人生100年時代における中高年のサバイバル戦略 / 坂口 幸雄

 「人生100年時代」という言葉をよく目にするようになった。2016年にロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンの著作「人生100年時代の人生戦略」という本が日本でベストセラーとなったからだ。奇しくも同じ時期に、小泉進次郎など若手議員が人生100年時代の社会保障を提言した。日本政府も人生100年時代構想会議を立上げ、平均寿命が短かった時代の現在の制度で、人生100年時代の現実に合わなくなった部分を改革しようとしている。しかし私は「人生100年時代」の到来と言われても、まだピンと来ない。

 

 ITコーディネータは「企業のサバイバル戦略」を立案するのが役目だが、中高年は人生100年時代の環境変化に対して、自分自身のサバイバル戦略を立案・実践することが必要となっている。ここで、人生100年時代のイメージを明確にするために2065年の年代別の人口構成を確認してみよう(以下のリンク先)。予想通り、日本は年寄りばかりで子供が異常に少ない国になるようだ。

 

・2065年の人口ピラミッド、国立社会保障・人口問題研究所

 http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/2065.png

 

 人生100年時代が到来したとしても、長寿社会の到来と楽観的に喜んでばかりはいられない。残念ながら、良いこと・楽しいことばかりではなく、満足して幸せに暮らすために1つ1つ解決していかなければならない、悪いこと・心配なことが多い。

 

 ここで中高年の視点で悪いこと・心配なことを3点挙げてみた。最低でもこの3点は解決する必要がある。それは「高齢者の働き方」、「老後の資金計画や年金」、「老後の病気や死に方」である。

 

1. 高齢者の働き方

 寿命が100歳まで延長すると、60歳で定年を迎えた人は心も体も元気だし、残りの人生はまだ40年も残っている。そうなると金銭的理由や生き甲斐の維持のために、多くの人が定年後も働き続けたいと願うだろう。

 

 しかし企業は倒産、廃業、売却を経て統廃合していくものである。すなわち、企業の寿命は短くなっている。現在のIT業界を見るに明白である。老舗のNEC、富士通、東芝、リコーなどかつて優良企業と言われた企業でも、「不採算事業からの撤退」や「容赦のない大量リストラ」を実施している。

 

 身近な実例を挙げると、昔、同じ部署で一緒に働いていた45歳の私の知人は、住宅ローン・子供の進学費用・親の介護に追われている中、リストラの対象となり、退職して再就職先を探している。

 

 日本的経営の特徴である終身雇用、年功序列、企業別組合は早晩消滅する。そして人生100年時代では、1つの会社でキャリアを全うすることは難しくなるだろう。

 

 一方、終身雇用、年功序列、企業別組合のない米国では、定年制は法律で設定されていない。また「EMPLOYMENT AT WILL法」があるので、経営者は従業員を解雇しやすい。ドライな雇用制度なので、労働者は転職できるための能力(EMPLOYABILITY)がなければ、すぐに失業してしまう。米国の労働者の70%以上がこの条件で働いている。

 

 人生100年時代のキャリア形成を助長するため、日本の雇用契約は早急に改善すべきである。現在の日本では兼業・副業が禁止されている企業が多い。これらが解禁されれば、新しい仕事を探しやすくなる。兼業・副業の解禁は人生100年時代のキャリア形成を実現する上で不可欠である。

 

 高齢者の働き方を解決するには:定年後も社会に貢献できて・世間から必要とされて・自分の好きな・競合と差別化できるよう、日頃から自らの能力・技術を地道に習得しておく。

 

2. 老後の資金計画や年金

 今年6月に、金融庁は高齢夫婦(夫65歳、妻60歳)が、定年後に夫婦で95歳まで生きる場合には、2000万円の貯蓄が必要となるという報告を突如発表した。この発表は、公的年金のみでは老後の生活が不可能であるという厳しい現実を突きつけており、多くの中高年にとって衝撃的であった。

 

 頼りの政府は1000兆円もの負債を抱えている。日本政府は社会保障費の急速な伸びの圧縮に懸命になっているが、社会保障制度はすでに事実上破綻している。政府には年金支給開始年齢を75歳まで遅らせる計画があるとの噂もある。

 

 年金支給が減額されたり、支給年齢が遅延すると大変なことになる。私達は自己防衛のために、対策を考えるべきだが、名案が浮かばない。

 

3. 老後の病気や死に方

 私は今年6月から7月にかけて、持病のリュウマチが悪化して1か月間入院した。病院では様々な病気で入院する患者を身近で見たため、中高年の生き方や死に方に関心を持つようになった。

 

 日本人の健康寿命は男性72歳(女性74歳)で、平均寿命は男性81歳(女性87歳)である。平均寿命はどんどん伸びるが、健康寿命はなかなか伸びない。40歳、50歳、60歳、70歳と歳を重ねる毎に、体力や気力が加速度的に衰えていくのを私は実感する。

 

 現在は少子高齢化と核家族化で、高齢者になっても面倒を見てくれる家族がいないケースが増加している。人生100年時代では、高齢者の一人暮らしは珍しくなく当たり前になってくる。家族がいても老々介護になる可能性がある。

 

 これまで敬老精神のお陰で老人は大事にされてきたが、人生100年時代で老人ばかりの社会になるとそうはいかない。病気の時も死ぬ時も、周りの他人に頼ることのできないケースが増えてくる。自分一人で生き方や死に方を決定していく覚悟が必要となる。

 

 私は、高齢者の一人暮らしになっても、健康でボケないで、出来るだけ他人に頼らずに自立して生きたい。但し、死ぬ時は長患いをせずに、PPK(ピンピンコロリ)で周りに迷惑をかけないであっさり死にたいと思う。

 

 最後に、人生100年時代の人生は、定年までの雇用が保証されないため、他社に転職したり、個人で独立することが普通になるだろう。必然的に生き方が多様化し、さらに人生の途中で中断や修正を迫られる。そのため否応なしに自分のライフスタイルを優先させる、自己責任の生き方になる。

 

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■執筆者プロフィール

 

坂口 幸雄

・ITベンダ(東南アジアや中国で日系企業の情報システム構築の支援、中国全土での日系企業のIT市場調査)

・JAIMS日米経営科学研究所(米国ハワイ州)

・外資系企業(プロジェクトマネジメント)

・海外職業訓練協会(キャリアコンサルティング)

・グローバル人材育成センターのアドバイザー

趣味:犬の散歩、テレサテンの歌を聴くこと、海外旅行、お寺回り(四国八十八カ所遍路の旅および西国三十三カ所観音霊場巡り)