デジタル化を正しく理解しましょう あなたの理解は半分しか正しくない/宗平 順己

デジタル化を正しく理解しましょう。 あなたの理解は半分しか正しくない

 

1.日本での一般的なデジタル化の理解

9月3日に神戸市がデジタル化専門官の追加募集を公開しました。

その職務内容を見ると以下のように書かれています。

(1)業務のデジタル化とICT導入による業務改革のプロジェクト統括

(2)市長・副市長をはじめとする幹部層へのデジタル化・ICTに関するアドバイス

(3)イノベーション担当課長とともに、デジタル化に関する企画、立案

(4)デジタル化・ICT導入に関する職員のリテラシー向上施策の推進

 

皆さんはどのように感じられたでしょうか。ICTをデジタル化に変えただけでこれまでと何も変わらないのではと思われたかもしれません。政府からの資料も大体似たようなものです。

でもそれは欧米の理解とはかなり異なっていて、日本のデジタルトランスフォーメーションの取り組みをさらに遅らせることになるのではないかと危惧しています。

 

2.デジタル化の正しい理解

世界の中でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを整理し、リードしてくれる機関の一つにMITスローン校があります。MITは工科大学ですが、そのなかで経営情報についてのリサーチをしている世界のトップ機関です。

このMITスローンの研究チームが昨年9月に「Designed for Digital」という本を出版しました。この本は毎年実施している数千に上る世界中のCEO等へのアンケート調査に加え、DXに取り組んでいる数百に上る企業を丹念にリサーチし、企業がDXに取り組むにはどうすれば良いのかをまとめた本です。

この本の中に以下のような一文があります。

 

Although digital technologies can enhance business efficiency, using digital technologies for that purpose doesn't transform a company into a digital business.

 

 

「デジタル技術は既存ビジネスの効率向上に使うことは可能ではあるが、その目的だけにデジタル技術を使うことでは、企業のデジタルトランスフォーメーションを実現することはできない」

 

原文をそのまま訳すと企業をデジタルビジネスに転換することはできないですが、変わりたくない人は狭義に解釈するので、デジタルトランスフォーメーションを実現できないというように著者の意図が良く伝わる様に記述しています。

 

また別の個所ではそこでは、デジタル化への取組を次の様に説明しています

 

Digitize :
SMACIT
social,mobile,analytics,cloud,IoT)でビジネスプロセスを強化すること。短期的な現行の競争優位の担保に必要であるが、将来の競争優位を作ることはできない。

 

Digital :
これに対しSMACITを顧客への価値提案のために適用することがDigitalであり、デジタルトランスフォーメーションの本質はDigitalである。

 

デジタル化の道具はSMACITです。AnalyticsにはAIが含まれています。それは、現行ビジネスの強化のために活用することもしなければなりません。それに加えて、急速にデジタル化が進む世の中において、自社の生き残りを図るために新たな事業の柱を作るためにSMACITを活用したソリューションも開発していかなければならないということです。

 

日本企業はDigitizeが得意であるが、Digitalへの取り組みが不得意であり、それがデジタルトランスフォーメーションへの取り組みの遅れにつながっているのです。そのことをしっかりと認識して頂きたいと思います。

 

出典:Jeanne W. Ross, Cynthia M. Beath, Martin Mocker, Designed for Digital: How to Architect Your Business for Sustained Success, The MIT Press September 2019.

 


■執筆者プロフィール 

 氏名 宗平 順己(むねひら としみ)

  所属 武庫川女子大学経営学部教授
  IT
コーディネータ京都 副理事長
  Kyoto
ビジネスデザインラボ 代表社員

 資格 ITコーディネータ、公認システム監査人

 https://www.kyoto-bdl.com/

 専門分野

 ・デジタルトランスフォーメーション

 ・サービスデザイン(UX

 ・クラウド

 ・BSC(Balanced Scorecard) 

 ・IT投資マネジメント

 ・ビジネスモデリング

 ・エンタープライズ・アーキテクチャ  などなど