健康経営を考える その1 / 松井 宏次

3月も半ば、梅、桃、桜と、暖かさとともに開く花も移ります。そうそう、この時期、木蓮の花もどこかたくましい白さを見せてくれますね。春です。

 

さて、今回は「健康経営」について取り上げます。

 

人口オーナス期という用語があります。その国の人口において、生産年齢人口(通常15歳以上65歳未満)の割合が小さく、老人や子供の割合が大きい状態を指して人口オーナス期と言い、その逆の状態が人口ボーナス期です。

日本のボーナス期は、1950年から1970年頃。その後、1990年頃からがオーナス期とされているようです。また、今後、国内の生産年齢の割合の縮小がますます進むと予想されていることは、ご存知の通りです。

この人口オーナス期に、企業としての適切な取り組みとして健康経営があります。

健康経営は、人手不足問題の解決や国民医療費の適正化に役立つという社会的な面からも求められていますが、企業自体にとって従業員の健康に配慮することが収益向上に繋がるというメリットがあることも確かです。企業経営の質そのものも向上します。

 

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に実践する手法が「健康経営」です。

 

■守りと攻めの健康経営

健康経営には「守り」と「攻め」があり、その両方のバランスが大切です。

 

 守りの健康経営

  リスクマネジメント

    職場における労働者の安全と健康の確保。

    起き得るリスクの想定と、その事前の対処。

  法令遵守

    労働基準法、労働安全衛生法、従業員の健康管理に関連する法令の把握ならびに遵守。

  安全配慮義務

    作業環境整備義務、衛生教育実施義務、適正労働条件措置義務、健康管理義務、

    適正労働配置義務など。

  企業負担の軽減

    従業員の健康リスク・医療費の低減

 

 攻めの健康経営

  プレゼンティーイズム*1の軽減

    作業効率化および生産性の向上、対外的な評価、社会的な評価の向上、企業ブランド

    の確立やイメージの向上などとともに、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズ

    ムによる労働損失を予防する対策を行う。

  生産性向上

    ワークエンゲージメント*2

    職場の活性化

    従業員の定着化

  社会的評価と企業イメージの向上

    顕彰制度等による社会的な評価の向上

    企業イメージ向上による、質の高い人材採用や従業員の定着

 

■具体的な取り組みは健康宣言から

健康経営の取り組みは、「健康宣言」から始めます。これは、経営者自身が、自社が健康経営に取り組むこと、なぜ、そのことが必要だと考えているのか、それを経営者自身の言葉で従業員に語ることです。経営者のコミットメント(約束)です。なお、健康宣言をするに際し、事前に、自社の現状を概ね把握しておくことが必要です。

 

また、京都府下では、協会けんぽ京都支部が、健康経営に取り組むことを宣言した加入事業所を認定しサポートしています。

「京(きょう)から取り組む健康事業所宣言」

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/kyoto/cat060/jigyosyosengen

 

■スモールチェンジ活動の推進

健康経営への取り組みかたのひとつに、スモールチェンジ活動があります。これは、大企業で無くともできるコストのかからない取り組みから推進していこうというものです。

次のような例があります。

 

 健康診断に対する取り組み

  健康診断の受診を推進するためのポスターを掲示する

  健診結果が「要治療」など再検査が必要な人に受診をすすめる

 健康づくりのための社内環境の整備

  事業所に健康測定機器(血圧計・体温計・体重計など)を設置する

  定期的(月1回など)にミーティング等で”健康づくり”に関する話し合いの場を設ける

 食生活改善

  食事に関するリーフレットを提供する

  食生活改善キャンペーンを行う(たとえば「ノンオイルドレッシングを使おう」など

  一言をいれるキャンペーン)

 運動の増進

  ウォーキング強化週間・月間を設定する。

  運動を増進する企画をし、実践に応じた報酬(表彰・賞品など)を出す

 禁煙対策

  屋外に喫煙場所を設置する

  禁煙を推進するためのポスターを掲示する

 心の健康づくり

  管理職などが、毎日、従業員に声がけを行う

 

健康増進や労働衛生などの取り組みにかかる支出は「コスト」ではなく経営的な「投資」だと考えられるようになりました。

生産性向上の鍵を握る経営手法として、注目されています。

 

*1 プレゼンティーイズム

病気や体調不良などにより従業員が会社を欠勤することを「アブセンティーイズムabsenteeism 病欠」という。このabsenteeismに、present(出席)を組み合わせた造語が「プレゼンティーイズム presenteeism 疾病就業 」。出社しているのにもかかわらず,心身の状態の悪さから生産性がなかなか上がらない状態を言う。従来は、アブセンティーイズムだけが労務管理上の問題として取り上げられてきたが、プレゼンティーイズムによる労働損失のほうがより大きいことが研究結果でも示されている。

 

*2 ワーク・エンゲイジメント

定義:「仕事に関連するポジ ティブで充実した心理状態であり,活力,熱意,没頭によって特徴づけられる。エンゲイジメントは,特定の対象,出来事,個人,行動などに向けられた一時的な状態ではなく,仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」

活力「仕事から活力を得ていきいきとしている」、熱意「仕事に誇りややりがいを感じている」、没頭「仕事に熱心に取り組んでいる」の三つがそろった、積極的で充実した心理状態を言う。

ワーク・エンゲイジメントの高い人は、ストレスが低くなる一方、仕事の満足度やパフォーマンスが向上するとされている。

 

参考文献:健康経営アドバイザーテキスト2018

 

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  ■執筆者プロフィール

   松井 宏次(まつい ひろつぐ)

   ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター

   焚き火倶楽部京都 ファウンダー