労働者派遣法、労働契約法改正のインパクト~システム構築、開発における外部人材活用への影響とその対応 / 杉村 麻記子

 システムの構築や開発、運用のプロジェクトにおけるシステムエンジニア(以 下SE)人材は、いわゆる無期の正規雇用社員のみでカバーしているケースは少ない。有期契約社員や外部の派遣人材を頼っているというのが日本のシステム開発現場の実情である。このようなことになった背景には、システム構築・開発には多方面の技術要素が必要となり、一人のSEがカバーできる領域が限定的になってしまう。そのため様々な技術力を有した複数の人材が、一つの案件に関与することや、開発フェーズごとに必要となる人材のスキルや人数が大幅に変わることなどが挙げられる。

 

 外部人材も含めた複雑な雇用形態のIT業界の働き方にインパクトを与える以下の2つの法改正があり、それぞれの適用による影響がこの2018年の4月と10月に発生するのだ。

 ●「労働者派遣法改正(以下派遣法)」(2015年9月30日施行)

 ●「労働契約法改正(以下労契法)」(2013年4月1日施行)

 

 それぞれの法改正の内容や対応については、社労士などの専門家にご相談いただくべきものだが、本稿では、それぞれの改正のポイントと外部人材を受け入れているシステム開発会社やITベンダーが注意すべき点を紹介する。

 

1. 派遣法改正のポイント

 派遣法改正の内容から、ITベンダーが影響を受けそうなポイントは以下の通りとなる。

 

1) 労働者派遣事業の許可制への一本化

 厚生労働大臣から許可を受けていない派遣事業主からの派遣社員の受入れが、2018年4月より原則禁止となる。かつての届出事業者では派遣ができないため、派遣を受け入れているITベンダーは、契約をしている派遣元が新たな基準に基づく許可を受けているかの確認が必要となる。

 

2) 期間限定ルールが新たに設定

 同一の有期雇用派遣社員を、同一の課組織単位で受け入れをできる期間は3年が限界となる。(ただし、無期雇用の派遣社員や、60歳以上の派遣労働者は除外される。)

 このルールは、2018年10月以降に発生するため、その時点で同じ課で同じ業務をしている場合は、3年を超えて従事させることができなくなる。その派遣社員が有期契約の場合は、別の課に異動してもらうか、別の派遣社員を受け入れることになる。

 

3) 雇用安定措置の実施義務

 有期派遣社員が同一の課単位に3年間継続して派遣される場合、派遣元は

 -派遣先への直雇用(派遣先がその派遣社員を社員として受け入れること)

 -派遣元での無期雇用化

 -新たな派遣先の提供

 など雇用の継続を図るための措置を講ずる義務が発生する。これに伴い、派遣社員を受け入れる側は、これらの影響に対する対応が迫られる。

 例えば、対象となる派遣社員が2018年9月末までに完結しない長期にわたるプロジェクトに参画している場合、対応が遅れると10月からは派遣の受け入れがでないという事態に陥るリスクがある。このような事態を避けるために、早いタイミングで直雇用での受入れを検討したり、派遣先で無期雇用となる場合は、派遣単価のアップなど派遣元との折衝が必要となる。

 

 またすでに2015年10月1日から施行されている「労働契約申込みみなし制度」により、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、派遣労働者の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなされる。例えば、システム開発の現場の問題として取り扱われる「偽装請負」の状態となった場合には、直雇用の申し込みをしたものとみなされることになるため、これまで通り違反行為がないかなどの確認が重要となる。

 

2. 労契法改正のポイント

  労契法改正の内容から、ITベンダーが影響を受けそうなポイントは以下の通<りとなる。

 

1) 無期労働契約への転換ルール

 自社で有期の契約社員がいる場合、派遣社員が派遣元で有期労働契約を結んでいる場合は、反復更新が通算で5年を超えた場合、有期労働者の申し込みにより無期労働契約に転換となるルールである。

 このルールは、2018年4月1日以降で5年間を超えた場合に影響が発生する。

 自社で有期の契約社員を雇用する場合と有期雇用契約の派遣社員の受け入れている場合は、この無期化へのルールに伴い、有期契約社員の正社員としての雇用や、派遣元側の育成費や交通費の増加に伴う派遣単価の値上げ、派遣期間の長期雇用などの依頼が派遣会社から要求への対応が必要だ。自社での直雇用も含、受け入れ側としてもどのように対処するのか ? それぞれの人材に適した対応を検<討していくことになる。

 

2) 雇止め法理の条文への追加

 契約の期間満了により雇止めをする場合でも、労働者が次の契約の更新に期待する合理的な理由がある場合や、既に契約が有期ではなく無期と同視できるような場合は、雇止めはできないというものである。これも正規雇用の促進を行う目的で制定された内容となるが、派遣元側でルール適用前に契約解除を通告されるなど、意図しないタイミングでの派遣契約終了が発生する可能性がある。派遣社員や受け入れ側の意思とは別のところで、予定していた人材を受け入れられなくなるリスクにどう対処するのかについても考慮すべきである。

 

3. まとめ

 簡単に派遣法、労契法の改正ポイントを列挙した。派遣社員を受け入れている企業では、その管理者やプロジェクトマネージャーが、まずは各派遣メンバーの状況を把握することが重要となる。

 ・派遣社員が有期雇用か、無期雇用か ?

 ・有期雇用の場合は何年間継続して契約をしているか ?

 ・自社としてその契約社員をいつまで受け入れを継続する予定か ?

 ・その派遣社員は今後どのような契約形態を考えているのか ?(フリーランス派 ? 正社員派 ?)

 ・派遣元会社が無期化に伴い、派遣単価の引き上げや派遣契約期間の長期化などどのようなことを考えているのか ?

 

 このように現在の派遣人材や個別のシステム開発案件の状況を整理したうえで外部人材をどのように活用していくか ? 2018年4月と10月のタイミングまでに対策を検討、実施していくことが必要となる。

 

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■執筆者プロフィール

 

杉村麻記子

ITコーディネータ・中小企業診断士