IT コーディネータ京都(以下、ITC 京都)では、2020 年から毎年⼤量の専⾨家派遣を実施している。契機は新型コロナウイルス感染症の流⾏により京都市が実施した「中⼩企業等 IT 利活⽤⽀援事業」の専⾨家派遣委託を受けたことによる。これは新型コロナによるパンデミックの影響により、店舗を開けることができなかったり、社員を出社させることができなくなったりと、今までの形態での事業継続ができなくなったことで、中⼩企業に新たなビジネス展開に挑戦してもらおうというものである。そのための IT システム導⼊に係る費⽤を補助するというもので、それを実施するにおいて専⾨家である IT コーディネータを派遣して、どのような IT ツールを導⼊するか、システムを構築するか、販路拡⼤するかを協議するというものであった。当初 50 社程度を予定し、応募されたものは基本すべて採択する⽅針で募集開始したが、すぐに 100 社以上を超えたため、急遽募集を終了させたが、最終的に追加予算を確保して 236 社を採択することとなった。ITC 京都としてそのすべてを受ける体制は組めないことを相談して 100 社のみを受けて進めることになった。それ以外は他の ITC 届出組織や組織に属していない ITC、中⼩企業診断⼠などに協⼒してもらって事業は完了することができた。
これを機に毎年同様の京都市の専⾨家派遣を実施している。その内容は次のとおりである。
• 2021年 中⼩企業デジタル化推進事業 124社
• 2022年 中⼩企業デジタル化推進事業 156社
• 2023年 中⼩企業デジタル化推進事業 133社
• 2024年 中⼩企業デジタル化・DX推進事業 デジタル化:117社、DX:31社
• 2025年(計画中) デジタル化推進プロジェクト 200社予定
DXモデル構築プロジェクト 10社予定
グローバル展開⽀援中堅企業創出プロジェクト 3社予定
京都市の専⾨家派遣の実績を買われ、多⽅⾯から専⾨家派遣の依頼や⽀援の依頼が年々増えている状況である。
毎年100社以上へ派遣、それを実施する専⾨家が30名以上稼働している。この専⾨家派遣を遅滞なく、品質保障を担保する、そのための内部体制は⾮常に重要である。また、それを管理するシステムも重要である。これらを構築しないことには安定した運営を実現することは難しい。以下に内部体制を⽰す。PMOのもと、専⾨家派遣が実施され、派遣された専⾨家は派遣の都度、業務報告書を提出する。その内容を最低2 名のレビュアーが報告書レビューを⾏い、妥当性の確認を⾏なっている。そこで問題が指摘されたら、担当専⾨家は⽅向性を変更するなどして問題を解消する。これにより本来の事業⽬的が達成できるよう進めることができている。
2025年専⾨家派遣の運営体制
また、派遣の管理システムは現在kintone を使って管理をしている。最初の3年間はRepsona というタスク管理のクラウドサービスを無料の範囲で利⽤していた。しかし4 年⽬に有料化されたため、他のツールを探していたところ、kintone を得意にしている会員が⾃分たちがシステム構築をしますと名乗り出てくれたため、この年からはkintone による管理を⾏っている。kintoneを使うことで細やかな管理が⾏えるようになり、参加者全員で情報共有を⾏い、より効率的で効果的な派遣活動が⾏えるようなった。
専⾨家派遣の管理画⾯
当初2年間はまさに⼿探りで、専⾨家派遣を滞りなく進めていくためにどのようにしたらいいかを関係者と⼀緒に知恵を出し合い、参加した専⾨家にも協⼒してもらいながら、また京都市様、事務局であったASTEM 様、中央会様、⽇本旅⾏様にも協⼒を得ながら、進めてきた。現在は⾮常にスムーズな運営ができるようになったと⾃負しているところである。kintoneについてはITC京都のみならず、京都市様、事務局の⽇本旅⾏様にも使っていただき、情報共有しながら進捗確認することで、メール等のやり取りも⾮常に少なくなり、事業の効率化に寄与できている。
この運営モデルは他の事業に活かすことができ、⽀援期間を通じた専⾨家派遣にも⼀部使っている。また、請求や専⾨家への謝⾦⽀払いもkintone 上で連携した管理ができるよう現在準備中である。これらを通じてITC 京都のデジタル化が⼀気に進み、このようなモデルは他の届出組織にも展開できるのではないかと考えている。
京都市の専⾨家派遣も今年で6 年⽬となり、ITC 京都の⼤きな収益源となっている。この事業が終了した後の収益をどう確保していくかがITC 京都の課題となっている。この事業を⾏なってきたことにより⽀援機関や⾦融機関から⾼い評価をいただき、多くの依頼はいただいているものの事業者からの直接取引がまだまだ少ない状況である。今まで⽀援してきた企業が600 社以上あり、貴重な財産となっている。今後はこのような事業者からの直接取引を⾏う機会を増やしていく必要があると考えている。デジタル化・DX推進⽀援やデジタル⼈材・DX ⼈材の育成等ITC としてやれることはたくさんある。そのためにはITC 京都の組織をあげて取り組むことが必要である。京都の中でデジタル化を⽀援する組織として認められた現在、ITC 京都がやるべきことはまだまだたくさんある。また、若い会員も多く⼊ってきており、これから先のITC 京都を⽀えていってくれると信じている。それを考えると将来が楽しみでならない。
◆執筆者プロフィール
⽒ 名:曽我部 泰博
所 属:特定⾮営利活動法⼈ITコーディネータ京都 理事⻑
バイタルスパーク合同会社 代表社員
資 格:ITコーディネータ/PMP/厚労省ものづくりマイスター(IT部⾨)/
CompTIA Cloud Essentials/JGAP指導員