メガネ業界のビジネスモデルを考える / 中川 普巳重

「EYE LOVE LOVE 愛眼 目と メガネと コンタクト 愛眼ビルは 瞳のデパート~」黄色い愛眼ビルが画面全面に投影されたCMをご存知でしょうか ? このフレーズはいまだに耳に残っています。もしかすると福岡ローカル版かもしれません。(気になる方はYouTubeで愛眼CMと検索してみてください。)メガネと言えば、愛眼株式会社、本社は大阪市天王寺です。筆者のメガネ歴は37年、この度、遠近両用メガネデビューしました。これまでいったい何本のメガネを作ったのでしょうか。今日はメガネ業界のビジネスモデル変遷について考えてみたいと思います。

 メガネは視力矯正が必要になって作るもの。生活スタイルや矯正内容に応じてコンタクトレンズと比較購買されるものです。初めてメガネを作った時には、フレームのデザイン、レンズの特徴、価格帯ぐらいが検討要素でした。その後、フレームの素材も多様化し折れにくく曲がる素材が出てきて、レンズも進化し遠近両用の境目がなく薄くなってきました。視力検査も自動で早く正確になり、スポーツ選手向け等に個人の顔に合わせたオーダーメイドフレームで装着感もアップしました。以下、筆者のメガネ歴と合わせて業界を振り返ってみたいと思います。

  • 視力矯正の必要性からの購入されていた時代。
  • 購買時の検討要素はフレーム、レンズ、価格帯の組み合わせからなる。
  • 装着感、機能性等フレームやレンズが技術的に進化、視力検査、似合うフレームの提案、生活スタイルに応じたフレームの素材やレンズ性能の提案等の接客品質も向上。
  • ←ベテランのスタッフに担当してもらいたいニーズあり。店頭に数ある中から似合うフレームを提案してくれるセンス。顔に合わせたかけ心地の最終調整のスキル(耳にかける部分の最終曲げ加工、鼻あて部の角度調整等)等、俗人的な要素がサービス品質を左右しており、人材育成、いかに長く勤めてもらうかが課題になっていたと思われる。
  • 早い(仕上がり40分等)、ファッション性が高い、リーズナブルな価格帯というこれまでの常識を覆すビジネスモデルが登場。ファッションアイテムとして伊達メガネを作る人、洋服に合わせて複数のフレームを持つ人、日常用・運転用・パソコンワーク用・家での生活用・度入りサングラス等用途に合わせて何本も作る人等、もはや視力矯正のための単なるツールではなくなりました。リーズナブルな価格であること、ファッション性の高いフレームも多いこともあり、ちょっと個性的なフレームも楽しめるようになりました。
  • そして、スマホやパソコンの普及の流れを受けて、ブルーライトカットメガネ、PCメガネが流行りだします。就職したころから電磁波カットのエプロンやメガネはありましたが、一般化したのはビジネスモデルが大きく変わった以降でしょうか。
  • 子ども用の紫外線カットメガネも種類が増えました。
  • 日本らしく、職人による1本1本手仕事で仕上げる高品質なフレーム、「鯖江ブランド」が注目されるようになりました。一度は手にしたい日本製高級ブランドとしてのブランディング成功事例でしょう。
  • そして、細かなネイルアートが流行り、ビーズやスワロフスキーを使ったアクセサリーやUVレジンでアクセサリーを作る人が増え、細かいものを大きく鮮明に見たい人に指示され一気にブレイクしたのがあの「ハズキルーペ」ではないでしょうか。これはいわゆるルーペ(拡大鏡)であり、虫眼鏡タイプの天眼鏡、メガネ型のルーペのような形状のハズキルーペの前身の「ペアルーペ」などがあります。視力矯正メガネの上からかけるタイプ、メガネのレンズの上にはさみ止めするレンズのみのタイプなどがあります。母が年と共に細かいものが見えにくくなり趣味の戸塚式刺しゅうなど細かい作業をする際に、メガネタイプのルーペを使っていました。つまり、視力を調整する機能を補助する老眼鏡ではなくルーペなのですが、老眼鏡のような使い方をする人が多く売れているようです。
  • いかに視力矯正以外の目的でメガネを使ってもらうか、使う人にはいかに1本でも多く買ってもらうかで各社、技術的に、デザイン的に、プロモーション的に頑張っています。
  • どんどん目が悪くなって、メガネを作り変えている。レンズがあっていないのか頭痛、肩こりなど目から来る体調不良が気になる。そんな課題を解決するために、目に優しい、視力が良くなる度数調整といったアプローチを提案する、視力調整力を高める目の体操を指導するお店もちらほら出てきました。レンズで矯正しすぎない、見せすぎない、自分で見ようとする力も鍛えていくレンズ選びのお店は、メガネ業界の常識を逆行するようなアプローチではあるが、目に関する悩みが解消し目が楽に体が楽になることによる満足度は非常に高く、顧客の囲い込み力としては確実だと思われます。
  • 2019年4月1日より日本初となる定額制メガネコーデ&かけかえサービス「NINAL(ニナル)」がメガネの田中にてスタートしました。大人向けの「ニナル」は月額2,100円(税抜)。3年間の契約期間内で、フレーム3本・レンズ3組を自由に交換できます。3万円台のハイクラスのフレームを中心に、サングラスを含む300種類以上の中から選ぶことができるようです。3年間で視力が変わる、日常仕事用、休日用、度入りサングラスといった使い分けでもいいでしょうし、度が変わった時にも便利そうですね。子供コースもあるので、度の変わりやすい、壊しやすい子供受けの方が支持されるかもしれませんね。アパレル業界でも定額制で事前に好みをエントリーするとプロコーディネートの服が送られてきて、いろいろ着て気に入ったものがあれば購入もできる仕組みがあります。
  • コンタクトレンズは破損・紛失のリスクがあるため、早くから月額定額制のサービスがありました。メガネにも定額制が導入され今後ますますメガネに対する価値観が多様化しそうです。
  • とにかく世の中にモノがあふれています。自分に合うものを探すのは一苦労。視力矯正といえども本当に自分に合うものに出会えるかどうかは確実ではありません。自分らしく、自分に合うものを、納得のいく価格で、心地よいコミュニケーションの中で手に入れられたらいいですね。
  • 「必要だから買う」時代からは大きく変化していると感じるメガネ業界、アパレル、モバイルツール等の業界変遷と合わせて、消費者の価値観、購買行動の変化をウォッチすると面白そうです。メガネを手にしたことのない方にも、愛用されている方にも、メガネ業界の変遷とモデルの変化を通じて時代の変化を感じていただけたら幸いです。

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■執筆者プロフィール

 

中川 普巳重(なかがわ ふみえ)

福岡大学 産学官連携センター 産学官連携コーディネーター 客員教授

地域連携センター コーディネーター

中小企業診断士、ITコーディネータ、(財)生涯学習開発団体認定コーチ

Eメール  fumie-na@k4.dion.ne.jp