【コラム】中小企業・小規模事業者を取り巻くデジタル化の現況

1.理事長を退任して思うこと

 今年7月で70歳を迎えることもあり、2年前から理事会内では公言していたとおり、5月の総会で理事長を退任いたしました。70歳の「古希」は、中国・唐の時代の詩人である杜甫の詩「人生七十古来稀なり」からきている長寿の祝いということです。その時代は「人生を70歳まで生きる人は古来から稀である」ということです。

 

 今後はもっと若い人に活躍の場をより多く提供し、それを支えていきたいと考えています。2期4年間、理事長を務めてきたわけですが、なかなかハードな4年間でした。その前の2年間、つまり2020年からの2年間は、コロナ禍の中、京都市のIT利活用支援事業の専門家派遣事業を初めて受託して、100社におよぶ専門家派遣をどのように進めていこうか、管理していこうかと前理事長とともに試行錯誤を繰り返していきました。その結果、2年目からは比較的スムーズな事業運営ができるようになったと自負しています。その後理事長に就任することになりましたが、京都市事業の成果を評価していただくことで、いろいろな支援機関との連携も増えていき、事業活動としては多岐にわたるようになってまいりました。おかげで会員も2019年から比べて現在は2倍に増え、100名以上を維持することができるようになりました。また、収益面も安定しており、NPO運営に十分な内部留保を得ることができる状態となっています。もちろん理事および会員にも支えられながら、一緒に成長することができたと感じています。ITC京都の会員には多様で優秀な人が集まってくれており、今後も益々発展していくことを切に願っています。

 

2. 2025年版中小企業白書から見えてくるもの

 デジタル技術が社会に浸透し、SNS等のプラットフォームやクラウドサービス等を含め、社会生活や企業活動において、重要・不可欠な、いわば「社会基盤」としてのデジタル領域が拡大する中、人々の情報収集、コミュニケーション、消費行動や企業の経済活動に大きな変化が生じつつあります。またAIは爆発的に進化を続けており、生成AIで利用する大規模言語モデル(LLM)の進展とともに新たな技術も日々出現しており、技術変革の可能性が大きい分野となっています。

 

 生産性向上や販路拡大にはデジタル化が有効であるものの、中小企業・小規模事業者においては導入が進んでいないという声が多く聞かれます。しかし、図1(2025年版中小企業白書「デジタル化の取組段階」)を見ると、非デジタル企業の割合が大幅に減少しており、デジタル化社会の進展が明らかになっています。すなわち、アナログな管理から何らかのITツールを導入し、デジタル化を推進している企業が増えてきているのです。今後はデジタル化をさらに進めると同時に、単なるデジタル化にとどまらず、DXに取り組む企業が増加していくと考えられます。デジタル化・DXは、人手不足や賃上げ原資の確保という経営課題に対応し、「稼ぐ力」を高めるための重要な取組と位置づけられています。DXとは、単なるIT導入ではなく、デジタル技術を用いて顧客視点で新たな価値を創出し、ビジネスモデルや企業文化を変革することを指しています。また、従業員一人当たり情報処理・通信費の推移を見ると、2014年から2023年で1.5倍に増えています。図2(2025年版中小企業白書「中小企業における情報処理・通信費の増加内訳」)を見ると、その内訳では、「クラウドサービス使用料」が増えていることが見て取れます。これは、高価なソフトウェアを購入するのではなく、資産化しない活用が進んでいることが示唆されます。

 

 

図1 デジタル化の取組段階

 

 

図2 中小企業における情報処理・通信費の増加内訳

 

3. 京都におけるデジタル化・DX

 2020年より6年間京都市中小企業のデジタル化・DXを支援し、2026年もまた継続していけることに感謝しつつ、それに応えていきたいと考えています。これだけ長く支援していくとデジタル化の傾向が顕著に見えてきます。昨年からはAIをいかにして自社に取り入れていき、有効活用していこうかと考えられています。あまり費用をかけずにいかに効果を発揮できるかを期待されている面もあります。そのような期待に応えるべく、我々専門家も日々研鑽していきたいと考えています。



◆執筆者プロフィール


氏 名:曽我部 泰博

所 属:特定非営利活動法人ITコーディネータ京都 相談役(渉外担当)

バイタルスパーク合同会社 代表社員

資 格:ITコーディネータ/PMP/厚労省ものづくりマイスター(IT部門)/

CompTIA Cloud Essentials/JGAP指導員