駅ビル勤務のITコーディネータが思うこと/ 浅野 卓

 
1 はじめに
 今では、様々なJRのターミナル駅に商業施設があります。しかし、国鉄時代は、国鉄自らが関連事業を運営することができませんでした。そのため、地方公共団体や地元財界が出資して、国鉄が貸し出した用地の上に、駅舎と一体となった商業施設を建設するという事例がいくつかありました。その第一号とされているのが、豊橋駅ビルです。現在も豊橋ステーションビル株式会社が「カルミア」の営業を続けており、昨年、建替後50周年の記念事業を行いました。

 以上の経緯により、当社は、JR東海の子会社ではありますが、依然として豊橋市や地元財界も出資しており、地元との連携を重視した経営を実践しています。今年度から、「豊橋市の生活・コミュニティ基盤の発展に貢献します。」という経営理念も定め、全社員に徹底しています。

 さて、私は、ITCに加えて、内部監査、システム監査などの専門資格も有しています。地元の方と名刺交換すると、多くの方が「ITに詳しいのですね。相談に乗ってください!」という反応で、残念ながら、監査について教えてほしいという反応は少ないです。それはともかくとして、私が相談を受けている事例をご紹介しながら、地方公共団体におけるICT技術活用のヒントや課題を共有できればと思います。

2 豊橋市におけるICT活用のアイデア
 豊橋市、そして周辺の東三河地区は、農業や畜産業が盛んなエリアです。野菜、生け花など、全国でトップレベルの生産高を誇ります。しかし、地方都市共通の少子高齢化に伴う過疎化などの悩みもあります。また、特に豊橋駅周辺は、深刻な人口減、空きビル等の増加といった問題点を抱えています。そのような状況も踏まえ、以下のようなご質問やご要望をお伺いしています。

〇農作物生産者、地元事業者
・    どのように消費者に商品を認知してもらったらいいのだろう?最近流行のSNSを活用したいけれど、

    やり方がわからない。
・    どういった販路で商品を販売したらいいだろう。物流の効率化が実現できればいいのだが。
・    駅近辺の人流データや天候の状況などを分析して、材料の確保やアルバイト募集に生かしたいけれど、

    難しい。

〇豊橋市役所、豊橋コンベンション協会などの関係者
・    豊橋に観光客を呼び寄せたいが、どのように宣伝したらいいのだろう?
・    駅周辺でさまざまなイベントを開催しているが、情報を集約しきれない。簡単に共有したいのだが。
・    観光客や地元の皆さんに、駅周辺の施設を回遊してもらいたい。デジタルスタンプラリーはどうやって

    導入したらいいのだろう?
・    地域通貨(TOYOPay)をもっと利用してもらいたいが、どのように宣伝すればいいだろう。

    どのような特典が魅力的だろう。
・    自治会活動にもICT技術を活用したい。具体的には、市民向けの広報誌や回覧板のデジタル化などに

    取り組みたい。
・    高齢化の進展に備えて、万歩計などのアプリを開発して、市民に使ってもらいたい。
・    スマホなどを使いこなしづらい市民のITリテラシーを高めたい。

〇駅ビルのスタッフ
・    催事コーナーのバラエティを増やしたい。地元で有名な店にアプローチしたいが、どのような手法を

    とったらいいのかわからない。
・    ウェブサイトを活性化したい。またSNSアカウントのアクティブユーザを増やしたい。

一例に過ぎませんが、さまざまな立場の方がICT技術の活用を願っていることを実感します。


3 具体的な提案 ~デジタル通貨の活用~

さて、私は豊橋市の政策全てに通じているわけではありませんので、どのような順序でICT化を進めていく

 べきか論ずることはできません。
 しかし、今の私の仕事と深いかかわりがあるデジタル通貨の活用について、いくつか具体的なアイデアが

 ありますので、こちらで述べたいと思います。
 皆様もご存じのように、最近、スマホ、そしてバーコード決済が急速に普及しており、プレミアム付商品券

 をデジタル化する事例が増えてきています。豊橋市でも、昨年度に前述したTOYOPayを発行しています。
私は、この仕組みを活用しつつ、以下のような地域の活性化に役立つ機能を一つ一つ実装していけばよいと

 考えています。

・    地元事業者のマーケティングに役立つデータを配信するために、ユーザの購入履歴などを取得する
・    デジタルスタンプラリーやクーポン配信などの機能を追加する
・    観光情報や地元イベントなどの情報を配信する
・    公共交通機関、公共施設利用料、各種手数料などの決済機能を実装する
・    万歩計機能などと連携し、TOYOPayと交換できる機能を追加する

このような機能が実装できれば、TOYOPayは単なるデジタル通貨ではなく、豊橋市民向けのアプリとなり、

 多くの関係者が積極的に使う可能性が高まります。

ただし、そのためにはアプリの仕様を検討するといった技術的な支援だけではなく、得られたデータを

 分析する、ステークホルダーにフィードバックする、さらにアプリの使い勝手を磨き上げる、生産者や

 販売者向けにはウェブサイトの運用アドバイスを行うといった地元のステークホルダーに対する長期的な

 支援が必要になります。

ITCとしてこれらの仕事に関与することは、地方創生に直接的に貢献できるという意味でやりがいのある

 プロジェクトになると確信しています。皆様の知恵も借りつつ、地域通貨の活性化を実現させるための努力

 を続けていく所存です。

参考記事
https://www.projectdesign.jp/articles/7d8f1c9b-eb28-47d1-b97d-06d94ae4082c
駅ビルをベースに地域拠点と連携し、ベンチャー企業を支援

 

                                               以上

 


■執筆者プロフィール

氏名         浅野 卓(あさの たかし)
所属         豊橋ステーションビル株式会社 代表取締役社長
資格         ITコーディネータ 公認システム監査人 公認内部監査人
           内部統制評価指導士 AFP等
専門分野    内部監査、システム監査(システム監査学会会員)
     ファシリテーション 人的資源管理

     病院経営(企業立病院 事務部長経験あり)