大事なのはユーザー体験 / 積 高之

私はSNSを中心にしたITマーケティングのコンサルタントをしています。

一般的にこの分野は、消費者を相手にするBtoC企業に対してサービスを提供することが多かったのですが、最近顕著に増えてきているのが「クリニックや病院」「学校」「NPOなどの団体」というそもそも営利を目的としない企業のケースと、BtoB業態で相手が消費者ではないケースです。

 

これは、企業なり団体のトップが、一般の生活者が自分たちを知るきっかけがネットになっていることと、企業とのコミュケーションもネットでのやり取りになってきていることに、ようやく気づき始めていることが原因だと思っています。

 

スマートフォン(以下携帯と表現します。読者には違和感がある人もいるでしょうが、もう「携帯」はスマホのことです)が普及しはじめ、SNSが流行り始めて5年ほど経過した今、生活者の多くは、まず携帯で知り、携帯で調べ、そして連絡を取ったり買い物をしたり何かに申し込んだりします。PC時代とは比べ物にならないスピードと範囲で「ネットからの流入」が増えているのです。

 

そんな中で、この数年間は企業や団体の対応が遅れていました。小売店や消費者を相手にしているサービスなどでも、「携帯で見られないサイト」「電話でしか取れない連絡手段」「使いにくいフォーム」をそのままにしていて、「最近新規のお客様がこないなぁ」と悩んでいたりしました。店の入り口をわかりにくくして、鍵をかけ、電話番号もなく連絡手段は伝書鳩という店と想像してみてください。そんな店に新規客が来るはずもありません。

 

BtoCでそれですから、BtoB企業のネット対応はひどいものです。

「うちは企業相手なので、ホームページなどはどうでもいい」と言う経営者の方に今でも出会うことがあり絶句してしまいますが、BtoBであれ何であれ最初に知るのは公式のウェブサイトです。サイトがきちんと整備されてないのは、上記のお店と同じ状態です。最初にウェブサイトを見るのは携帯あることが多く、特にリクルーティングの目的ではほとんどが携帯で参照されていることに気づくべきです。

 

まず自社のサイトを携帯でみてください。(あ、2019年の今、ガラケーを使っている経営者の方がいたら、経営の一線から身を引かれることをお勧めします。まったく今の社会ニーズが見えないのだと思います。)

 

携帯でサイトを見たとき、そのままの大きさで文字は見えていますか ? 

もし文字が読みにくい部分があったとして、担当者にそれを指摘したら「うちのサイトはレスポンシブですから大丈夫です」と言うはずです。レスポンシブデザインとは、一つのサイトデザインをPCでも携帯でも見られるように設計されているサイトのことです。たしかにレイアウトは変わるかも知れませんが、正確につくられていないとバナーなどの文字はそのままの大きさで表示されます。

 

PCの画面用にデザインされたパーツを携帯で見ても見やすいはずはありません。

今まさにご自身が「読みにくい」と感じたはずなのに、担当者は「うちは大丈夫」と言います。大丈夫ははずないですよね?

 

重要な点はここです。

 

ITの世界ではこれまで「技術者や技術を知っている人が正しく、ユーザーは無知なのだから、学習して技術についていかなければいけない」を考えている人たちが主流でした。だから「うちはレスポンシブだから正しく、文字が読めないユーザーは拡大するなどの努力をするべきだ」と半ば本気で考えているような事態が生じてしまっているのです。

 

そんなバカな話はなく、ユーザーにはいくらでも楽な選択肢があり、しかもどんどん便利なサイトやサービスが生まれ、甘やかされ続けているのです。

たとえばその企業のサイトが見づらく使いにくければ、一瞬で離脱し他の企業のサイトを見ることにします。価格や情報を比較するサイトもいくつもあり、ネットの中でその企業の評価はほぼ決まっています。検索の上位結果を求めるSEO も、以前のように社外の業者がどうこうできるものでなく1位でないとほぼ意味をなしません。

 

UXと言う言葉があります。User eXperience たとえば企業だとするとそのユーザーが最初に何で企業のことを知り、そのあと何をして、最終的にどうするのか ? そして購入なり申し込んだり体験したりしたあと、その企業のことを誰にどう話すのか、どんな記憶を持ってもらうべきなのか。その体験のことをUXと言います。

UXを設計すること、それを常に改善し続けることが重要なのです。

 

あなたが企業経営者であると仮定します。

その企業を初めはどうやって知りますか ? 

何か特殊なニーズに応えるもので、調べてから買うようなものでした、Google検索でしょうね。そこで必要なキーワードを入れてみて3番目までに入っていますか ? 

年齢によっては「検索」はGoogleでないことも多いです。TwitterやInstagram、YouTubeで、企業の名前は出てきますか ? 

 

サイトを見ましょう。携帯ですべての文字が読め、クリックしたのに動作しなかったり、どこにいるかわからないような状態にはなりませんか ? 

購入ボタンや連絡など、最終目的はすぐに見つかりますか ? 

電話で話すような内容ですか ? 

いつもLINEで会話しているのでチャットのほうが便利では ?

もう、固定電話に電話をかけることに抵抗があり、かかってきても出ない人はたくさんいます。

折り返して携帯にかけていませんか ? 

 

このように「企業側目線」でなく「ユーザー目線」でサイトとその前後を設計していくことが、今のマーケティングには大変重要になってきているのです。

 

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■執筆者プロフィール

 

積 高之

seki@sekioffice.jp

 

株式会社リリク シニアコンサルタント

京都積事務所代表

ITコーディネータ・上級SNSエキスパート・上級ウェブ解析士

大手子供服SPA,酒販小売業チェーン、保険代理店などの顧問・コンサルタントを歴任。