クラウドという単語がインターネットや雑誌の至るところで見られるようになってから、約2年が経ちました。以前、小林さんのコラムでも紹介がありましたが、クラウドには次の4種類があります。
・SaaS ソフトを提供するサービス
・PaaS ソフトを動かすプラットフォーム(データベース等)を提供するサービス
・HaaS/IaaS インフラ(サーバのハードとOS)を提供するサービス
・DaaS 端末のデスクトップ環境を提供するサービス
既に読者の皆さんの中にもSaaSやHaaSの恩恵(コスト削減や構築のスピードアップ)を受けている方がいるかも知れません。本稿では、まだ普及度は低いですが、将来が期待されるDaaS(Desktop as a Service)について説明します。DaaSすなわち仮想デスクトップサービスは、ユーザのパソコン(PC-Aとします)の中にもう1つ別のパソコン(PC-Bとします)を提供するものです。ユーザからの見え方としては、Aの画面の中のウィンドウの1つにPC-Bのデスクトップが表示されます。これを(PC-Bの)仮想デスクトップと呼びます。また、PC-Aの画面上でBの仮想デスクトップを全画面表示すれば、あたかもPC-Bを直接使っているように見えます。ここで、PC-Bのデスクトップおよびその上で動いているプログラムは、全てデータセンターのサーバ上で動いており、PC-Aとはイメージデータのみをやり取りしている点がポイントです。
DaaSを利用して得られる主なメリットには以下があります。
(1)パソコンの運用負荷の軽減
多くの会社にとって、PCの運用は手間が掛かるものです。まず、新しいPCを買ってきたら、会社のポリシーに沿って設定し、オフィスソフトやウイルス対策ソフトなどの標準ソフトをインストールすることになります。また、PC1台ずつについてソフトを定期的にバージョンアップする必要もあるでしょう。仮想デスクトップを使用すれば、サーバ側でPCのセットアップやソフトのバージョンアップ等を一括して操作できるようになり、運用の手間を大きく軽減することができます。
(2)古いPCやOSの長期間使用
PCの性能は年々向上し、それに併せてオフィスソフトなどのソフトの機能も高度化されていきます。また、ハードディスクの経年使用による故障もあり、多くの会社はPCを4,5年おきにリプレースしています。仮想デスクトップなら、PC本体では主にイメージデータを表示するだけでよいため性能向上はあまり必要ありません。また、ハードディスクを使用することも少ないためPCを長期間使用し続けることができます。
また、マイクロソフト社のWindowsOSは定期的にバージョンアップされます。
現在、多くの会社はWindowsのXP/Vista/7のどれかのバージョンを使用しているでしょうが、平成26年4月にWindowsXPのサポートが打ち切られます。それまでに社内の情報システムをWindows7の上で動作するように改修またはバージョンアップし、社内PCをWindowsXPからWindows7にバージョンアップする必要があります。
仮想デスクトップを使用すれば、大きな改修コストが掛かるシステムや使用頻度が少ないシステムについては、仮想デスクトップでWindowsXPを動かし、その上でシステムを改修せずに使い続けるという選択肢が取れます。
(3)スマートフォンやタブレット端末の利用
スマートフォンやタブレット端末上にPCの仮想デスクトップを表示することによって、社内でPCや情報システムに対して行う操作を、社外でi-PhoneやiPad等を用いて行うことができます。さらに仮想デスクトップでは、端末内にデータを残すことがないのでスマートフォンやタブレット端末、またはモバイル端末を紛失した時の情報漏えいを防止できます。
現在のDaaSのサービス内容および価格では上記のような効果、特にコスト削減効果を十分に得られるのは端末数の多い大企業に限られます。しかしながら、近い将来、中小企業でもiPadやスマートフォンだけを用意して、低コストでDaaSを使用できるようになるでしょう。第4のクラウドDaaSに期待しましょう。
<参考>
2010.11.15「会計システムとクラウドコンピューティング」
https://www.itc-kyoto.jp/2010/11/15/%e4%bc%9a%e8%a8%88%e3%82%b7%e3%82%b9%e3%83%86%e3%83%a0%e3%81%a8%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a6%e3%83%89%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%94%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%b3%e3%82%b0%ef%bc%8f%e5%b0%8f/
2011.02.28「タブレット端末とクラウドを組み合わせよう」
https://www.itc-kyoto.jp/2011/02/28/%e3%82%bf%e3%83%96%e3%83%ac%e3%83%83%e3%83%88%e7%ab%af%e6%9c%ab%e3%81%a8%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a6%e3%83%89%e3%82%92%e7%b5%84%e3%81%bf%e5%90%88%e3%82%8f%e3%81%9b%e3%82%88%e3%81%86%ef%bc%8f%e5%b1%b1/
■執筆者プロフィール
岩本 元(いわもと はじめ)
ITコーディネーター、技術士(情報工学部門、総合技術監理部門)
&情報処理技術者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャ、システム監査他)
企業におけるBPR・IT教育・情報セキュリティ対策・ネットワーク構築のご支援