巨大IT企業GAFAの規制 / 岩本 元

 本稿では、近頃の新聞やネット記事で見ることの多い、GAFA規制について紹介します。

 

1. GAFA

 GAFAとはGoogle(グーグル)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)という巨大IT企業4社の頭文字を繋げたものです。グーグルは情報検索他のサービス、アップルはデジタル端末、フェイスブックはSNS、アマゾンはネットショップの各分野で社会変革を起こし、市場を席巻している企業です。これら4企業の2019年の売上高の合計は約7800憶ドル(85兆円)、株式時価総額は3.3兆ドル(370兆円)にもなります。国家で言えばGDP世界4位のドイツと同程度の規模です。

 この4社のビジネスモデルは、利用者の個人情報を収集し、それを活用して巨額の利益を得るものです。例えば、グーグルのインターネット検索サービスの利用者数は世界一です。日本ではインターネットを検索することを「ググる」と呼ぶほど普及しています。また、Googleマップはスマートフォンでよく使われる地図サービスです。これらの無償サービスでは、利用者がサービス利用時に入力する検索キーワード、地図上の現在位置またはランドマークが記録されます。グーグルは記録した個人情報を分析し、各人の顕在化ニーズまたは潜在ニーズに基づくターゲティング広告を出すことによって莫大な広告収入を得ています。

 アップルはスマートフォン(iPhone)やタブレット(iPad)、音楽配信端末(iPod)、Appleウオッチといったデバイスと独自のOSや音楽配信サービスを提供します。1つのデバイスを購入すると、その情報が連携して他のサービスやデバイスも連鎖的に使いやすくなっています。

 無償SNSサービスを提供するフェイスブックの月間のアクティブユーザー数は約24億人です。利用者のプロフィールやクリックした「いいね」を分析して、各人の嗜好に合うターゲティング広告を出します。

 アマゾンのインターネットショッピングサービスは、ロボットを用いる倉庫管理や、即日配送など多くの仕組みを持っています。その中の1つのリコメンデーションは、利用者の購買履歴を使ってあらたな商品の紹介、他の利用者への商品紹介を行う仕組みです。

 

 GAFAに共通しているのは、インターネット上で大勢の人がモノやサービス、情報をやりとりするための基盤(プラットフォーム)を提供し、そこで得られる情報を取得、分析することで収益をあげる点です。このような企業をプラットフォーマーと呼びます。

 

2. GAFAの規制

 EUやアメリカではGAFAを規制する動きが見られるようになっています。その理由は、課税、競争政策、個人情報保護の3つです。

 

(1) デジタル課税

 法人税は、基本的に本社や支店、工場など、物理的な拠点がある場合にかけられます。しかし、プラットフォーマーは、法人税率の安い国に代表拠点を設け、ネットを通してビジネスを世界展開しています。そのため適正な課税ができず、税金逃れになっているとの批判が強まっています。

 経済協力開発機構(OECD)は国内に物理的な拠点がなくても利益を計上していれば課税できる仕組みの検討を進めています。

 

(2) 競争政策(独占禁止法の適用)

 世界規模のプラットフォーマーは、容易に市場を独占できるため、公平な競争をしなくなる可能性が高いです。例えば、アマゾンのデバイス(ダッシュボタンなど)を使うと、常にアマゾンで販売されている商品が表示されるなら、消費者を囲い込むことになってしまいます。

 EUでは、経済活動において公平な競争が行われるように「EU競争法」という法律を施行しています。2015年には、グーグル検索で商品の価格を調べると、グーグルが運営するショッピングモールの商品が優先的に表示されていたため、EUはグーグルに警告して制裁金を支払うよう命じました。これまでに82億ユーロ(1兆円超)という巨額の制裁金を課しています。

 アメリカでもGAFAに代表されるプラットフォーマーを規制し、解体しようという動きがあります。

 

(3) 個人情報の保護

 GAFA規制の動きは、2018年3月にフェイスブックから最大8700万人分と言われる大量の個人データの流出が発覚して活発化しました。私達は、様々な個人情報(住所、氏名、年齢、職業、性別、学歴に趣味・嗜好、そして人間関係)をGAFAに提供しています。これらの情報が流出する可能性のあることが認識された訳です。

 2018年5月には、「EU諸国の人々の個人情報はEU圏外に持ち出してはいけない」と定める欧州一般データ規制(GDPR)が発効されました。個人情報に関してEUとEU以外に分けるようにと、GAFA他のIT企業に要請したものです。

 

3. 日本国内の動き

 2019年10月、関係閣僚や企業トップ、それに有識者などからなる「デジタル市場競争会議」が官邸で初会合を開きました。

 独占禁止法の関連では、アマゾン社のポイント還元サービスが問題視されました。アマゾンでは商品価格の1%以上を消費者にポイントとして還元するサービスに取り組む予定でしたが、ポイント分を出品側に負担させようとしたのです。これは、出品者側がアマゾンという巨大プラットフォームに頼らざるを得ないという足元を見た値下げの強要とも取れ、公正な取引が行われない可能性があると指摘しています。そのために「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法」を策定し、取引先との契約内容などの開示をIT企業に対し義務づける予定です。

 個人情報保護の関連では、デジタル市場競争会議は、個人情報の不正利用に歯止めをかけるため、個人情報保護法を改正して、個人がプラットフォーマーに対して自分のデータの利用停止を求める権利を明確にする方針です。例えば、就職情報サイトのリクナビで起きた問題は深刻です。学生から集めたデータを使ってその学生が特定の企業の内定を辞退するかどうか内定辞退率を予測して、企業に販売していた、という問題です。個人情報保護法に違反するとして当局がリクナビに初の是正勧告を出しましたが、こういったケースは、今回の規制強化によってより厳しい処罰を受ける可能性があります。すなわち、GAFAだけでなく日本の企業も規制対象になるとみられます。

 一方で規制強化の問題点も指摘されています。経団連は、「行き過ぎた規制強化は、技術革新の停滞につながる」との提言をまとめました。国境を越えたデータの流通はデジタル経済の発展に不可欠だが、規制強化が進めばデータを自国内で囲い込む動きが広がる懸念がある、との危機感を表明しています。確かに、企業がデータの扱いに躊躇して技術革新が遠のくなら問題です。しかし、まず消費者が安心できるルールを整備してこそ、企業のビジネスチャンスも広がるはずです。消費者の納得や信頼を得た上でデータを利用できる環境整備を急ぐ必要があります。

 

 今後も、世界や日本における巨大IT企業への規制に注目しましょう。

 

(参考文献)

・ITC京都 経営とITコラム「GAFAとデータ資本の時代/藤原 正樹」、

 https://www.itc-kyoto.jp/2018/05/07/gafaとデータ資本の時代-藤原-正樹/

・ITC京都 経営とITコラム「GAFAにおけるデジタル志向と共感志向の融合/清水 多津雄」、

 https://www.itc-kyoto.jp/2018/10/15/gafaにおけるデジタル志向と共感志向の融合-清水-多津雄/

・「終焉GAFAの時代」、日経ビジネス、2020.01.06 No.2023

 


■執筆者プロフィール

 岩本 元(いわもと はじめ)

 ITコーディネータ、技術士(情報工学部門、総合技術監理部門)&情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、システム監査他)

 企業におけるBPR・IT教育・情報セキュリティ対策・ネットワーク構築

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