夕方、退社でオフィスビルの一階から外にでると、スーツ姿のおじさん達、一部OLと思しき女性が数十人、ビルの前で、スマフォの画面に集中して、スワイプしています。2016年にサービスが開始された「ポケモンGO」でポケモンの捕獲中です。はては、私の住んでいる最寄り駅でも、いつもはまばらな人通りなのが、親子連れも含め、いつもと違う人だかりで、みんなスマフォに集中しています。
「ポケモンGO」は、ポケモンキャラクターと拡張現実(AR) を組み合わせたスマフォのGPS位置機能を利用したポケモンの捕獲や戦闘をするゲームです。
ARと同じような技術のVR(仮想現実)というのもあります。これは、コンピュータ上で仮想的な環境を作りだし、あたかもそこに存在するかのように体験できる技術です。
ポケモンGOのアプリのサービスが開始したころの日経新聞の記事では、その年はVR・AR元年として株式市場の関心を集めており、用途はものづくりなどに広がり、市場規模の拡大も見込まれるとあります。
私がVRについて接したのは、1990年代の初めのころで、構築に携わったシステムで作ったCAD用モデルのデータベースをこの技術で利用したのが始まりです。
当時のVRを構成する機器構成は、ヘッドマウントディスプレイ、画像処理用ワークステーション(コンピュータ)等で、なめらかな動きとはいえず、画像も立体的な絵という感じでした。
その時、私がこの技術を紹介する機会があり、以下のことを述べています。
ビジネスとしての取組として、
1. アミューズメント施設への導入で、仮想の世界を再現し、自由に動き回る
2. 自社の製品で構成された部屋を仮想環境につくり顧客への販売促進プレゼンテーションとして
使用
3. 実際にいけない宇宙空間や原子炉などでの作業シミュレーション
4. 手術前の予備実験を本物同様の画像で行う
5. 建物の内部空間をつくりその中を移動して、天井の高さを変えたりして適切な設計を可能にする
今では、画像処理の高速化、高精細な表示装置、軽量化で、よりスムーズな動き、リアルな映像でそのすべてが現実化しています。
続いて、VR、ARに続いてMRを紹介したいと思います。
MRとは、複合現実といわれ、現実世界と仮想世界を融合させた映像を作り出す技術で、具体的にはシースルー型のメガネに映像を投影し、あたかも現実世界にホログラム(三次元映像)があらわれているような感覚を味うことができます。
また、ユーザーの指でホログラムが動かせるなど、インタラクティブな操作が可能となっています。現実空間と仮想空間を混合し、現実のものと仮想なものがリアルタイムで影響しあう新たな空間を構築する技術全般を指します。
つまり、ARは、現実世界と仮想物体を重ね合わせる、VRは現実世界をすべて捨て去り仮想物体で表現する、MRは、壁・床などの空間を現実世界として認識し仮想物体を重ね合わせる技術です。
MRの事例としては、
1. 飛行機のコクピットのホログラム上で映像・音声ガイダンスに従い、操縦のシミュレー
ションをする。フライトシュミレータがなくとも、体を動かした効果的な学習が可能。
2. エンジンの構造をホログラム化することにより、航空機の運航していない時でしかでき
なかったメンテナンス訓練が可能。
3. 建造物の設計データ(CAD)をMR機器上にとりこみ、設計情報をホログラムで可視化し、
遠隔地との共有、実際の建築現場でリアルスケールでのシミュレーションが可能。
4. エレベータのメンテナンス作業において、ハンズフリーで過去のメンテナンス情報や手順の
シミュレーションを参照したり、遠隔地からの熟練者のサポートが可能。
5. 患者のMRIデータをホログラム化し、手術前に詳細な計画と訓練が可能。患者への経過説明
にもホログラムを利用し、効果的な情報共有が可能。
MRの事例は、マイクロソフトホロレンズでユーチューブを検索するとでてきます。実際の動画でみれば実感がわきます。
ただし、アプリケーションの開発となると3DのCGデザインをする場合、CAD、3Dモデリングツール等の専門知識が必要で敷居は高いといえます。
また、3Dアプリケーションは高画質の動画再生、高解像度のグラフィック表示などを行うとデバイスの負荷が高くなりがちで、デバイスの処理性能に合わせてコンテンツを調整する必要があります。
そして、文字入力が不便で、文字入力のない業務をターゲットとし、ユーザーに極力ストレスを与えないユーザーインターフェース設計が重要と思われます。
今後は、使い込むことで、ノウハウを収集し、新たなユーザーインターフェースとしてユーザー業務に活用されることになると思われます。
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■執筆者プロフィール
西田 則夫(Nishida Norio)
情報処理プロジェクトマネジャー、ITコーディネータ
マネジメントの経験を顧客満足の向上に役立てたいと思います。
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