5Gを学ぼう 第3回:5G環境が整ってもLTEは無くならない/富岡 岳司

5Gを学ぼう 第3回:5G環境が整ってもLTEは無くならない

 

前回のコラムで現在の5Gインフラ整備状況について述べた通り、5Gの全国展開は道半ばであり、これからいよいよ本格化と言ったところです。

従って当面は今の4G(以降LTE)中心の状態が続くことになります。

一方、更に1世代前の3Gは間もなくサービスが終了します。

LTEが使えない旧型の端末(機器)はサービス終了と共にその役目を終えることになります。

参考までに現在発表されている3Gサービス終了予定はNTTドコモが20263月末、au20223月末、ソフトバンクは20241月下旬です。

と言うことは、5Gが行きわたったらLTEもなくなるのでは?

普通に考えればそうなるのですが、実はそう簡単にはLTEがなくならない、正しくはLTEをなくせない事情があるのです。

前回のコラムで、5G用の周波数は今のところ、3.7GHz4.5GHzと言ったLTEに近い周波数と28GHzと言った非常に高い周波数があることを説明しました。

実は、この周波数の違いが5Gインフラの構築方法に大きく関与しているのです。

高い方の周波数である28GHz5G基地局(ざっくり言うならアンテナや無線機がある所)は、5G専用として構築できます。

この5G専用の基地局として構築する方法を一般的にStand Alone(略してSA)方式と言います。

一方で、3.7GHz4.5GHzと言ったLTEに近い周波数の基地局を構築する方法はNon-StandAlone(略してNSA)と言い、これは文字通り5Gとして独立しておらず、LTEと併用しています。

併用と書くと語弊があるかも知れません。

LTE5Gが併用であるなら、5Gが行きわたったらLTEの部分を切り離せるのではと思いがちですが、そうではなく、5Gの通信の一部(制御系のデータのやりとり)をLTEの周波数(アンカーバンドと言います)で使っているのです。

従ってNSAではLTEなしには5Gは繋がらず、何らかの原因でLTEが使えなくなると(正しくはアンカーバンドが使えなくなると)5Gも使えなくなるのです。

NSAではLTE5Gは一蓮托生と言う感じですが、飛躍した例で表すなら整備新幹線のようなものかも知れません。

全く新規に新幹線専用のインフラを構築するのではなく(5G単独局として構築するのではなく)

既存の在来線を有効に活用し、在来線の電車も走らせつつ高速な新幹線を走らせる(LTEでの利用も可能にしつつ5Gでも繋げられる)といったようなものです。

従って、在来線(LTE)に影響が出ない範囲内でしか新幹線(5G)を走らせることができませんし、そもそも東海道新幹線などのように新幹線用に(5G用に)特化した規格ではないので本来の最高速度(スループット)も出すことは出来ません。

これが、3.7GHz4.5GHzと言ったLTEに近い周波数の5G基地局であり、今、スマートフォン向けに整備が進んでいる基地局です。

従って、整備新幹線が全区間走行できるようになったからと言って在来線の線路を撤廃することは出来ないのと同じように、5Gが行きわたったからと言って、LTEの基地局をなくすと言ったことは出来ないのです。

もっとも、在来線のダイヤそのものを減らすとか(極端な例ではダイヤをなくすとか)運賃を変えると言ったのと同じように、LTEで接続できる端末数を制限したり料金体系を変えることはあるかも知れませんが、現時点ではキャリアとしてのメリットもないので、ことスマートフォンに限れば当面は今のLTE通信が続くと思います。(日進月歩の世界なので何が起きるかわかりませんが)

ここまで読んで頂き、感の鋭い方は「なんだ5Gスマフォに買い替えから5Gで繋がっていると思ったらLTE落ちになっているかも知れないのか」とお思いかも知れませんが、これはこれで大変大きなメリットがあります。

前回の通り超高速5G28GHzは電波が途切れやすいのです。

途切れないようにしようと思うと沢山のアンテナ(基地局)が必要でありスマートフォンのような移動体機器には不向きです。

皆さんが実際にスマートフォンを使っていて、めちゃくちゃ早いけど途切れやすいのが良いか、そこまで高速でなくても途切れない方が良いかと言えば、ほぼ全ての方が後者を選択されると思います。

これこそが、日本が誇る通信通話品質なのです。

他国と比べ5G展開が遅いと言われる節もありますが、品質はピカイチです。

5Gが繋がらなくなってもLTEでしっかり通信通話ができるインフラになっているからこそ5G対応の新機種でも安心して使えるのです。

さて、他方、スマートフォン以外での5G利用(超低遅延や同時多数接続と言った5Gの真骨頂ともいえる利用)についても並行してSA方式の基地局が急ピッチで整備されていくはずです。

ただ今のところ、このSA方式を有効に活用するキラーコンテンツ(製品やサービス)がないのも事実です。

これは、利用者がまったくいない地域間に新幹線を走らせるようなものであり、折角の凄いインフラでありながらメリットが享受されません。

5Gインフラの価値創造に向け、これから先、私達ITコーディネータが役割を果たせればと思いますし、日本の製造業が5G時代と共に「ものづくり大国」としての復権を果たして頂ければと願う次第です。

 


執筆者プロフィール

富岡 岳司

 

ITコーディネータ京都 理事

 

ITコーディネータ/IoTプロフェッショナルコーディネータ/

MCPCシニアモバイルコンサルタント/MCPC 上級IoTシステム技術者/

文書情報管理士/第ニ種電気工事士/第一級陸上特殊無線技士/第一種衛生管理者

 

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