戦略的な「ITテクノロジーのキーワード」と聞くと、イメージ先行型の「宣伝文句」「流行語」のニュアンスが強いかもしれない。いわゆるバズワードとして、いつのまにか消えていくものも少なくはない。
しかし、中小企業にとっても知らないまま過ごせない要素が含まれていることも事実である。本稿では、2010年のITの戦略的テクノロジTOP10よりこれだけは押さえておくべきキーワードを選定しそのポイントについて紹介をする。
◆IT関連調査では世界的な権威であるガートナーが選んだ、2010年の「戦略的テクノロジ」のトップ10は下記のとおりである。
1. クラウドコンピューティング
2. 新たな高度分析ツール
3. クライアントの仮想化
4. ITのグリーン化
5. データセンターの再構築
6. ソーシャルコンピューティング
7. アクティビティモニタリング
8. フラッシュメモリ
9. 可用性のための仮想化
10. モバイル
詳細な内容についてご興味のある方は下記を参照いただきたい。
http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20091111-01.html
中小企業においても、自社のIT経営を実践していくために、戦略的に投資をするか否かの判断をする必要がある。特に重要と思われるテクノロジを独断で選定した。
↓ ↓ ↓
◆中小企業でも押さえておきたい3つの戦略テクノロジ
1. クラウドコンピューティング
6. ソーシャルコンピューティング
10. モバイル
◆クラウドコンピューティング(その中でもSaaSなどのパブリッククラウド)
クラウドコンピューティングとは、インターネットのコンピューティングリソースを使って、ユーザーに情報サービスやアプリケーションサービスを提供することである。クラウドコンピューティングについては、このメールマガジンでもこれまでに多くの解説がされている。
※参考となるITC京都のメルマガバックナンバー
「クラウド一年(宗平 順己氏)」
https://www.itc-kyoto.jp/2010/03/22/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E4%B8%80%E5%B9%B4-%E5%AE%97%E5%B9%B3-%E9%A0%86%E5%B7%B1/
皆さんにとっては、パブリッククラウドとして提供されている「SaaSアプリケーション」の方がなじみが深いだろう。SaaSは、ITコストの配分が、固定費から変動費に変わることから、コスト削減のための救世主として注目されている。
ITシステムを利用する際の選択肢として第1候補になってきたといっても過言ではない。但し以下のことに注意した上で活用する必要がある。
1)導入コストの中の「ハードウェア代金」や「ソフトウェアライセンス代金」が抑制できるものの、既存環境からの移行や、利用方法を検討するための要件定義、利用者向けの教育などは、初期費用として発生する。
2)アプリケーションを適用する業務によっては、提供されているそのままの機能ではとても使えないこともある。
3)毎月、毎年の利用料金は継続的にかかるため、5年間など長期間で費用を試算するとトータルコストが買取のパッケージに比べて割高になることもある。
SaaSアプリケーションの中には、体験版(無償版)を提供しているところも多いので、導入したいものについてはそれをつかってみるのが手っ取り早い。
しかし、目的や使う期間などを事前にきちっと計画した上で検討・トライアルすることをお勧めする。
◆ソーシャルコンピューティング
企業が活用できるメディアには、3つのメディアがあるといわれている。
1)他社メディア(PaidMedia):新聞や雑誌、インターネット広告等
2)自社メディア:自社のホームページやモバイルサイト
3)ソーシャルメディア:mixiなどのSNSやブログ、Twitter等
上2つがある程度自社でコントロールできるメディアである。一方、ソーシャルメディアは、ネット上での口コミがなされる場でありコントロールが難しい。
インターネットの特性上一歩間違えると一瞬にして風評が世間に広まってしまうリスクも高い。
※参考となるITC京都のメルマガバックナンバー
「ツイッター利用の事例を通じてソーシャルメディアの活用について考える
(池内 正晴氏)」
https://www.itc-kyoto.jp/2010/02/22/%E3%83%84%E3%82%A4%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%82%92%E9%80%9A%E3%81%98%E3%81%A6%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E6%B1%A0%E5%86%85-%E6%AD%A3%E6%99%B4/
とはいえ中小企業はソーシャルメディアを注目するべきだ。その理由の一つに広告費等が必要な他社メディアなどに比べて安価に利用できることがある。
Twitterを活用して成功している大企業の事例としては、加ト吉やYahoo!ショッピングなどが有名だ。企業としてきちっとした体制を構築して対応しているというよりは、数名の担当者(いわゆる中の人)でこなしているところが現時点では多いようだ。リソースの限られた中小企業でも、うまくいけば高い
効果を期待できる。実際に既に着目して活用し始めているところも増えてきた。
ということで流行に乗り遅れまいと思いがちだが、成功するためには
・使う目的や方法が明確
・継続していく強い意志と思いがある
・そのメディアの特性を十分理解している人がいる
といった条件をクリアする必要がある。
簡単な条件ではないが、Twitterなんて知らない!ということでは済まされないところまできているだろう。自分の周りに起きている変化をまずは知ることが大切だ。実際には、いきなりソーシャルメディアを使って自社のPRやマーケティングをする。。なんてことは困難である。まずは、自分自身が生活者として使ってみてそのソーシャルメディアの特長を知ることから始めてみよう!
◆モバイル・アプリケーション
ご承知の通り、日本では殆どの人が携帯電話を所有している。単なる通話やメールだけではなく、インターネット接続での利用も多い。小売店では携帯電話むけのクーポンやプロモーションなどあたらしいマーケティング手法が導入されている。またiPhoneやWindowsモバイルを搭載したスマートフォンなど、新たな端末も販売台数を伸ばしていてこれらモバイル端末をつかったアプリケーションが今後どんどん提供されてくることになる。
さらに今後はネットブックと呼ばれる安価なPCにかわる新しい形のタブレットPCが登場する予定もある。
今後消費者向けのマーケティングを行う場合や、企業内のアプリケーションを利用する場合はこのモバイル端末を使うことを前提に検討していくことが求められる。これまで以上にいつでもどこでも必要な情報を探し出せる環境が整備されていくため、情報の流れが大きく変わっていくことになる。
例えばSNSやTwitter等のソーシャルメディアの窓口となるのがモバイル端末である。そして、企業むけのさまざまなモバイルアプリケーションが、クラウドコンピューティング上(SaaS形式)で提供されている。
これらキーとなるITテクノロジを活用すると、これまでと仕事の進め方が大きくかわる可能性があるということをご記憶いただき、自社ではどういった業務で使えそうか一度考えてみてはいかがだろうか?
■執筆者プロフィール
杉村麻記子(すぎむら まきこ)
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 勤務
ITコーディネータ、中小企業診断士