「職場の安全衛生管理を考える」の第3弾は健康診断についてです。
健康診断、労働安全衛生法66条では
「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」
と定められており、会社は労働者に健康診断を行う義務があります。
従業員が1人でもいる場合は、個人事業や中小企業でも、規模の大小に関係なく健康診断を受診させなければなりません。
実施しなければ法律違反となります。
また健康診断の費用は会社が負担することにもなっています。
一方で労働者は会社が行う健康診断を受診する義務があります。
この健康診断は、正社員および、更新により1年以上働いている(或いは1年以上働くことが予定されている)契約社員が対象です。
パート・アルバイトであっても、その会社で同じ業務に従事している者が社員の1週間の所定労働時間数の4分の3以上働いている場合は対象になります。
労働安全衛生法で規定されている健康診断は、一般的には雇入時と年1回の定期健康診断ですが、特定業務従事者は半年以内毎に定期健康診断を受診することが決められています。
特定業務とは、以下になります。
1) 多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
2) 多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務
3) ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
4) 土石、獣毛等のじんあいまたは粉末を著しく悲惨する場所における業務
5) 異常気圧下における業務
6) さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
7) 重量物の取り扱い等重激な業務
8) ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
9) 坑内における業務
10) 深夜業を含む業務
11) 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
12) 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アリニンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気、または粉じんを発散する場所における業務
13) 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
14) その他厚生労働大臣が定める業務
沢山ありますが、大半はエンジニアリング関連事業の業務であり、「私は該当しない」と思われる方が多いのではないでしょうか。
しかし、見落とされがちなのがあります。
10) 深夜業を含む業務 です。
深夜業とは午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域または期間については午後11時から午前6時まで)の間における労働のことをいいます。
この「深夜業を含む業務」とは、看護師のように交替勤務で深夜に従事する方だけでなく、厚生労働省令の基準である「6か月を平均して1か月当たり4回以上深夜業に従事した者」も対象になります。
例えばシステムトラブル対応や、月末会計処理などで深夜残業の回数が増えて、結果的に午後10時以降の勤務が半年の間で24回に達したのであれば、その半年間に定期健康診断を受診しておかなければならなかったと言うことです。
「毎週1回は午後10時以降も働いているよ」と言う方は、紛れもなく特定業務従事者であり、半年以内毎に定期健康診断を受診しなければなりません。
深夜業務の回数も意識しながら、事業主の方は定期健康診断の実施を、労働者は定期健康診断の受診を必ず行っていきましょう。
■執筆者プロフィール
富岡 岳司
ITコーディネータ京都 理事
ITコーディネータ/IoTプロフェッショナルコーディネータ/MCPCシニアモバイルコンサルタント/文書情報管理士/第ニ種電気工事士/セキュリティプレゼンター/第一級陸上特殊無線技士/第一種衛生管理者
e-mail:tomiyan@r9.dion.ne.jp
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