介護支援をITが救う ! / 下村 敏和

 過日、インテックス大阪にて開催された第5回介護&看護EXPO(2019年2月20日~22日)の会場において、ケアコンCARECON「スマホで介護手順の見える化アプリ」の展示ブースで2日間説明員として立ち会いました。大変な盛況ぶりで、介護事業者、その関連事業の方々そして海外からも多くの介護事業関係者が来られました。介護関連のシステムサポートを通じて、多くのことを考えさせられましたので、少し整理したいと思います。

 

■経営とITの橋渡し

 昨年の梅雨明けの頃に、とあるインキュベーションマネージャーからメールが入り、あるSOHO入居の介護支援システムのベンチャー起業家がITシステムをIT企業に委託して構築しようとする中でITに関して素人なので、構築中のシステムに問題あるかどうか判断できないため支援してほしいとの依頼でした。その後、ご縁あって支援することになり、最初の状況ヒアリングでいくつかの問題が見えてきました。

 1. 開発物件の納入時期はあるが、プロジェクトの工程表がない。

 2. アプリケーション以外の成果物が明確になっていない。

 3. 契約書のたたき台はあるが、契約に至っていない。

 4. ソフトウエア開発に関する発明考案等の工業所有権や著作権の扱いが明確になっていない。

 5. クラウドシステムの運用他、十分に把握できていない。

上記の明確になっていないというのは、合意できていないというのが正しいかもしれません。

 これら項目について介護に精通したベンチャー起業家とITベンダーとの間でうまく意思疎通ができていないため、ITコーディネータの立場で一つ一つ解決していきました。また、成果物の確認と2次開発要求仕様書の書き方指導など、経営とITの橋渡し役を果たし、上記展示会にこぎつけました。

 

■介護手順支援システムとは

 高齢化社会が進む中で介護の需要は伸び続ける一方、介護の人材不足は大きな社会問題となっています。介護職員必要数2020年216万人に対して13万人不足、2025年245万人に対して34万人不足すると予測されています。

 いまや介護業界の生産性向上は喫緊の課題となっており、介護人材を増やすだけでなく、ITの導入による効率化によって人手不足を補うことも重要な課題となっています。

 さて、居宅介護支援事業において、現在ヘルパーさんは自宅からサービス提供事業所に立ち寄り、当日巡回する被介護者の介護手順書を受け取り、被介護者宅を巡回します。ヘルパーさんは各被介護者ごとの手順書(例えば、入浴、食事、全身清拭、バイタルチェック体温、血圧測定などの作業の詳細)に基づいて作業した後、介護記録、活動記録を手書きで記入し、複写をサービス提供事業所に持ち帰り、その日のサービス実施記録書をまとめてから帰宅になります。

 今回のシステムでは、事前にクラウド上にアップされた作業手順書を被介護者とヘルパーさんの名札のQRコードをそれぞれスマホで読み取ることによって、被介護者ごとの最新の介護手順書をスマホにダウンロードすることが可能となります。ヘルパーさんはスマホに表示された介護手順に沿って作業をし、完了入力をすることで被介護者ごとのサービス実施記録書(PDF)がクラウド上に自動作成されます。そしてその記録書をサービス提供事業所から閲覧可能となり、さらにはご家族にも閲覧できて安心していただけます。

 このようなシステムにより、ヘルパーさんの直行直帰を実現し、働き方改革にもなり、ヘルパーさんが交替になった時なども「ミス・ロス・モレ」なくサービス提供が可能となります。サービス事業提供者、ヘルパーさんそして利用者やご家族にとっても作業の見える化による適切な分業化や作業品質の向上そして介護の生産性向上を享受することができます。

 

■介護のIT化の遅れ

 介護事業者は、一部の大企業でIT活用を進めつつあるものの、ほとんどが中小企業でIT投資やそれに割く人員のゆとりもなく、他の業種と比してIT化が大きく遅れているように思います。それと言うのも介護業界とIT業界の交流も少なく、介護業界に精通したIT企業やITエンジニアが極端に少ないといいう事情があるようです。労働集約型でITの適用範囲も限られるようですが、ひとつは介護記録や介護報酬の請求などのデータ整理のための事務作業的要素のものと、もう一つは介護の現場そのもので使われるヘルパーさんの日程計画や今回のような介護手順書システムなどが考えられます。この手順書システムでは、蓄えられた被介護者ごとのデータをケアマネジャーが分析してアセスメント(評価)できる定量的、定性的な介護状態資料も提供可能になっています。将来的にはAIを活用したケアプランの作成も可能になるでしょう。また、現場では現在普及してきているIoTを活用した利用者さんの見守り支援システムに加えて、腰痛予防のロボットスーツやベッドからの上げ下ろしの介護ロボット活用など費用問題と実用化課題はまだ残りますが、期待されるところが大きいです。

 今回のサポートを通じて、この介護分野へのIT化の促進が如何に重要であるか再認識しました。

 

(参考文献)

・シルバー産業新聞 2018.6.10

・「介護のIT化」はまだ準備の前段階、介護ITエンジニアという職種の確立に光明を見出す 株式会社ビーブリッド 渡部貢生著

 <https://mewcket.com/bibrid/feed/57> 

 

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■執筆者プロフィール

 ヒーリング テクノロジー ラボ 代表 下村 敏和

 ITコーディネータ&インストラクター

 電話番号:075-200-2701

 e-mail:t-shimomura@zeus.eonet.ne.jp