ICT教育革命最前線 / 下村 敏和

 SDGsの目標の一つに、“質の高い教育をみんなに” があり、だれもが公平に質の高い教育を受けられるように、また一生にわたって学習できる機会を広めようというものです。

 2010年代に入って、ICTを使った画期的な教育環境が生まれ、「教育革命」が起こっています。既にご存じ方もおられると思いますが、意外と知られていない3つの事例を紹介したいと思います。

 

■e-Education

 e-Educationは、途上国の子どもたちへの教育支援を行うNGOです。

 この事業は世界最貧国と言われるバングラデシュで当時早稲田の学生だった税所さんが、受験予備校の東進ハイスクールで行われていたDVDによる授業にヒントを得て、首都ダッカにある有名予備校の先生たちの授業を撮影して、それをDVDにして農村の貧しい高校生たちに届け、不可能と言われていたNo.1国立大学受験に挑戦する生徒たちを全力で応援し、1年目以降ダッカ大学の合格者を連続で輩出するという奇跡的なことが起こっています。

そして今ではe-Educationの活動は代表理事三輪さんに引き継がれ、14カ国にまで広がり、インターネットにアクセスできない貧しい中高生2万人以上に映像教育が届けられ、2018年までに250人以上を難関大学に輩出しています。

日本のインターネット普及率は94%ですが、世界のそれはまだ57%となっています。これらの運営は、寄付金や助成金、企業支援そして事業収益などから成り立っています。

 2000年2月1日にe-Educationの活動が始まり、間もなく10年を迎えようとしていますが、多くの子供たちにチャンスを届けるこの仕組みが感動を呼び、SNSや各種イベントで拡散され、ますます発展することを期待するところです。

 

■大規模公開オンライン講座(MOOC:ムーク)

 MOOC(Massive open Online Courses)をご存知でしょうか?

2012年にアメリカで複数立ち上がった「オンラインで公開された無料の講座を受講し、終了条件を満たすと修了証(一部有料)が取得できる」講座のことです。

 ・大学に行きたくても行けない人

 ・社会人になってから、空いている時間で勉強をしたい人

 ・リタイア後、できなかった勉強をしたい人

等々、様々な理由の方が無料で分け隔てなく、講義を受講することができます。大学のブランド力、知名度アップに貢献しているとみられ、中には有料の講座などもありますが、有名大学が提供しているということもあり質の高い講義が受けられると評判です。

 MOOCで勉強できることは多岐に渡り、経営学、プログラミング、アート、音楽、語学など世界中の様々なジャンルの講義が受けられます。

 その代表的なMOOCとして、スタンフォード大学が開校したCoursera(コーセラ)は、世界で利用者数が2500万人を突破し、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同で開発したedX(エデックス)も1400万人が利用しています。また、Udacity(ユダシティ)はスタンフォード大学の教授がベンチャーキャピタルからの資金調達を行い設立されたもので、内容は、データサイエンス、AI、プログラミングなどのIT分野を中心に構成されており、世界190か国16万人以上に利用されています。

 これらMOOCもビジネスモデルとして、有料の修了証を収入源としたり、受講者の学習履歴から人材情報を有料で企業に紹介したり、受講生が求職条件に利用したり、大学と提携して利用料を徴収したり、多様な収益のしくみが考えられています。

 Coursera(コーセラ)は、もともと英語のみでしたが、今では日本語字幕付きコースもあります。

 一方、無料で学べる日本最大のオンライン大学講座として2014年4月には、主要大学や企業が加わる「日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)」日本版MOOCを開講しました。累計340講座、100万人以上が学習しています。ただ、世界と比べると日本におけるMOOCの認知度はかなり低いと言えます。また、JMOOC公認のWebサービスであるgaccoでは大学教授や企業から多様なテーマで開催されています。

 これらは1講座10分程度なので、スキマ時間に本格的な授業を受けることができます。この他、東京大学など多くのWebサイトで講義の資料や映像が無料配信されています。

 人生100年時代、生涯現役がうたわれる中、社会人の学び直し、いわゆるリカレント教育にMOOCは文部科学省もオンライン講座の大幅な拡充を検討されており、今後需要が高まりそうです。

 

■7つの国を渡り歩いて学ぶミネルバ大学

 「キャンパス」がない、教師は「講義」も「テスト」もしない、全寮制なのに授業はすべてオンライン……。こんな「かつてない大学」が2014年9月に私立のミネルバ大学として米国に設立されました。サンフランシスコを拠点として、4年間で7カ国を移動して、各学期で学ぶ内容も変わるカリキュラムが大きな特色です。

 ・1年目 - サンフランシスコ(米国)

 ・2年目 - ソウル(韓国)、ハイデラバード(インド)

 ・3年目 - ベルリン (ドイツ)、 ブエノスアイレス (アルゼンチン)

 ・4年目 - ロンドン(英国)、台北(台湾)

 世界の各都市で学生は全員寮での共同生活を送りますが、講義は全てオンラインによるアクティブラーニングにより実施され、20名以下の小人数クラスでのディスカッション中心の授業や、企業や政府、自治体と共同して進めるプロジェクト、インターンシップなどを通じて課題解決の手法を学びます。

 ミネルバ大学の4年間のカリキュラムは、理解の幅と専門知識の深さのバランスがとれるように明確に設計され、個人技能である「クリティカル(批判的)思考」と「クリエイティブ(創造的)思考」、対人技能である「プレゼンテーション能力」と「コミュニケーション能力」を合わせた、「4つのコア技能」が身につけられるように継続的かつ体験的に学習できるようデザインされています。

 4つのコア技能の基本コンセプトを教養課程で学び、それぞれの専攻を2年次に決定し、より専門化されたコースで学びを深めていきます。専攻は「芸術・人文科学」「ビジネス」「計算科学」「自然科学」「社会科学」の5分野です。3,4年生では、自分の専門の中から「何か新しいものを生み出す」という課題を与えられ、多くの時間を自分の卒業プロジェクトに費やします。

 この大学は留学生がおよそ80%を占め、高い英語能力が必要で、今では世界から2万人以上の出願者があり、合格率はわずか2.0%ですが、入学試験に定員はなく、一定の評価水準を超えれば合格できる仕組みとなっています。

 キャンパスなどの施設を持たないため、授業料も米国のトップクラスの大学の1/4~1/3程度で、寮費を入れると決して安くは無いですが、今や世界の中でも超難関で人気のあるチャレンジャブルな大学となっています。

 これまでの「大学」の概念を覆し、知識の詰め込み教育ではなく、実践力と創造力のある、企業にとって即戦力なる人材が輩出されることでしょう。

 

 ICTの劇的な変化で、ネットワーク環境さえ整えば、やる気のあるモチベーションの高い人にとっては無料でいくらでも授業が受けられる「ICT教育革命」が起こっています。

 これからの社会は、社会人になっても職業上必要な知識や技術を習得するために学び続けなければなりません。

 凄い時代になりました。素晴らしい時代に生まれました。

 

(参考文献)

・ルポMOOC革命無料オンライン授業の衝撃 金成 隆一 著 

・最難関校ミネルバ大学式思考習慣 山本 秀樹 著 

・e-Education Webサイト:http://eedu.jp/

・Coursera(コーセラ)日本語Webサイト:https://ja.coursera.org/

・JMOOC(ジェイムーク)Webサイト: https://www.jmooc.jp/

 


■執筆者プロフィール

 ヒーリング テクノロジー ラボ 代表 下村 敏和

 ITコーディネータ&インストラクター

 電話番号:075-200-2701

 e-mail:t-shimomura@zeus.eonet.ne.jp