをするスタッフや、店内の調理スペースでサンドイッチなどの生鮮食品を作るスタッフが数人いるようですが、今後レジだけでなく、店舗の在庫管理や補充もAIが活用されるようになるでしょう。ディープラーニング型のAIが持つ商品の自動識別機能により、生鮮食品の鮮度管理と商品補充にもそのうちに使われるようになるでしょう。カメラで棚を映した画像から、商品の展示数、売れ数、鮮度切れをリアルタイムで認識させ、そのデータをWifiでプロセスセンターに送信し、店舗別、棚別の補充必要数、補充時刻などが自動計算されます。そして配送車に積み付け、配送するというシステムがもうまもなく現れてくるでしょう。

 AIの組み込まれたサプライチェーンが稼働して、かってアマゾンの日本上陸によって書店の数が減っていったように、さまざまな小売店が店舗の省人化、無人化という流れの中で大きな影響を受けるようになるでしょう。

 

□参考資料

『アマゾンが描く2022年の世界』 田中道昭 著

日本経済新聞 2018.1.23「アマゾン、米に無人のAIコンビニ」

日本経済新聞 2017.11.20「AIでレジ会計、JR東が大宮駅で無人店の実験」

朝日新聞 2018.2.15「在庫や販売、電子タグで管理 コンビニ大手と経産省、実証実験」

アマゾンのAI食料品店『Amazon GO』はあと5年で世界を何色に塗り替えるか?=吉田繁治 ビジネス知識源プレミアム

AmazonGO体験記。宮田拓弥 http://scrum.vc/ja/2018/02/05/amazongo/

 

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■執筆者プロフィール

藤井 健志 Kenji FUJII

藤井コミュニケーション・デザイン研究所 代表

NPO法人ITコーディネータ京都理事

一級建築士・中小企業診断士・ITコーディネータ

ken@fujii-cdl.com

経営とITとデザインを繋いでまちづくりに貢献します。