外部専門家活用のススメ マンション管理組合 (2) / 丸山 幸宏

<まえがき>

 (前回の続き)関西にある自宅と、東京にある事務所のマンション管理組合にて、流れでやることになっちゃった理事長を務めており、外部の専門家である管理会社他の活用について、触れたいと思います。

 

<論点>

 関西の組合理事は輪番制で2年ごとに入れ替え、東京の組合は半分が賃貸にしている外部オーナーで、居住しているオーナーの流動性も高いため慢性的に理事不足という状況で、中長期の課題に上手く取り組めていない現実がありました。それ故、専門家である管理会社も“それなりにしか”機能しない訳で、ここを改善するには委託者である管理組合が、主体的に考え動き成熟することが重要なんだよなーって、もうすぐ任期が終わっちゃいますが、日々学習すること多いです。

 せっかく頂いたお役目なので、状況の整理と方策の検討&実行をバランスよく進めるために、普段仕事で使っている「バランス・スコアカード」のモデルを参考にしました。

 

 

<バランス・スコアカードのモデルを使った整理>

前回第1回で詳細触れたトピックス)

(1) キャッシュフローと積立金の視点:財務

 a) 収入リスクの大きなもの

 b) 支出リスクの大きなもの(無駄に払い過ぎていた過去)

 

(第2回の詳細はここから)

 c) 積立リスク:積立不足と修繕積立金の値上げ

 東京の組合では、1回目の大規模修繕工事の際、積立金が足らず工事仕様の一部を先送りしていました。これは私がオーナーとなる前の話ですが、積立金が不足していたにも関わらず、“12年程度“という役所のガイドラインがあることすら共有されないまま、10年目という古い慣習による管理会社のミスリードがあったらしく、とっても残念な話です。そのことも手伝って、現在の修繕積立金は大幅に値上げされています。

 

 一方関西の組合では、約2年もの準備期間を設けて委員会活動で必要な知識を得て知恵を絞り、競争環境を積極的に持ち込んで、通称ハイブリッド型と呼ばれる発注方式としました。この方式は、管理会社系列の工事会社に主幹事になってもらうが、現場の工事を請け負う各社の調達はオープンとするやり方で、品質や保証面での安心と、透明でリーズナブルなコストの両立を図りました。その甲斐あって、要求通りの工事仕様としつつ、積立金を20%程度残せる見込みです。ちなみにこの大規模修繕工事は、2018年2月から実施されます。

 今回、リーズナブルに安心を手にできた大きな理由として、築14年目という修繕インターバルの選択がありました。もちろん、事前に劣化状況を検査した上で、皆で納得して修繕時期を繰り下げました。こういう外部専門家の活用は実利的でとても有効でした。

 今後は、来月から工事が始まりますので、諸課題と向き合いながら無事に工事が完了して、適切に検収をあげることに注力します。私の任期中に残る重要課題は、10年以上先の次回大規模修繕に向けて、修繕積立金の見直しをどうするかです。現在ある「長期修繕計画」と「積立シミュレーション」のモデル精度がさほど高くないことから、ここの想定をどのくらいの“幅”で組み立てられるかという問題です。

 とはいえ、12-15年も先までのいろんなことを想定するには、標準的な保守計画の工程表と、細分化された保守対象のマトリクスで表現される「長期修繕計画」を定期的に見直すことになります。段階的に“幅”を狭めて、近似値が外れるリスクに対応する中で、必要に応じて修繕積立金の見直し是非を問う訳です。

 ここで問題なのが、“標準的な”保守インターバルで、これらは物品部材の提供業者の保証期間をベースに組み立てられていて、“リーズナブルな”保守インターバルを設定することの難しさです。消費者視点で眺めると、まるでお節介で過剰な予防保守の買い物リストのようでもあります。

 ここで頼りたいのが、「そこにある、建物の劣化と向き合う」という専門性の高い領域での知見と、実際にたくさんの物件を管理しているデータに基づく分析・予測をサポートしてくれる管理会社です。ただし、彼らも商売なので、買い手である管理組合が主体性を持って向き合う必要があります。

 

 d) 運用リスク:運用機会を失い続けていた過去

 両方の組合にて、Payoff上限の定期預金数本と残額を複数の普通預金で運用しており、口座間の資金移動や残高証明他の事務処理にて、金利が食い潰され続けていました。できるだけ少ないリスクで安定運用する商品を検討した結果、住宅金融支援機構の「マンションすまいる債」を資金の分散先に加えました。

 ここでも管理会社の“沈黙”が災いしていたと反省しています。そもそも管理会社の主要取引先銀行が、組合の資金運用先という構図を理解した上で、組合として主体的にどうしたいかという要求を考える必要がありました。安全性重視と“どうせ金利低いから“と思考を停止させて、運用機会を失うリスクを過小評価してしまい、先の構図から管理会社が“沈黙”することで、何もせずに銀行の定期預金と普通預金で数千万を塩漬けていたということ。もったいない話です。

 

<あとがき>

 前回同様に、「まず、買い手である組合自身が、賢く運営に成熟する」ことが重要で、自分が食べさせてもらっているITの外部専門家として、お客様に「上手に使い倒される」ためにやらないといけないことの裏返しだなーと、考えさせられます。そういう意味で、組合理事の輪番制というのは、売り手優位の温床にしない工夫が必要で、引き継ぎ期間を設けるであるとか、重要事項は臨機応変に委員会活動で捌くといったことをやっています。東京では立候補制と輪番制を組み合わせたハイブリッド型に変えましたが、詳細は次回以降に。

 

*以下詳細は次回以降にて。

(2) 居住者・区分所有者の視点:当事者

(3) 向き合い方の視点:プロセス

 a) ルールによる捌きごと:法令・規約から個別契約・管理員諸調整まで

 b) サイクルによる捌きごと:年次総会から個別の委員会まで

 c) アドホックな捌きごと

(4) 組合の成熟度の視点:学習と成長

 

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■執筆者プロフィール

 

Principal Consultant

   Yukihiro MARUYAMA(丸山幸宏)

 ITC(0015202003C), IT-CMF(Tier3)

 Business Design TSUMUGi LLC

 ボスはお客さま。夢は外から地球を眺めること。

 得意分野は、グローバルなソーシングやガバナンス、エンタープライズでのBPMやEAMとデジタル

 トランスフォーメーションの推進。

 

 ymaru.soho@gmail.com

 https://ivi.ie/it-capability-maturity-framework/

 https://ivi.ie/capability-improvement-program/

編集者より
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