5Gを学ぼう 第2回:あれから1年 5Gは進んだのか/富岡 岳司

ちょうど1年前に、ここのコラムに「5Gを学ぼう 第1:スマフォがつながる仕組み」を掲載させて頂きました。

7月のオリンピック開催を信じて疑わなかった頃であり、オリンピックで5Gを用いた製品・サービスが華々しく展開されることに夢を膨らませていました。

しかし僅か3ヵ月後にその夢は儚いものとなり、あらゆるものが自粛になってしまいました。

今回のコラムでは、現時点で5Gのインフラがどこまで進んで、どこを目指して歩んでいるのかに触れてみたいと思います。

尚、公式発表や文献などを引用しつつ、一部は私の主観・希望的観測が入っていることをご了承お願い致します。

 

オリンピック開催延期が決まって以降、国内の5G展開も自粛になってしまったのでしょうか?

答えはNoです。

総務省の計画に沿って順次エリアを拡大していっています。

具体的には、5G周波数の割り当てを受けた移動体通信事業者(以降、キャリア)は5G商用サービス開始から2年以内に全ての都道府県でその商用サービス開始するとの条件が総務省で定められています。

また、20194月から5年以内に全国50%以上のメッシュ(全国を10km四方の区画している)で5Gの基地局を展開することも条件となっているので、各キャリアはそのマイルストーンに向けて基地局の整備を進めています。

ただ、現在は大都市の駅周辺などのかなり狭い範囲でしか繋がらない状態であり、しかもメッシュを達成してもつながらない穴がたくさんあり、実際にはメッシュ内に沢山の基地局(簡単に言えばアンテナを含む設備)が必要になるため、各キャリアは急ピッチで基地局の展開をはかっている最中です。

試算では全国で28万局くらいの5Gの基地局が必要と言われています。

このように5Gインフラの整備は進んでいますが、当初、20212月には「こうなっているだろう」と想定していたものとは少しギャップがあるのも確かです。

昨年のコラムで、5Gの特徴は4G(今のスマフォでの通信、以降LTE)と比較して

・超高速化(LTE100倍の通信速度)

・多重同時接続(LTE100倍)

・超低遅延(LTE1/10

(以降、5G主要3要素)であることを述べました。

これは、今も変わっていません。

しかし、少し違ってきているのは、これら3要素間に位置づけられた優先度がより鮮明になってきたことです。

5G主要3要素のうち、スマートフォンに限って言えば恩恵を受けるのは超高速です。

逆に言うと、多重同時接続(LTE100倍)や超低遅延(LTE1/10)はスマートフォンでの利用では殆どメリットはないのです。

一つの基地局に今の100倍のスマートフォンがアクセスする(簡単に言うと100倍の人口になる)ことは考えられなく、通信遅延も今の1/10になったからと言って目に見えて利用者が恩恵を受けるかと言うとそうではないのです。

それゆえ、現時点でスマートフォン市場を基軸にしている各キャリアは超高速化としての5Gインフラを優先的に進めているようです。

 

加えてもうひとつ、超高速化が優先されている背景があります。

それは、既存基地局と周波数の問題です。

多重同時接続や超低遅延を実現するためには、これまでのLTEで使っていた周波数よりもはるかに高い周波数が必要になります。

周波数は高ければ高いほど高速大容量通信が可能になりますが、電波の直進性が強く建物などの遮蔽の影響を受けやすく繋がりにくいといった特徴があります。

動物で言えば猪突猛進の猪と言ったところでしょうか。

逆に周波数が低くなればなるほど低速少容量通信になってしまいますが建物があっても角を回り込んで裏に届きます。

こちらは決して早くはないですがグネグネとあちこちに回り込める蛇って感じです。

携帯電話の利用においては、先ずは繋がりやすい・途切れないことが最優先ですが、動画が見れると言ったある程度の高速大容量通信も兼ね備えた周波数が必要であり、これが700MHz900MHzであり通称プラチナバンドと言われる周波数にあたります。

(これだけでは周波数が不足するので少し高い周波数:1.52.1GHz3.5GHzLTEで使われています)

一方、今回5G用にキャリアに割り与えられた周波数は、3.7GHz4.5GHzと言ったLTEに近い周波数と28GHzと言った非常に高い周波数があります。

多重同時接続や超低遅延を目指すのであれば当然、高い方の周波数である28GHzになるのですが、モバイル通信(携帯電話やカーナビ)に対応させるにはとてつもない数の基地局が必要になります。(高い周波数=途切れやすい=基地局が沢山必要)

更に、28GHzの周波数を使って多重同時接続・超低遅延を必要とする製品・サービスもこれからと言った状況です。

従って、キャリア各社はそこへの投資は次のステップにして、先ずはスマートフォンで恩恵があり、かつLTEの基地局とも親和性の高い(これは次回で詳説します)3.7GHz4.5GHzを使った超高速化に主眼を置いた5Gインフラの整備を進めているのが現状です。

 

次回は、「5G環境が整ってもLTEは無くならない」そのカラクリを説明致します。

 


執筆者プロフィール

富岡 岳司

 

ITコーディネータ京都 理事

 

ITコーディネータ/IoTプロフェッショナルコーディネータ/

MCPCシニアモバイルコンサルタント/MCPC 上級IoTシステム技術者/

文書情報管理士/第ニ種電気工事士/第一級陸上特殊無線技士/第一種衛生管理者

 

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